今回ご紹介するのは、地方で重機土工を営む土木工事会社(以下、C社)が、ICT建機(3Dマシンガイダンス付きの油圧ショベル)を導入する計画を立て、中小企業省力化投資補助金(一般型)で採択された事例です。

C社の現場では、重機を動かす作業そのものに加えて、その周りの「目印をつける」「止めて測る」「そばで合図する」といった作業に、多くの時間と人手がかかっていました。計画では、この「丁張り(ちょうはり)・検測(けんそく)・誘導」という3つの作業を減らして年1,000時間ほどを生み出し、その時間を施工管理・若手の育成・見積や提案に回します。

※当社が実際に支援した事例をもとにしています。会社が特定されないよう、業種・地域・金額などの一部をぼかしています。

この記事では、次のことが分かります。

事例の概要

項目内容
業種土木工事業(造成・道路・河川などの重機土工が中心)
地域地方(会社が特定されないよう非公表)
規模従業員30名ほど
導入前の状況ICT建機を一部すでに保有。ただし使いこなせる人が限られていた
導入する設備20トン級の油圧ショベル+3Dマシンガイダンス(ICT建機)
活用した補助金中小企業省力化投資補助金(一般型)
投資の規模約2,000万円規模(この事例では補助率2分の1で申請)
省力化の効果(計画)1区画あたりの作業が1日8時間→4時間。年およそ1,000時間を生み出す
結果採択

※補助率や補助の上限額は、公募の回や会社の規模によって異なります。申請するときは、最新の公募要領で確かめてください。

現場で時間がかかっていたのは「重機の周りの作業」

C社で話を聞いて分かったのは、重機が止まって待っている時間の多さでした。その原因になっていたのが、次の3つの作業です。計画書での説明をもとに、かみくだいて紹介します。

丁張り(ちょうはり):地面に「完成形の目印」をつくる作業

丁張りとは、工事を始める前に、設計図をもとに木の杭や板を地面に立てて、「この高さまで掘る」「この角度で盛る」といった目印をつくる作業です。いわば、地面に描く下書きの線のようなものです。

C社では、目印をつくるために測量をして、図面を起こし、段取りを打ち合わせてから設置していました。斜面を段々に仕上げる工事では、段ごとに高さや角度の丁張りを立て直すため、同じ作業が何度も発生します。その間、重機は待っているしかありません。また、元請が丁張りを設置することもあり、その時期や正確さに施工のペースが左右される、という悩みもありました。

検測(けんそく):止めて、測って、確かめる作業

検測とは、掘ったり盛ったりした地面が、設計どおりの高さ・傾き・幅になっているかを、測量の機器で確かめる作業です。測るたびに重機を止め、人が現地で測って記録します。ずれが見つかれば手直しをして、もう一度測り直しです。

誘導:重機のそばで合図を送る作業

誘導とは、運転席から見えにくいところを補うために、重機のそばに立った人が合図を送り、仕上がりの高さや位置を伝える作業です。誘導する人を配置する必要があるうえ、動いている重機の近くに人が立つ時間が長くなるため、安全面のリスクも高まります。

さらにC社では、丁張りに合わせて斜面をきれいに仕上げられるのは、経験を積んだ一部の運転手に限られていました。若手がその技術を身につけるまでは、そばで誘導する人が付きっきりになります。補助の人手を確保するのは難しく、若手の育成と定着も課題でした。

3Dマシンガイダンスとは(C社の計画書の説明から):工事の完成形を立体のデータにして重機に取り込み、衛星などで測った位置をもとに、バケットの刃先が設計どおりの仕上がり面からどれだけずれているかを、運転席の画面に表示する仕組みです。運転手は画面を見ながら掘ったり整えたりできるので、地面の目印(丁張り)や、そばで合図する人に頼らずに施工できます。操作するのはあくまで運転手で、機械は「案内役」です。

省力化の効果をどう数字にしたか

公募要領では、設備の導入によって業務がどの程度省力化されるのかを、具体的かつ詳細に書くよう求めています。この事例では、次の手順で、減る時間を積み上げました。

手順1:時間を数える「単位」を決める

省力化指数(後で説明します)を計算する様式のシートには、設備の導入前と導入後の「1日あたりの人手による作業時間」を入れるよう、説明書きがあります。そこでこの事例では、「10メートル四方の区画を1日で施工する場合」という単位を決め、その中で発生する作業を数えました。

手順2:工程を順番に書き出し、それぞれの時間を聞く

次に、その区画を仕上げるまでの工程を順番に書き出し、工程ごとの時間をC社から聞き取りました。整理した結果が、次の表です。

工程導入前導入後
現場測量(丁張りを立てるための測量)60分なし
図面起こし(施工図の作成)60分なし
施工打合せ(段取りの確認)60分なし
丁張り設置60分なし
3Dデータの取り込み・現場の座標合わせなし60分(新しく増える)
掘削・盛土・整形(重機の作業)120分120分(変わらない)
出来形確認・検測(重機を止めて測る)60分なし
手直し・再掘削60分60分(データで確かめながら)
合計480分(8時間)240分(4時間)

導入前は、施工の準備として「測量→図面起こし→打合せ→丁張り設置」の4つの工程があり、合わせて4時間かかっていました。導入後は、これが「3Dデータの取り込みと現場の座標合わせ(1時間)」に置き換わります。座標合わせとは、データ上の位置と実際の現場の位置を一致させる初期設定のことです。また、仕上がりは画面とデータでその都度確かめられるため、重機を止めて測る検測の工程(1時間)もなくなる、という整理です。

なお、様式の説明書きには「設備が自動で行う工程・作業は書かない」ともあります。マシンガイダンスは画面で案内する仕組みで、操作するのは運転手です。そのため、掘削・盛土・整形の120分は、導入後も人手の作業として数えています。

手順3:「なくなる」「変わらない」「新しく増える」に分ける

様式のシートには、導入後の作業ごとに、新しく加わる作業か、導入の前後で変わらない作業か、といった種類を選ぶ欄があります。この事例の作業を分けると、次のとおりです。

注目していただきたいのは、手直しの時間を導入後も同じ60分で数えている点と、新しく増える作業の1時間をきちんと入れている点です。計画書の別の箇所では、手直しが減ることを原価が下がる理由に挙げていますが、時間の表では手直しを減らしていません。公募要領でも、省力化指数について「記載内容や算出根拠が妥当なものとなっているか」が審査の観点に挙げられています。

また、聞き取りでは、丁張りの設置は3人がかりで、掘削中も運転手のほかに安全監視と作業員が付いている、という話でした。導入後は、掘削中の作業員は要らなくなる見込みです。それでもこの事例では、人数は掛け合わせず、工程ごとの時間をそのまま足し上げています。

手順4:1日の差を、年間の時間に直す

1日あたり8時間が4時間になるので、差は4時間です。この事例では年間の稼働日を250日として、4時間×250日=年1,000時間と計算しました。これが、計画書の中心になる「生み出す時間」です。

省力化指数について:公募要領の計算式は「(設備の導入で削減される業務にかかっていた時間 − 設備の導入後に発生する業務の時間)÷ 設備の導入で削減される業務にかかっていた時間」です。計算は、事業計画書(その3)に付いている別紙のシートで行います。この事例で使ったシートでは、導入の前後で変わらない作業は、どちらの時間にも入らない計算になっていました。C社の場合は(5時間−1時間)÷5時間=0.80です。1日全体で見た削減率(8時間→4時間で50%)とは数字が違うので、混同しないようにしましょう。

生まれた時間を何に使い、受注力につなげたか

公募要領では、省力化で生まれた労働力を会社全体でどう生かし、どんな価値を生むのかを書くよう求めています。審査でも、省力化された時間や労働力を高付加価値業務に振り向けることで賃上げにつながるか、という観点が示されています。C社では、年1,000時間を次の3つに割り振りました。

使い道割合年間の時間(目安)具体的な中身
施工管理の強化40%約400時間段取りの見直し、出来形(でき上がりの寸法)と品質の管理、写真や書類の整理、検査への準備、安全対策
若手の育成・多能工化35%約350時間ICT施工の手順書と点検チェックリストを作り、教育を通じてICT建機を扱える人を増やす(多能工化=1人で複数の作業をこなせるようにすること)
受注の準備25%約250時間見積の精度を上げる、工程や段取りの提案、施工計画の事前検討

「ICT重機を保有していないと、仕事が来ない」

ヒアリングの中で、C社から出た言葉です。C社によると、元請は公共工事を受注する際にICT施工を求められることがあり(入札での加点など)、下請を選ぶときにも、ICT施工ができる会社を優先します。C社にとっては、ICTに対応できるかどうかが、そのまま受注の力を左右していました。

C社はすでにICT建機を一部持っていましたが、使いこなせる人が限られ、担当者に頼った運用になっていました。そのため、ICT施工を同時に回せる現場の数に限りがあり、ICT施工が求められる仕事の受注機会を取り切れていない状態でした。

そこで計画では、新しいICT建機の導入とあわせて、データの取り込みから座標合わせ、施工、出来形の確認までを社内の標準の手順にまとめ、教育と点検のチェックリストまで整えることにしました。「一部の人の技術」を「会社の力」に変え、同時に回せる現場を増やすことが狙いです。

公共工事に使っても大丈夫?:事務局の「よくある質問」では、国が発注する工事にこの補助金で導入した設備を使っても問題はない、と回答されています。補助の対象外になる「国が助成する制度との重複」に、公共工事は当たらない、という説明です。

元請にとってのメリットを言葉にする

計画書では、C社に任せることで元請が得られるメリットも整理しました。

あわせて、元請側も人手が足りない中で現場を回していることに触れ、「品質や安全の要求が高い現場でも任せられる下請」になることが、そのままC社の受注力の強化になる、と組み立てています。

売上の伸びは「件数」に置き換えて示す

売上は、1年目に直近の決算から3%、2年目と3年目はそれぞれ前の年から4%伸ばす計画にしました。1年目を控えめにしたのは、導入直後は教育や立ち上げが必要で、効果が限られると考えたためです。さらに、増える売上を中規模の工事の件数に置き換えると、年におよそ2〜4件分の受注増にあたることも示しました。公募要領でも、会社全体の数値計画について算出根拠を書くよう求めています。

計画書で工夫した点・注意した点

1. 「すでに持っているのに、なぜもう1台か」に答える

公募要領では、これまでの自社の取り組みの経緯とあわせて、今回その設備を取得しなければならない必要性を示すよう求めています。なお、事務局の「よくある質問」では、すでに持っている設備と同じものを同じ事業場に追加で入れる場合も、省力化効果が得られる事業であれば対象になる、と回答されています。

C社の計画では、今ある機械では運用が担当者に頼りがちで、丁張り・検測・誘導といった人手の作業も残っているため、同時に回せる現場を増やせない、という課題を正直に書きました。そのうえで、機械の導入と手順書・教育をセットにして、会社全体の対応力を広げる計画にしています。

2. 機械単体ではなく「業務の仕組み」として説明する

一般型の対象は、事業者の個々の業務に合わせて専用に設計された設備(オーダーメイド設備)です。公募要領では、汎用の設備であっても、導入する環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、機能が変わる場合や、組み合わせることでより高い省力化効果を生む場合はオーダーメイド設備とみなす一方、汎用の設備を単体で入れるだけの事業は対象にならない、としています。

C社の計画では、重機とマシンガイダンスの組み合わせに加えて、現場の条件に合わせて位置の測り方を選べること(衛星を使う方法のほか、上空が開けていない現場では測量機を組み合わせる方法)、座標合わせ、データの取り込みから出来形の確認までの流れを、一つの業務の仕組みとして書きました(参考:省力化投資補助金のカタログ型と一般型の違い)。

3. 数字は控えめに、理由ごとに積み上げる

先ほどの時間の表では、変わらない作業は減らさず、新しく増える作業も入れ、人数も掛けていません。同じように、原価の改善も理由ごとに分けて積み上げました。

合わせて、売上に占める原価の割合を3年で0.8ポイント下げる計画です。

4. 安全面の効果も書く

誘導や検測が減ると、動いている重機のそばに人が立つ時間や、重機を止めて乗り降りする回数も減ります。C社の計画では、危険な作業の時間が減ることも、直接の効果として書きました。

5. 体制と段取りを具体的にする

審査では、補助事業を進めるための社内外の体制や、省力化の結果に至るまでの進め方とスケジュールが妥当かも見られます。C社の計画では、社長が全体の責任者、事務方の部長が進行管理と仕組みづくりの担当、ICTにも明るい重機部門のベテラン部長が現場の責任者として社員への研修を受け持つ、という3人の役割分担にしました。社外では、建機の販売会社が、導入から教育、保守、ICT施工の運用まで支えます。

進め方も「契約・調達(納品と初期設定)→手順書づくりと研修→テスト稼働→調整→本稼働」と段階に分け、段階ごとに担当者を決めました。なお、補助の対象になるのは、交付決定を受けた日以降に契約(発注)し、補助事業の期間内に支払いを終えた経費だけです。この事例でも、交付決定までは仕様を詰める段階にとどめ、発注は補助事業の期間に入ってからとする段取りにしました。

6. お金の流れも先に決めておく

補助金は原則として、補助事業が終わって実績報告を出し、補助金の額が確定したあとに支払われます(精算払い)。C社では、投資額の半分を金融機関からの借入れでまかない、残りの半分と補助金が入るまでの資金は自己資金で手当てする計画にしました。なお、金融機関から資金を調達する予定がある場合は、金融機関に事業計画を確認してもらい、その確認書を提出する必要があります。

この事例から学べるコツ・注意点

この事例を振り返ると、計画づくりで確かめておきたい点は次のとおりです。

同じ組み立ては、ほかの建設会社の計画にも生かせる

当社では、この「丁張り・検測・誘導」の3つの柱で工程を区切る組み立てを、別の建設会社の計画づくりにも生かしました。その際も、時間の数え方や生まれた時間の使い道は、その会社の現場に合わせて積み上げ直しています。組み立ては共通でも、数字と中身はそれぞれの会社の現場から積み上げます。

まとめ

C社の事例のポイントは、「ICT建機を入れる」という設備の話を、「どの作業が、何時間減るのか」という現場の言葉に置き換えたことです。丁張り・検測・誘導という3つの作業を軸に、工程ごとの時間を控えめに積み上げて年約1,000時間という数字にしました。その時間を施工管理・若手の育成・受注の準備に割り振り、「ICT施工ができる会社が選ばれる」という元請の事情とつなげることで、省力化を受注力の強化にまで結びつけています。

公募要領が求めているのも、設備の導入で業務がどの程度省力化されるのかを具体的に示し、生まれた時間や労働力を会社全体でどう生かすかを説明することです。設備の性能を並べるより、自社の現場で何が変わるのかを、数字と順序で説明することを意識してみてください。

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