ものづくり補助金と新事業進出補助金が統合、新制度がスタート
2026年度、中小企業向け補助金の二本柱だった「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称:ものづくり補助金)」と「中小企業新事業進出補助金」が統合され、新しい制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」がスタートしました。2026年6月29日には、事務局である独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)の公式特設サイトが開設され、第1回公募の公募要領(申請ルールをまとめた文書)が公開されています。
新制度の目的は、中小企業が企業規模の拡大や付加価値向上を通じて生産性を高め、賃上げにつなげていくことを支援することです。新製品開発も新分野への挑戦も、この一つの制度の中から自社に合った「申請枠」を選んで申請する形になりました。
この記事では、3つの申請枠と補助額、第1回公募のスケジュール、共通要件をわかりやすく整理します。なお、旧制度で採択済み・申請中の案件は、旧制度のルールのまま継続されます。
・第1回公募のスケジュール(応募締切:2026年9月30日 18:00)
・3つの申請枠(革新的新製品・サービス枠/新事業進出枠/グローバル枠)の違いと、従業員規模別の補助上限・補助率
・全枠共通の6つの基本要件と、補助上限が上がる賃上げ特例
・広告宣伝・販売促進費が新たに補助対象に
第1回公募のスケジュール
第1回公募は次のスケジュールで進みます。応募締切は2026年9月30日(水)18:00(厳守)です。
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 公募要領公開(公募開始) | 2026年6月29日(月) |
| 申請受付開始 | 2026年8月31日(月) |
| 応募締切 | 2026年9月30日(水)18:00(厳守) |
| 採択発表 | 2026年12月頃(予定) |
| 交付申請 | 採択発表日から原則2か月以内 |
審査は書類審査に加えて、該当者のみ面接形式の口頭審査が行われます。採択後は、採択発表日から原則2か月以内に「交付申請」(補助対象経費の内容を確定させる手続き)が必要です。なお、第2回公募の予定は現時点で発表されていません。
申請にはGビズIDプライム(国の電子申請に使う会社用アカウント)が必要で、取得に時間がかかるため早めの準備をおすすめします。「予定」の日付は変更される場合があります。最新の公募要領は公式サイト(中小機構)でご確認ください。
3つの申請枠の全体像
新制度には、目的の異なる3つの申請枠があります。旧ものづくり補助金に相当する「革新的新製品・サービス枠」、旧新事業進出補助金に相当する「新事業進出枠」、海外展開(輸出)向けの「グローバル枠」です。まずは全体像を比較表で確認しましょう。
| 項目 | 革新的新製品・サービス枠 | 新事業進出枠 | グローバル枠 |
|---|---|---|---|
| 対象 | 革新的な新製品・新サービスの開発 | 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出 | 海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化など |
| 補助上限 | 750万〜2,500万円(賃上げ特例で最大3,500万円) | 2,500万〜7,000万円(賃上げ特例で最大9,000万円) | 新事業進出枠と同じ(最大7,000万円、賃上げ特例で最大9,000万円) |
| 補助率 | 中小企業1/2(一定条件で2/3)、小規模企業者・再生事業者2/3 | 中小企業1/2(一定条件で2/3) | 中小企業2/3 |
| 補助下限 | 100万円 | 750万円 | 750万円 |
| 事業実施期間 | 交付決定日から10か月以内 | 交付決定日から14か月以内 | 交付決定日から14か月以内 |
補助率とは、かかった経費のうち補助金でカバーされる割合のことです。新事業進出枠とグローバル枠は補助下限が750万円と高めのため、比較的大きな投資を伴う計画が前提になります。補助率が2/3になる「一定条件」とは地域別最低賃金引上げ特例のことで、地域別最低賃金に近い水準で雇用している従業員が多い(全従業員の30%以上の月が3か月以上ある)事業者が対象です。詳細は公募要領でご確認ください。
※ 事業実施期間には「交付決定日から10か月(新事業進出枠・グローバル枠は14か月)以内」に加えて、「採択発表日から12か月(同16か月)以内」という上限もあります。
革新的新製品・サービス枠の詳細
革新的新製品・サービス枠は、旧ものづくり補助金に相当する枠で、革新的な新製品・新サービスの開発に取り組む中小企業を支援します。補助上限は従業員数によって次のように決まります。
| 従業員数 | 補助上限 | 賃上げ特例適用時 |
|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 850万円 |
| 6〜20人 | 1,000万円 | 1,250万円 |
| 21〜50人 | 1,500万円 | 2,500万円 |
| 51人以上 | 2,500万円 | 3,500万円 |
補助率は中小企業1/2(一定条件を満たす場合は2/3)、小規模企業者・再生事業者は2/3で、補助下限は100万円です。上限750万〜2,500万円は旧ものづくり補助金(高付加価値化枠)と同水準です。事業実施期間は交付決定日から10か月以内と、3つの枠で最も短い点に注意してください。
この枠は革新的な新製品・新サービスの開発が対象で、既存製品の生産工程の改善・効率化だけを行う事業や、開発を伴わない単なる設備導入は対象外です(この点は旧ものづくり補助金の第23次から同様です)。また、同業他社で既に広く普及している製品・サービスの開発も対象になりません。
新事業進出枠の詳細
新事業進出枠は、旧新事業進出補助金(2025年に事業再構築補助金の後継として始まった制度)に相当する枠です。既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出、つまり「今の本業とは別の新しい事業への挑戦」を支援します。
| 従業員数 | 補助上限 | 賃上げ特例適用時 |
|---|---|---|
| 20人以下 | 2,500万円 | 3,000万円 |
| 21〜50人 | 4,000万円 | 5,000万円 |
| 51〜100人 | 5,500万円 | 7,000万円 |
| 101人以上 | 7,000万円 | 9,000万円 |
補助率は中小企業1/2(一定条件を満たす場合は2/3)、補助下限は750万円、事業実施期間は交付決定日から14か月以内です。補助上限は最大7,000万円(賃上げ特例で最大9,000万円)と大きく、まとまった投資を伴う新規事業に向いた枠です。
グローバル枠の詳細
グローバル枠は、海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化などを支援する枠です。補助率は中小企業2/3、補助下限は750万円で、従業員規模別の補助上限は新事業進出枠と同じ(最大7,000万円、賃上げ特例で最大9,000万円)です。事業実施期間は交付決定日から14か月以内です。
新制度の目玉の一つが、このグローバル枠の大幅な拡充です。
| 項目 | 旧ものづくり補助金(グローバル枠) | 新制度(グローバル枠) |
|---|---|---|
| 補助上限 | 最大3,000万円(大幅賃上げ特例で最大4,000万円) | 最大7,000万円(賃上げ特例で最大9,000万円) |
| 対象となる事業 | 海外直接投資・輸出・インバウンド対応・海外企業との共同事業の4類型 | 海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化に特化 |
補助上限は大幅に引き上げられた一方、対象は「輸出」のための国内体制づくりに絞られました。海外拠点の設立といった海外への直接投資や、インバウンド対応そのものは新制度のグローバル枠の対象ではない点にご注意ください。また、取引先からの要請で行う事業(自社主導でない事業)も対象外です。グローバル枠に限り、海外旅費や通訳・翻訳費も補助対象になります。輸出向けの体制づくりを国内で進めたい会社は、検討する価値の大きい枠です。
全枠共通の基本要件(6つ)
どの枠で申請する場合も、次の6つの基本要件を満たす事業計画をつくる必要があります。
1. 付加価値額要件
補助事業終了後3〜5年で、付加価値額(会社が生み出した利益や人件費などの合計)を年平均+4.0%以上のペースで伸ばす計画が必要です。
2. 賃上げ要件
1人当たり給与支給総額を年平均+3.5%以上のペースで引き上げる計画が必要です。達成できなかった場合には、補助金の一部を返還する規定があります。
3. 事業場内最低賃金要件
毎年、事業場内最低賃金(社内でいちばん低い時給)を地域別最低賃金+30円以上の水準に保つ必要があります。こちらも未達の場合は返還規定があります。
4. ワーク・ライフ・バランス要件
次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画(従業員の働きやすい環境づくりに関する取組計画)を策定し、国のサイト「両立支援のひろば」で公表しておく必要があります。掲載までに1〜2週間程度かかるため、早めの準備が必要です。
5. 子育て等に関する職場環境整備要件
子育てを支援する職場づくりとして、次のいずれか1つに取り組み、内容を事業計画に記載する必要があります。①従業員向けの「ライフデザインサービス」(家計・資産形成などの相談サービス)の活用、②家事代行・ベビーシッターサービスの活用、③育児休業など既存制度の従業員への周知・啓発。なお「くるみん認定」を取得している会社は免除されます。
6. 金融機関要件
金融機関から借入などの資金提供を受けて事業を行う場合は、その金融機関に事業計画の内容を確認してもらう必要があります(「金融機関による確認書」の提出が必要。自己資金のみの場合は不要)。
賃上げ要件と事業場内最低賃金要件は、「約束した水準を達成できなかった場合、補助金の一部を返す」ルールです。背伸びした数字ではなく、収益計画と整合した無理のない賃上げ計画を立てることが大切です。細かい判定方法は公募要領でご確認ください。
賃上げ特例で補助上限アップ
基本要件を上回る賃上げに取り組む場合、各枠の補助上限が引き上げられる「賃上げ特例」が用意されています。条件は次の2つを両方満たすことです。
| 項目 | 基本要件 | 賃上げ特例 |
|---|---|---|
| 1人当たり給与支給総額の年平均成長率 | +3.5%以上 | +6.0%以上(+2.5%上乗せ) |
| 事業場内最低賃金 | 地域別最低賃金+30円以上 | 地域別最低賃金+50円以上(+20円上乗せ) |
特例が適用されると、たとえば革新的新製品・サービス枠(従業員51人以上)では補助上限が2,500万円から3,500万円に、新事業進出枠(従業員101人以上)では7,000万円から9,000万円に広がります。詳しい条件や未達時の取り扱いは公募要領でご確認ください。
補助対象経費:広告宣伝・販売促進費が新たに対象に
補助の対象になる経費は次のとおりです。
- 機械装置・システム構築費
- 建物費(新事業進出枠・グローバル枠のみ。革新的新製品・サービス枠は対象外)
- 運搬費
- 技術導入費
- 知的財産権等関連経費
- 外注費
- 専門家経費
- クラウドサービス利用費
- 原材料費
- 広告宣伝・販売促進費
- 海外旅費・通訳翻訳費(グローバル枠のみ)
※ 革新的新製品・サービス枠では機械装置・システム構築費、新事業進出枠・グローバル枠では機械装置・システム構築費または建物費のいずれかを、必ず経費に含める必要があります。
旧ものづくり補助金では、広告宣伝・販売促進費は原則対象外(グローバル枠の輸出関連事業に限り対象)でした。新制度では全枠で対象となり、新製品・新サービスを「開発する」費用だけでなく「売るための」広告・販促費用まで、開発から販売までを一つの計画として組み立てられるようになりました。
まとめ
- 2026年度、ものづくり補助金と中小企業新事業進出補助金が統合され、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」がスタート
- 第1回公募の応募締切は2026年9月30日(水)18:00。申請受付開始は8月31日、採択発表は2026年12月頃(予定)
- 申請枠は3つ:革新的新製品・サービス枠(上限750万〜2,500万円)/新事業進出枠(上限2,500万〜7,000万円)/グローバル枠(上限は新事業進出枠と同じ、旧制度から大幅拡充)
- 賃上げ特例(1人当たり給与+6.0%かつ最低賃金+50円)を使えば、補助上限は最大9,000万円までアップ
- 広告宣伝・販売促進費が新たに補助対象に
- 賃上げ要件・最低賃金要件には未達時の返還規定があるため、無理のない計画づくりが重要
※ 本記事は2026年7月10日時点の公式公表情報に基づいています。申請前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
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