枠選びや計画の中身より前に、確認すべきことがあります
2026年度、従来の「ものづくり補助金」と「中小企業新事業進出補助金」が統合され、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金という新しい制度が始まりました。事務局は独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)です。第1回公募は2026年6月29日に始まっており、応募締切は2026年10月30日(金)18:00(厳守)です。
この補助金に申請するとき、多くの経営者の方はまず「どの枠で出すか」「どんな設備を買うか」「計画書に何を書くか」を考え始めます。もちろんそれも大切なのですが、その前に必ず確認しておきたいのが「基本要件」です。
基本要件とは、この補助金を使うためにすべての申請者が満たさなければならない条件のことです。公募要領には全部で6つ定められており、1つでも満たせなければ、どれだけ良い事業計画を書いても申請そのものが認められません。実際、計画づくりに何か月もかけたあとで「この要件が満たせなかった」と分かり、申請を断念してしまうケースは決して珍しくありません。
そしてもう一つ、経営者の方に必ず知っておいていただきたいことがあります。6つの要件のうち2つは、申請時に満たすだけでなく、補助金をもらったあと数年にわたって達成し続ける必要があり、達成できないと補助金を返さなければならないという点です。「もらって終わり」ではない補助金なのです。
この記事では、6つの基本要件を1つずつ、専門用語をかみ砕きながら解説します。最後に自社チェックリストも用意しましたので、「うちは申請できるのか」を確かめながら読み進めてください。
・すべての申請者に共通する「6つの基本要件」の中身
・要件ごとの「いつまでに何をすればよいか」
・達成できないと補助金の返還義務が生じる2つの要件と、その返還額の計算方法
・手続きに時間がかかるため、今すぐ動くべき要件
・補助額を上げる2つの特例と、それに伴う追加のリスク
・自社が要件を満たせるか確認できるチェックリスト
前提:この補助金は「3〜5年の事業計画」に取り組む制度です
まず全体像として押さえておきたいのが、この補助金は「設備を買う費用の一部を助けてもらう制度」であると同時に、「3〜5年かけて会社を成長させる約束をする制度」だという点です。
公募要領では、中小企業等が6つの要件を満たす「3〜5年の事業計画」に取り組むことが必要とされています。つまり、補助事業(設備導入など)が終わったあとも、3年から5年にわたって、利益や給与を計画どおりに伸ばしていくことが求められます。
この点を理解しないまま申請すると、あとから「そんなに賃上げを約束していたとは思わなかった」ということになりかねません。要件は、申請のためのハードルであると同時に、会社として3〜5年後に何を達成するかの約束でもあります。
6つの基本要件 早見表
公募要領(1-3-1 基本要件)に定められた6つの要件を、一覧に整理しました。「返還リスク」の欄が「あり」となっている2つが、特に注意が必要な要件です。
| 要件 | 内容(かんたんに言うと) | 返還リスク | いつまでに必要か |
|---|---|---|---|
| (1)付加価値額 | 会社が生み出す価値を年平均4.0%以上増やす計画にする | なし | 応募申請時(計画に記載) |
| (2)賃上げ | 従業員1人あたりの給与を年平均3.5%以上増やす | あり | 目標の表明は交付申請時まで/達成は計画最終年度 |
| (3)事業場内最低賃金 | 社内で一番低い時給を、地域の最低賃金より30円以上高く保つ | あり | 計画期間中毎年 |
| (4)ワークライフバランス | 一般事業主行動計画を作って公表する | なし | 応募申請時まで(申請締切日時点で有効なもの) |
| (5)子育て等の職場環境整備 | 3つの選択肢から1つ選んで取り組む | なし | 内容は応募申請時に計画へ記載/実施は実績報告まで |
| (6)金融機関 | 借入をするなら、その金融機関から計画の確認を受ける | なし | 応募申請時(自己資金のみなら不要) |
それでは、1つずつ詳しく見ていきましょう。
要件を1つずつ解説
(1)付加価値額要件:年平均4.0%以上の成長を計画する
1つ目は、付加価値額(会社が事業活動で新しく生み出した価値のこと)を年平均4.0%以上増やす計画を立てるという要件です。
付加価値額は、決算書の数字を使って次のように計算します。
営業利益(本業のもうけ)に、人件費(従業員に払った給料など)と減価償却費(設備の価値の目減り分を費用にしたもの)を足した金額です。「会社が1年間でどれだけ価値を生み出したか」を表す指標だと考えてください。
公募要領では、補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、付加価値額の年平均成長率が4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定することとされています。年平均成長率(CAGR)は複利で計算されるため、単純に「5年で20%増やせばよい」ということではなく、毎年4.0%ずつ積み上がっていくイメージになります。
比較の起点となる金額は、補助事業の実施期間が終わる時点が含まれる事業年度の付加価値額です。申請時点の決算数値ではない点にご注意ください。
この要件では、事務局が一律の目標を決めるのではなく、申請者自身が4.0%以上の目標値を設定し、計画期間の最終年度にそれを達成することが求められます。つまり「4.0%」は下限であり、自社で「5.0%を目指す」と設定することもできます。
なお、この要件については、達成できなかった場合に補助金の返還を求めるという定めはありません。ただし、計画そのものが実現可能かどうかは審査で見られますので、根拠のない数字を並べるのではなく、投資によってどう売上と利益が伸びるのかを筋道立てて説明することが大切です。
(2)賃上げ要件:1人あたり給与を年平均3.5%以上増やす【返還義務あり】
2つ目は、従業員1人あたりの給与を、3〜5年の計画期間において年平均3.5%以上増やすという要件です。この要件は、目標を達成できないと補助金の返還が必要になります。
計算の考え方はシンプルです。
給与支給総額とは、従業員に支払った給与等(給料・賃金・賞与などを含む)の合計です。
ここに含まれないもの:役員報酬、福利厚生費、法定福利費(社会保険料の会社負担分)、退職金
「役員報酬は含まない」という点は、特に社長やご家族が役員になっている中小企業では重要です。社長の報酬を増やしても、この要件の達成にはつながりません。
この要件も、申請者自身が3.5%以上の目標値を設定します。そして、もう一つ忘れてはいけない手続きがあります。
社内に対して「わが社は1人あたり給与を年平均○%増やすことを目指します」と伝える、ということです。この表明を行っていなかった場合、交付決定が取り消され、補助金は全額返還となります。手続き自体は難しくありませんが、忘れると影響が非常に大きい項目です。
なお、基準となる3.5%より高い目標値を設定した場合、その高さと実現可能性に応じて審査で評価されます。ただし、実現できない数字を掲げれば、あとで返還につながります。「評価されたいから高く出す」のではなく、自社が確実に達成できる水準を見極めることが重要です。
補助事業の終了後は「事業化状況報告」という報告を行うことになり、その際に決算書や賃金台帳などの提出を求められます。数字は書類で確認されますので、日ごろから給与データを整理しておきましょう。
(3)事業場内最賃水準要件:地域別最低賃金+30円以上を毎年維持する【返還義務あり】
3つ目は、社内で一番低い賃金を、その地域の最低賃金より30円以上高い水準に保つという要件です。こちらも達成できない場合、補助金の返還が必要になります。
用語を整理します。
- 地域別最低賃金:都道府県ごとに国が定めている、賃金の下限額のこと。毎年改定されます
- 事業場内最低賃金:補助事業を実施する事業場(工場・店舗・事務所など)の中で、最も低い賃金のこと。事業場が複数ある場合は、その中で最も低くなる事業場のものを見ます
公募要領では、3〜5年の事業計画期間において「毎年」、事業場内最低賃金が補助事業実施場所の都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準であることと定められています。
ここでのポイントは「毎年」という言葉です。(2)の賃上げ要件が「計画の最終年度に達成できているか」で判定されるのに対し、この要件は計画期間中、毎年チェックされます。地域別最低賃金は毎年引き上げられていますので、「一度クリアしたから大丈夫」ではなく、改定に合わせて社内の賃金も見直し続ける必要があります。
こちらも事業化状況報告の際に賃金台帳などの提出を求められ、書類で確認されます。
(4)ワークライフバランス要件:一般事業主行動計画を公表する
4つ目は、次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく「一般事業主行動計画」を策定し、公表していることという要件です。
一般事業主行動計画とは、従業員が仕事と子育てを両立しやすい職場をつくるために、会社が「いつまでに・何をするか」を定めた計画書のことです。次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)第12条に定められています。
この要件を満たすには、応募申請時までに計画を策定し、情報サイト「両立支援のひろば」に、申請締切日時点で有効な一般事業主行動計画を公表する必要があります。
「両立支援のひろば」への掲載には1〜2週間程度を要し、公表申請の審査過程で不備が見つかることもあります。公募要領でも2週間以上の余裕をもって公表申請を行うこととされています。また、「両立支援のひろば」では審査状況の問い合わせを受け付けておらず、問い合わせても公表手続きは早まりません。締切間際に慌てても間に合わない可能性がある要件です。
なお、策定・公表した計画は、可能な限り管轄の都道府県労働局へ届け出ることとされています。
(5)子育て等に関する職場環境整備に向けた取り組み要件:3つから1つ選ぶ
5つ目は、「子育て等に関する職場環境整備」に向けた取り組みを行うことという要件です。次の(ア)〜(ウ)から1つを選択して取り組み、実施する具体的な内容を応募申請時に事業計画へ記載します。
| 選択肢 | 取り組みの内容 |
|---|---|
| (ア)ライフデザインサービスの活用 | 若手従業員が活用できることを目的に「ライフデザインサービス」を活用する。ライフプラン表・中長期の家計表など個人の財政的な人生計画表を作成するサービスや、家計・保険・住宅ローン・資産運用・老後資金などの相談に助言・提案を行うサービスが該当します。提供者の例:FP(ファイナンシャルプランナー)、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)、銀行・証券会社・保険会社など |
| (イ)育児等を支援するサービスの活用 | 社員の育児等を支援することを目的に各種サービスを活用する。対象は家事代行サービス、ベビーシッターサービスに限られ、さらに所定の認証事業者一覧に掲載されている事業者が提供するサービスに限ります |
| (ウ)既存制度の周知・普及・啓発 | 子育て等に関する職場環境整備に係る各種既存制度を、従業員に対して周知・普及・啓発する。例:産前・産後休業/育児休業/育児休業取得者の職場復帰時支援/所定外労働の制限・削減/短時間勤務制度/フレックスタイム制度/年次有給休暇/女性労働者の就職継続やキャリア形成の支援のための取り組み など |
この要件で注意していただきたいのが、(4)の一般事業主行動計画に書いた内容をそのまま持ってくるだけでは足りないという点です。公募要領では、今回実施する取組が、一般事業主行動計画の内容に留まらない「追加的な取組」であることを説明する必要があるとされています。「行動計画に書いてあるからOK」ではなく、それに上乗せする取り組みを考える必要があります。
また、実績報告の際には取り組みが実際に行われたかについての証憑(実施したことを示す書類など)の提出を求められます。計画に書いて終わりではなく、実行して記録を残すところまでがセットです。
「プラチナくるみん認定」「くるみん認定」「トライくるみん認定」のいずれかを取得している事業者は、本要件が免除されます。すでに認定を受けている会社は、自社の認定状況を確認してみてください。
(6)金融機関要件:借入をするなら「確認書」が必要
6つ目は、補助事業の実施にあたって金融機関等から資金提供を受ける場合は、その資金提供元の金融機関等から事業計画の確認を受けていることという要件です。確認を受けたら、「金融機関による確認書」を必ず提出します。
ここで大切なのは、すべての会社に必要な書類ではないという点です。
- 借入などで資金提供を受ける場合:確認書の提出が必要
- 自己資金のみで補助事業を実施する場合:提出不要
また、次の点も押さえておくと手続きがスムーズです。
- 金融機関等は事業所の所在地域にある必要はなく、任意の機関を選んで構いません
- 複数の金融機関等から資金提供を受ける場合は、任意の1者からの確認書があれば要件を満たします
金融機関に事業計画を見てもらい、確認書を出してもらうには、当然ながら金融機関側でも内容を検討する時間が必要です。締切直前に持ち込んでも間に合わないおそれがありますので、資金調達を予定している方は早めに相談を始めてください。
【重要】達成できないと補助金を返すことになる2つの要件
ここまで見てきた6つのうち、(2)賃上げ要件と(3)事業場内最賃水準要件の2つは、達成できなかった場合に補助金の返還が求められます。脅かすつもりはありませんが、申請前に正確に理解しておくべき、この制度で最も重要なポイントです。
(2)賃上げ要件の返還ルール
賃上げ要件には、返還が発生するパターンが2つあります。
交付申請時までに、全ての従業員または従業員代表者に対して目標値を表明していなかった場合、交付決定が取り消され、補助金は全額返還となります。手続き漏れによる全額返還ですので、絶対に忘れないようにしてください。
返還額は次の式で計算されます。
補助金返還額 = 補助金交付額 ×(1 −(最終年度の一人当たり給与支給総額の年平均成長率(%) ÷ 目標値(%)))
「目標に対してどれだけ届かなかったか」の割合を、補助金額に掛けた金額を返す、という考え方です。
また、年平均成長率がゼロ、もしくはマイナス成長だった場合は全額返還となります。
計算式だけでは分かりにくいので、考え方を言葉で補足します。仮に目標値を年平均3.5%と設定し、実際には年平均1.75%(目標の半分)にとどまった場合、「1 −(1.75 ÷ 3.5)= 0.5」となり、補助金交付額の半分を返還する計算になります。逆に、目標を上回って達成できていれば返還は生じません。
ただし、返還が求められない場合もあります。
- 付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として計画期間の過半数が営業利益赤字の場合
- 天災など、事業者の責めに負わない理由がある場合
これらに該当する場合は、一部の返還を求めないこととされています。また、返還額は交付された補助金額が上限です。補助金額を超えて返還を求められることはありません。
(3)事業場内最賃水準要件の返還ルール
返還額は次のとおりです。
返還額 = 補助金交付額 ÷ 事業計画期間の年数
たとえば5年計画で1年分の基準を満たさなかった場合、補助金交付額の5分の1を返還する、という計算になります。
この要件は毎年判定されるため、基準を下回った年ごとに返還が発生する仕組みです。地域別最低賃金は毎年改定されますので、改定額を確認して社内の賃金を見直す作業を、計画期間中は毎年続ける必要があります。
こちらにも例外があり、付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として当該事業年度の営業利益が赤字の場合や、天災など事業者の責めに負わない理由がある場合には返還を求められません。返還額は交付された補助金額が上限である点も同じです。
・賃上げ要件(2):判定は計画の最終年度。未達の割合に応じて返還
・事業場内最賃水準要件(3):判定は毎年。満たさなかった年ごとに「補助金額 ÷ 計画年数」を返還
いずれも、赤字が続いているといった一定の事情がある場合には配慮される仕組みになっています。とはいえ、「達成できる計画を立てること」が何よりの対策です。目標値は自社で設定できますので、審査でよく見せることだけを考えて背伸びした数字を置くのではなく、賃金の原資をどう確保するかまで含めて考えることをおすすめします。
手続きに時間がかかる要件は、今すぐ動きましょう
6つの要件のうち、自社の努力だけでは完結せず、外部の手続き待ちになるものが2つあります。この2つは、思い立ってすぐ用意できるものではありません。
一般事業主行動計画の公表:2週間以上の余裕を
(4)のワークライフバランス要件で必要な一般事業主行動計画は、「両立支援のひろば」への掲載に1〜2週間程度かかります。さらに、公表申請の審査過程で不備が見つかることもあるため、公募要領では2週間以上の余裕をもって公表申請を行うことが求められています。
そして重要なのは、「両立支援のひろば」では審査状況の問い合わせを受け付けておらず、問い合わせても公表手続きは早まらないという点です。締切直前に「まだ掲載されない」と焦っても、打つ手がありません。まだ策定・公表していない会社は、これを最優先の作業と考えてください。判定は申請締切日時点で有効な計画が公表されているかで行われます。
金融機関による確認書:相手のスケジュールもあります
(6)の金融機関要件で必要な確認書は、金融機関に事業計画を見てもらったうえで発行してもらう書類です。金融機関側にも検討の時間が必要ですし、担当者との日程調整も発生します。
借入を前提に投資計画を組んでいる場合は、事業計画の骨子が固まった段階で早めに金融機関へ相談を始めるのが安全です。融資の話と補助金の話を同時に進めておけば、確認書の依頼もスムーズになります。
公募開始:2026年6月29日/申請受付開始:2026年9月30日(水)/応募締切:2026年10月30日(金)18:00(厳守)/採択発表:2027年1月頃(予定)
※2026年7月17日にスケジュールが変更され、公募要領は1.1版に改訂されています。
本記事の公開時点(2026年7月30日)から締切まで、残り約3か月です。
補助額を上げる2つの特例と、その追加リスク
ここまでが、すべての申請者に共通する基本要件です。これに加えて、公募要領には「特例措置要件」(1-3-2)という仕組みがあります。追加の条件を満たすことで、補助上限額や補助率が上がるというものです。ただし、その分だけ守るべき約束も増えます。
賃上げ特例:補助上限額が上がる代わりに、返還リスクも増える
1つ目は賃上げ特例です。適用されると補助上限額が引き上げられます。条件は、3〜5年の事業計画期間において次の両方を満たすことです。
- 一人当たり給与支給総額を、基準値に加えて更に年平均成長率+2.5%(基準値3.5%と合わせて合計で年平均成長率+6.0%)以上増加させること
- 事業場内最低賃金を、基準値に加えて更に+20円(基準値+30円と合わせて合計で+50円)以上増加させること
応募申請時に、大幅な賃上げに取り組むための計画を電子申請システム内に入力し、記載内容の妥当性が審査されたうえで適用対象とするかが決まります。申請すれば必ず使えるわけではありません。
また、次の場合には適用できません。
- 各申請枠の補助上限額に達しない場合
- 革新的新製品・サービス枠で「地域別最低賃金引上げ特例」を申請する事業者
- 革新的新製品・サービス枠およびグローバル枠で申請する再生事業者
上記(1)(2)のいずれか一方でも達成できなかった場合、賃上げ特例による補助上限額の引上げ分の額を全額返還することになります。
補助額を大きくできる魅力的な仕組みですが、年平均6.0%の賃上げと最低賃金+50円を数年間続けられるかを冷静に見極めたうえで判断してください。
地域別最低賃金引上げ特例:補助率が2/3に上がる
2つ目は地域別最低賃金引上げ特例です。適用されると補助率が2/3に上がります。これは、最低賃金の引き上げの影響を大きく受けている会社を支援するための仕組みです。
条件は、2024年10月から2025年9月までの間で、「当該期間における地域別最低賃金以上〜2025年度改定の地域別最低賃金未満」の賃金で雇用している従業員が、全従業員の30%以上である月が3か月以上あることです。かみ砕くと、最低賃金の改定によって賃上げを迫られる従業員が、社内に3割以上いる月が3か月以上あったという状態を指します。応募申請時に指定様式と賃金台帳の提出を求められます。
この特例には、知っておくべき特徴があります。
- 本特例を適用する場合、基本要件から「(3)事業場内最賃水準要件」が除かれます。つまり、地域別最低賃金+30円の要件を満たす必要がなくなります
- 革新的新製品・サービス枠で申請する小規模企業者・小規模事業者、再生事業者、およびグローバル枠で申請する事業者は、もともと補助率が2/3のため適用できません
なお、補助上限額や補助率の具体的な金額・水準は申請枠ごとに異なります。詳しくは新制度の概要記事や枠の選び方の記事をご覧ください。
自社チェックリスト:6つの要件を満たせますか
ここまでの内容を、その場で確認できる形に整理しました。「はい/いいえ」でお答えください。「いいえ」や「分からない」が1つでもある場合は、その項目から手を付けることをおすすめします。
□ 直近の決算書から「営業利益+人件費+減価償却費」を計算できますか
□ その金額を、3〜5年かけて年平均4.0%以上増やす見通しを立てられますか
□ その増加が、今回の投資によってどう実現するかを説明できますか
□ 従業員に支払っている給与等の総額(役員報酬・福利厚生費・法定福利費・退職金を除く)を把握していますか
□ それを従業員数で割った「一人当たり給与」を、年平均3.5%以上増やし続けられますか
□ 交付申請時までに、目標値を全従業員または従業員代表者へ表明する準備がありますか
□ 事業化状況報告で提出する賃金台帳・決算書を整えておけますか
□ 自社(複数事業場がある場合は最も低い事業場)で一番低い賃金がいくらか、把握していますか
□ それは、補助事業を実施する都道府県の地域別最低賃金より30円以上高いですか
□ 毎年の最低賃金改定に合わせて、その水準を計画期間中ずっと維持できますか
□ 次世代法に基づく一般事業主行動計画を策定していますか
□ それを「両立支援のひろば」に公表していますか
□ 公表内容は、申請締切日時点で有効な内容になっていますか
□ 未着手の場合、2週間以上の余裕をもって公表申請できるスケジュールですか
□ くるみん認定(プラチナ/通常/トライ)を取得していますか → 取得済みならこの要件は免除
□ 未取得の場合、(ア)ライフデザインサービス/(イ)家事代行・ベビーシッター/(ウ)既存制度の周知のどれに取り組むか決めましたか
□ その取り組みは、一般事業主行動計画の内容に留まらない「追加的な取組」だと説明できますか
□ 実績報告で提出する証憑を残す段取りができていますか
□ 補助事業の資金は、自己資金のみですか → 自己資金のみなら確認書は不要
□ 借入等を予定している場合、その金融機関に事業計画を見てもらう相談を始めていますか
□ 「金融機関による確認書」を締切までに受け取れる見通しがありますか
□ 賃上げ特例:年平均+6.0%の賃上げと、事業場内最低賃金+50円を数年間続けられますか(未達なら引上げ分は全額返還)
□ 地域別最低賃金引上げ特例:2024年10月〜2025年9月の賃金台帳を確認し、対象となる従業員が全体の30%以上の月が3か月以上ありましたか
要件の判断に迷ったら、早めに相談を
6つの基本要件は、どれも公募要領に文章で書かれているものですが、「自社の場合はどう当てはまるのか」を判断するのは、実は簡単ではありません。付加価値額の起点となる年度をどう見るか、事業場が複数ある場合にどの賃金を見るか、行動計画の内容に対して何が「追加的な取組」になるか——このあたりは、実際の数字と社内の状況を突き合わせないと結論が出ません。
そして、この補助金の要件には「申請が通るかどうか」だけでなく「数年後に返還を求められないか」という側面があります。目標値は自社で設定できるからこそ、その設定こそが最も慎重に考えるべきポイントになります。
株式会社ミライズは、補助金申請に特化した中小企業診断士事務所です。累計補助金額23億円超の支援実績があり、採択率は70%を超えています。
- 全国オンライン完結:ZoomとGoogleドキュメントで完結します。出張費・交通費の上乗せはありません
- 診断士が直接対応:営業担当・代行ライターを挟まない、最初から最後まで同じ診断士が伴走
- リーズナブルな料金:オフィス維持コストを抑えた分、価格にしっかり還元
- 採択後の実績報告までサポート:申請して終わりではなく、入金まで一貫対応
「うちの賃上げ目標は何%が現実的か相談したい」「そもそも要件を満たせているか確認してほしい」——そんな段階のご相談も歓迎です。初回相談は完全無料、全国どこからでもオンラインでお話できます。
まとめ
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、6つの基本要件を満たす「3〜5年の事業計画」に取り組むことが前提の制度。1つでも満たせなければ申請できません
- (1)付加価値額:付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)を年平均4.0%以上増やす計画を自社で設定し、最終年度に達成する
- (2)賃上げ【返還リスクあり】:一人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上増やす。交付申請時までに従業員等へ目標値を表明しないと全額返還。最終年度に未達なら、未達の割合に応じて返還
- (3)事業場内最低賃金【返還リスクあり】:毎年、地域別最低賃金より30円以上高い水準を保つ。満たさない年ごとに「補助金額÷計画年数」を返還
- (4)ワークライフバランス:一般事業主行動計画を策定し「両立支援のひろば」に公表。掲載に1〜2週間、余裕は2週間以上必要なので最優先で着手を
- (5)子育て等の職場環境整備:(ア)〜(ウ)から1つ選び、行動計画に留まらない追加的な取組として計画に記載。くるみん認定取得済みなら免除
- (6)金融機関:借入等がある場合のみ「金融機関による確認書」が必要。自己資金のみなら不要
- 補助額を上げる賃上げ特例(合計年平均+6.0%・最低賃金+50円)は、未達なら引上げ分を全額返還。地域別最低賃金引上げ特例は補助率が2/3になり、適用時は要件(3)が除かれます
- 第1回公募の締切は2026年10月30日(金)18:00(厳守)。要件確認は計画づくりより先に。特に一般事業主行動計画の公表と金融機関への相談は今すぐ着手を
※ 本記事は2026年7月30日時点の公式公表情報(公募要領1.1版)に基づいています。