補助金の審査には、計画書の中身とは別に、決められた条件を満たすと点数が上乗せされる「加点項目」があります。パートナーシップ構築宣言や、事業継続力強化計画の認定などが代表的です。

気をつけたいのは、多くの加点が「締切の時点で済んでいること」を条件にしている点です。宣言の公開や計画の認定には日数がかかり、締切の間際に動いても間に合わないことがあります。以前に済ませたはずの宣言や計画が、ひな形の更新や期間のずれで、条件に合わなくなっていることもあります。

この記事では、当社が申請を支援した3社の事例をもとに、加点の取りこぼしが起きやすい場面と、締切から逆算した準備を、チェックリスト付きで解説します。あわせて、加点ではなく申請の要件である「一般事業主行動計画の公表」(新事業進出・ものは応募申請まで、省力化は交付申請まで)も取り上げます。

※当社が実際に支援した事例をもとにしています。会社が特定されないよう、業種・地域・金額などの一部をぼかしています。

この記事で分かること

※資料は、この記事の公開時点で公開されている公募要領・手引き・よくある質問と、各制度の公式サイトの案内です。省力化投資補助金(一般型)は、第8回の資料をもとにしています。第8回は、2026年10月16日に締め切られました。資料名のあとのページは、PDFのページ番号です。決まりは補助金や公募の回によって変わります。申請する回の最新の公募要領・手引きで確かめてください。

以下、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金を「新事業進出・もの」、省力化投資補助金(一般型)を「省力化」と呼びます。

まず押さえたい3つのこと

  1. 加点は「締切の時点」で見られます。新事業進出・ものでは、すべての加点項目を申請締切日の時点で満たす必要があります(公募要領 p.47)。省力化にも、締切の時点を条件にした項目があります。
  2. 「登録した」と「載った・認定された」は別です。登録や申請を済ませても、公開や認定が締切に間に合わなければ、条件を満たしません。
  3. 加点の項目は、補助金ごと・回ごとに違います。ある補助金の加点が、別の補助金でも加点になるとは限りません。

実際にあったこと:3社の事例

ここからは、当社が申請を支援した3社の事例です。どれも、申請を準備した段階の話です。

項目D社E社F社
業種建設業金属スクラップ医療・研究向け製品
補助金新事業進出・もの新事業進出・もの省力化
起きたこと古いひな形・期間ずれ認定待ち加点の言及なし
対応出し直し確認待ち棚卸しを提案

D社:宣言は出していた。でも古いひな形だった

D社(建設業の会社)は、数年前にパートナーシップ構築宣言を出していました。パートナーシップ構築宣言は、取引先との共存共栄や、法律に基づく「振興基準」に沿った望ましい取引慣行を守ることを、発注する側の立場から代表者の名前で宣言し、専用のポータルサイトに載せる仕組みです(ポータルサイト「パートナーシップ構築宣言とは」)。

ところが、ポータルサイトに載っている宣言文を開くと、数年前の日付で、以前の法律名や「親事業者」「下請事業者」といった言葉で書かれた、以前のひな形のものでした。新事業進出・ものの加点は、2026年1月1日に更新されたひな形で宣言を公表していることが条件です(公募要領 p.47)。このままでは加点になりません。

当社はD社に、新しいひな形での出し直しをお願いしました。締切の時点で載っている必要があり、登録から掲載までに日数がかかるので、早めに登録してほしいこともお伝えしました。

D社からは、新しいひな形で更新したと連絡がありました。ただし、条件は「登録した」ではなく「公表している」ことです。そこで当社は、締切までにポータルサイトに載るかを、当社でも確かめることにしました。ポータルサイトの案内では、修正の依頼がなければ、公開は登録の約10日後です。補助金の申請に合わせて登録が集中する時期は、さらに数日かかることがあります(ポータルサイト「登録方法」)。

注意:以前に宣言を出していても、宣言文の日付とひな形を確かめましょう。今のひな形(2026年1月改正)では、「委託事業者」「中小受託事業者」「受託中小企業振興法」といった言葉が使われています(パートナーシップ構築宣言 記載要領 p.3)。

D社:行動計画は載っていた。でも期間が締切のあとから始まっていた

新事業進出・ものには、加点とは別に、一般事業主行動計画を公表しておくという要件があります。次世代育成支援対策推進法に基づいて会社が作る計画で、厚生労働省の「両立支援のひろば」というサイトで公表します。申請に欠かせない要件です(公募要領 p.3)。

D社の計画は、すでに両立支援のひろばに載っていました。ところが、計画期間の始まりが、締切日よりあとの日付でした。要件は、申請締切日の時点で有効な計画を公表していることです(公募要領 p.14)。D社は、期間が締切より前に始まるように計画を直して掲載し直し、当社は締切の2週間ほど前に、掲載を確かめました。

このとき当社は、直した計画の中身も読みました。新事業進出・ものでは、子育てなどに関する職場環境を整える取組を1つ行い、それが行動計画の内容に留まらない「追加的な取組」であることを説明する必要があるためです(公募要領 p.14)。D社の取組は、既存の制度を社員に知らせるものです。ところが計画には、両立支援の制度を知らせる取組がすでに入っていました。そこで当社は、計画と重なって読まれないよう、計画にない制度(年次有給休暇の取得の促進、残業の削減、女性の就業の継続と仕事の幅を広げる取組)を知らせる案を出し、D社から実施できると回答をいただきました。

E社:事業継続力強化計画の認定が、締切に間に合うか分からなかった

E社(金属スクラップの会社)は、事業継続力強化計画、パートナーシップ構築宣言、成長加速マッチングサービスの3つの加点を取る計画でした。計画書では、3つとも「すでに取得している」形で書かれていました。締切までにすべて済ませる前提です。

事業継続力強化計画は、災害などへの事前の備えをまとめた計画を、経済産業大臣が認定する制度です。中小企業向けの、取り組みやすいBCP(事業継続計画)と位置づけられています(中小企業庁「事業継続力強化計画」)。新事業進出・ものでは、申請締切日の時点で有効な計画を取得していることが条件です(公募要領 p.49)。

E社が事業継続力強化計画を申請したのは、補助金の締切の1か月半ほど前でした。その後、不備の指摘を受けて直している最中で、認定が下りたかは、まだ分かっていませんでした。中小企業庁の案内では、申請から認定までの標準的な期間(標準処理期間)は約45日で、申請書に不備があると、さらに時間がかかることがあります(事業継続力強化計画 Q&A集 (1))。1か月半前の申請では、不備の指摘が入った時点で、締切に間に合うかが分からなくなります。

このような場合は、締切の直前に認定を確かめる必要があります。下りていなければ加点にならず、「取得済み」という計画書の書き方も事実と違ってしまいます。そのときは書き方を改め、その加点は申請に含めないことになります。

もう1つ、E社が取ることにした成長加速マッチングサービスは、公募の途中の改訂で追加された加点でした(新事業進出・もの 公募要領 p.61 改訂履歴)。加点の一覧は、最初に読んだ版のままにせず、最新の版で確かめ直しましょう。

F社:計画書に、加点への言及がなかった

F社(医療・研究向けの製品のメーカー)は、省力化への申請を準備していました。当社が計画書を点検すると、加点への言及がなく、取りやすい加点である省力化ナビと事業継続力強化計画も、計画書からは取れていることが読み取れない状態でした。

反対に、計画書には、パートナーシップ構築宣言と、IPA(情報処理推進機構)の「SECURITY ACTION」の宣言が書かれていました。しかし、F社が申請する回の省力化では、どちらも加点の項目にありませんでした。ほかの補助金の加点でも、その回の一覧になければ加点にはなりません。なお、SECURITY ACTIONは、審査の「計画面」にあるサイバーセキュリティ対策の観点に関わります(省力化 公募要領 p.30)。そのため当社は、SECURITY ACTIONの記載は残してよいと助言しました。

当社が対応として挙げたのは、その回の加点10項目について、取れているか・締切までに取れるかを一つずつ棚卸しし、間に合うものは申請前に取ることです。省力化では、申請していない特例や加点は受けられないと明記されています(応募申請の手引き p.49)。

F社:行動計画の公表に、約2週間かかる

省力化では、従業員が21名以上の会社は、交付申請(採択のあとに、補助金の交付を申請する手続き)のときまでに、有効な一般事業主行動計画を両立支援のひろばに公表することが要件です(公募要領 p.11)。F社は従業員が21名を大きく超え、対象でした。ところが計画書には行動計画の記載がなく、公表の状況を確かめる必要がありました。

ひろばへの掲載には2週間程度かかり、問合せをしても手続きは早まりません(公募要領 p.11〜12)。応募のときは「公表する」と宣誓すれば足りても、交付申請までに公表できなければ、要件を満たせません。当社が挙げた対応は次のとおりです。

省力化の計画づくりの全体の流れは、土木会社のICT建機導入の事例で紹介しています。

公式の決まり:補助金ごとの違い

2つの補助金では、加点の項目や、満たしているかを見る時点が違います。主な違いは次のとおりです。

項目新事業進出・もの省力化
加点を見る時点申請締切日項目ごと
加点の数17項目10項目
パートナーシップ構築宣言加点あり一覧になし
事業継続力強化計画締切日に有効締切日が期間内
省力化ナビなし締切までにPDF
行動計画の公表応募申請まで交付申請まで
行動計画の対象すべての申請者21名以上

※新事業進出・ものの17項目には、グローバル枠だけが対象の2項目を含みます。省力化は、第8回の公募要領の数です。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金

新事業進出・ものの基本要件の全体像は、「6つの基本要件」のコラムにまとめています。

省力化投資補助金(一般型)

注意:新事業進出・ものと、省力化の第8回では、賃金に関する加点は最低賃金の2項目だけです。どちらも過去の賃金の実績で判定します。採択のあとに賃上げを約束するものではありません(新事業進出・もの 公募要領 p.49〜50、省力化 公募要領 p.32)。気をつけたいのは、過去に中小企業庁が所管する補助金(前の回を含む)で、賃上げに関する加点を受けて採択され、その要件を達成できなかった場合です。たとえば省力化の第4回には、将来の賃上げを誓約する「賃上げ加点」がありました。未達が報告されてから18か月の間は、災害で大きな損失を受けたなどの正当な理由が認められない限り、大幅に減点されます(新事業進出・もの 公募要領 p.50、省力化 公募要領 p.34)。過去に受けた補助金で未達になっていないか、申請の前に確かめましょう。

公開・認定・掲載にかかる日数

日数がかかる主な手続きと、公式の案内にある目安です。

手続き日数の目安
宣言の公開登録の約10日後
事業継続力強化計画の認定約45日
行動計画の掲載1〜2週間程度
GビズIDプライムの発行書類申請は最大1か月

防ぎ方・進め方

  1. 申請する回の公募要領で、加点の一覧を作る。ほかの補助金や前の回の加点は持ち込みません(F社)。途中で改訂されることもあるので、申請の前に、最新の版と改訂履歴を見ます(E社)。
  2. 「取ったつもり」の加点を、原本で確かめる。宣言は宣言文の日付とひな形を、認定・承認は実施期間を、行動計画は計画期間が締切日(省力化は交付申請の時点)を含むかを見ます。行動計画は中身も読み、新事業進出・ものの子育ての取組と重ならないようにします(D社)。
  3. 日数がかかるものから逆算する。認定は約45日、宣言の公開は約10日、行動計画の掲載は2週間ほどを見込み、手直しの時間も足して、申請・登録の日を決めます(E社)。
  4. 「載った」「認定された」まで確かめる。登録や申請で終わらせず、サイトへの掲載や認定を、自社でも確かめます(D社)。
  5. 計画書の書き方を、締切の時点の事実に合わせる。間に合わないと分かったら、「取得済み」の書き方を改め、その加点は申請に含めません。

チェックリスト:締切から逆算した加点の準備

時期は、公式の案内にある日数に余裕を足した、当社の目安です。締切日は、各補助金の公式サイトや補助金スケジュールで確かめてください。

締切の2か月前に、まだ公募要領が出ていない回もあります。たとえば省力化の第9回は、この記事の公開時点で、11月上旬に公募開始、12月下旬に締切の予定です(省力化の公式サイト)。このような回は、前の回の公募要領で仮の一覧を作り、事業継続力強化計画のように日数のかかるものから始めます。前の回の加点が、次の回にもあるとは限りません。公募要領が出たら、一覧を確かめ直してください。

まとめ

加点の多くは、締切の時点で済んでいることが条件です。それも「登録した」ではなく、「公表している」「認定を取得している」ことが問われます。

D社では、以前の宣言が古いひな形で、行動計画も締切のあとから始まる期間でした。宣言は出し直していただき、掲載を当社でも確かめることにしました。行動計画は、期間を直して載せ直していただきました。E社では、事業継続力強化計画の認定が締切に間に合うか分からない状態でした。F社では、取りやすい加点を取れていることが計画書から読み取れず、反対に、その回の加点ではない宣言が書かれていました。

まずは申請する回の最新の公募要領で加点の一覧を作り、「取ったつもり」の加点も原本で確かめましょう。そのうえで、日数のかかるものから、締切から逆算して進めることが大切です。

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