「前に補助金を使ったから、次も使いたい」「機械は省力化投資補助金で、新しい事業は別の補助金で」。一度補助金を使った会社ほど、こう考えます。ところが、前の補助金との関係で、そもそも申請できなかったり、申請はできても減点されたりすることがあります。気づかないまま準備を進めると、締切の直前に計画が止まってしまいます。

この記事では、当社が支援した2つの事例をもとに、前の補助金や、同時に使う補助金とのあいだで確かめる点を、公募要領(募集のルールをまとめた資料)の文言で整理します。

※当社が実際に支援した事例をもとにしています。会社が特定されないよう、業種・地域・金額などの一部をぼかしています。

補助金ごとの支援の流れは、事例紹介の記事(宿の新事業進出、冷凍食品のものづくり補助金、ICT建機の省力化投資補助金)にまとめています。

この記事で分かること

※資料名のあとのページは、当社が参照した版のPDFのページ番号です(印刷されたページ番号とずれることがあります)。決まりは補助金ごと・公募の回ごとに変わることがあるので、申請する回の最新の公募要領で確かめてください。

2つの事例で見る、ほかの補助金との関係で確かめること

E社:2つの補助金の申請をほぼ同時に準備。共通の数字をそろえ、グループで1申請を守った

E社は、建設関係の会社です。省力化投資補助金(一般型)では現場の作業を減らす機械を、新事業進出・ものづくり補助金(新事業進出枠)では本業とは別の新しい事業の設備を入れる計画で、ほぼ同じ時期に2つの申請を準備しました。どちらも、申請を準備した段階の話です。主な点は、次のとおりです。

F社:同じ建物で、階と経費を分けて2つの補助金を検討した

F社はカフェを営む会社です。1つの建物の中で、2階の改装は持続化補助金、地下の階を使ったコーヒー豆の焙煎はものづくり補助金、と、使う場所と経費を分けて2つの補助金を使うことを検討しました。

同じ建物・同じ時期に2つの補助金を使うときは、どの経費をどちらに入れるのかを、最初にはっきり分けておく必要があります。理由は、次の「公式の決まり」で説明します。

公式の決まり①:新事業進出・ものづくり補助金

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領(当社が参照した版)から、前の補助金に関わる決まりを抜き出します。

前の補助金との間隔(いわゆる「16か月ルール」)

よく「16か月ルール」と呼ばれる決まりです。公募要領の「補助対象外となる事業者」の1番目に、次のように書かれています(p.22)。

公募要領の文言:「本補助金の申請締切日を起点にして16か月以内に以下の補助金の補助金交付候補者として採択された事業者(採択を辞退した事業者を除く)、又は申請締切日時点において以下の補助金の交付決定を受けて補助事業実施中の事業者」

「以下の補助金」は、事業再構築補助金、新事業進出補助金、ものづくり補助金、新事業進出・ものづくり補助金の4つです。省力化投資補助金と持続化補助金は入っていません。ポイントは3つです。

上の4つの補助金どうしは、同じ時期に応募すること自体はできます。ただし2つ以上採択されたら、「交付を受ける補助金を1つだけ選択して、交付申請を行ってください」とされ、選ばずに両方から受け取ると、交付決定日が遅い方が取り消され、返還を求められます(p.22)。

省力化投資補助金など、ほかの補助金と同じ時期に申請することもできます。ただし、補助対象経費が重なる事業は対象外です(公式サイトのよくあるご質問 Q4)。同じ事業で省力化投資補助金にも採択されたときは、1つだけを選んで交付申請します(省力化の公募要領 p.14)。

過去3年間の交付決定の回数

公募要領の文言:「応募申請日を起点にして過去3年間に「事業再構築補助金」、「新事業進出補助金」又は「ものづくり補助金」の交付決定を合計で2回以上受けた事業者」は対象外(p.25)

1回でも減点があります。減点の項目「補助金複数回利用者」は、「申請締切日時点を起点にして、過去3年間に、ものづくり補助金または新事業進出補助金で交付決定を1回受けている事業者」で、事業再構築補助金は入っていません(p.51)。なお、不採択だった申請は、採択も交付決定も受けていないので、16か月や回数の決まりには数えません(不採択の会社は、計画を見直して再び申請できます。p.11)。

前の補助金の報告漏れ・返還漏れ

前の補助金の手続きが残っていても、対象外になります。事業再構築補助金、新事業進出補助金、ものづくり補助金、新事業進出・ものづくり補助金のどれかで、次に当たる会社は申請できません。あとで分かった場合も、採択や交付決定が取り消されます(p.22〜23)。

グループ会社(下で説明する「みなし同一事業者」)が当たる場合も、対象外です(p.11)。前の補助金の報告を出し忘れていないかは、グループ会社の分も含めて確かめてください。

前の補助金の「その後」による減点

減点の項目「他の補助事業の事業化が進展していない事業者」では、過去に新事業進出補助金・事業再構築補助金・ものづくり補助金を受けた場合、「直近の事業化状況報告等における事業化段階が3段階以下である場合は、減点を行います」とされています(p.50)。事業化の段階は、次の5つです(新事業進出・ものづくり補助金の応募申請ガイド p.79)。

つまり、前の補助金の事業が「続けて売れている」状態(第4段階以上)でないと、減点されます。

賃上げの減点もあります。中小企業庁が所管する補助金で賃上げの加点を受けて採択されたのに、その要件を達成できないと、未達の報告から18か月の間、災害などの正当な理由がない限り、大幅に減点されます(p.50)。対象の補助金には、持続化補助金や省力化投資補助金も入っています。

基本の要件を達成できなかったときの減点もあります。ものづくり補助金・新事業進出補助金で交付決定を受けて事業をしたのに、基本の要件(賃上げ要件と、事業場内の最低賃金の水準の要件)を達成できなかった事業者は、減点されます。こちらは、加点を受けていなくても当たります(p.51。対象になる公募の時期は、文言で確かめてください)。

新事業進出枠の「新しさ」は、公募開始日が区切り

公募要領の文言:「過去に製造等していた製品等を再製造等することは、新たな製品等を製造等しているとは言えず、補助対象外です」「本補助金の申請予定公募回の公募開始(=公募要領公開)日以降に初めて取り組んでいる事業について、「新規性」を有するものとみなします」(p.8)

前の補助金で始めた商品の延長で新しい事業を考えるときは、新しい事業の商品やサービスを、公募開始日より前に作ったり、売ったり、提供したりしていないかを確かめます。応募申請ガイドも、過去に作っていた商品をまた作る場合や、公募開始日の時点ですでに売上がある場合を、「新しさ」に当たらない例に挙げています(p.10)。狙うお客様も確かめます。公募要領では、「新たな市場」は「既存事業において対象となっていなかったニーズ・属性(法人/個人、業種、行動特性等)を持つ顧客層を対象とする市場」とされています(p.8)。

グループで1申請(みなし同一事業者)

「同一事業者での応募は、1回の公募につき1申請に限ります」。親会社が議決権の50%超を持つ子会社や、代表者と住所が同じ法人なども「みなし同一事業者」(同じ会社とみなされる会社)として、1回の公募で1社しか申請できません(p.11)。グループの別の会社が、この新事業進出・ものづくり補助金ですでに採択・交付決定を受けていれば、「同一事業者による2回目の申請」として扱われ、一定の条件を満たす場合に限って申請できます(p.11)。グループ会社がすでに行っている事業を行う計画も、対象外です(p.26)。

同じ経費の二重取りの禁止と、申請歴の入力

国が助成する制度との重複を含む事業や、国の補助金と補助対象経費(補助の対象になる経費)が重複する事業、中小企業庁が所管する補助金(省力化投資補助金など)と同一の補助対象経費を含む事業は、対象外です。経費が重なる場合だけが対象ではありません。審査では、ほかの補助金の事務局が持っている申請・交付の情報も使われます(p.27)。

申請歴の書き漏れに注意:公募要領は「これまでに交付決定を受けた又は現在申請している(応募申請、交付申請等すべてを含む)補助金等の実績については、必ず応募申請時に電子申請システムに入力してください」とし、記載がない場合は「虚偽申請として不採択となります」としています(p.27)。いま結果待ちの補助金も、入力の対象です。また、故意または重大な過失で虚偽の内容を申請すると、次回以降の公募への申請も受け付けられなくなります(p.25)。

公式の決まり②:省力化投資補助金(一般型)

省力化投資補助金(一般型)の公募要領とよくある質問(当社が参照した版)では、決まりの立て方が違います。ものづくり・事業再構築・新事業進出補助金との関係を、期間ではなく「前の補助金の支払いが済んだか」で区切っています。いっぽう、観光庁の補助とのあいだには、期間の決まりがあります。

なお、当社が参照した省力化の公募要領では、支払いが済んでいない補助金の一覧が、以前の3つの補助金の名前で書かれています。新事業進出・ものづくり補助金の扱いは、申請する回の公募要領で確かめてください。

補助金ごとの違いを一覧で

確かめる点新事業進出・もの省力化(一般型)
前の補助金からの期間締切から16か月観光庁補助は10か月
前の補助金の進み具合実施中は不可申請中・入金前は不可
過去3年の交付決定2回以上で不可2回以上で不可
報告漏れ・未返還対象外項目なし
過去3年に1回減点項目なし
事業化の段階3段階以下で減点項目なし
基本要件の未達減点項目なし
賃上げ加点の未達18か月減点18か月減点
同じ経費の重複対象外対象外
申請歴の書き漏れ不採択不採択

※表の言葉の補足です。

以前の補助金では、数える範囲が違った

決まりは回ごとに変わります。以前のものづくり補助金も、版によって数える範囲が違いました。当社が参照した古い版の公募要領では、間隔は「過去14か月以内に本補助金の補助金交付候補者として採択された事業者」で、ものづくり補助金だけを数えていました(p.17)。

最後の公募の公募要領(ものづくり補助金の公募は、もう終わっています)では、間隔はすでに「申請締切日を起点にして16ヶ月以内」で、新事業進出・事業再構築・ものづくりの3つをまとめて数えていました(p.16)。いっぽう回数は、どちらの版も「過去3年間に2回、本補助金の交付決定を受けた事業者」で、ものづくり補助金だけを数えていました(p.17)。今の新事業進出・ものづくり補助金は、回数も3つをまとめて数えます。以前の制度で受けた補助金も、今の決まりで数え直してください。

防ぎ方・進め方:次の申請の前に、この順番で確かめる

  1. 申請歴を1枚の表にする:過去に受けた補助金と申請中の補助金を、グループの会社の分も含めて書き出します。名前、採択と交付決定の日、事業の状態(実施中・実績報告済み・入金済み)、事業化の段階、賃上げの加点の有無まで書けば、電子申請の入力にも使えます。
  2. 締切日から逆算して絞る:上の決まりに当てはめ、今回の締切で出せる補助金を絞ります。数え始めの日(申請締切日か、応募申請日か)は決まりごとに違うので、文言で確かめます。
  3. 2つ使うなら、順番を決める:当社が参照した版では、省力化投資補助金を受けていても、新事業進出・ものづくり補助金の間隔の決まりには当たりません。逆に、ものづくり補助金などの交付決定を受けると、入金が済むまで省力化投資補助金には申請できません。順番によって、次に出せる時期が変わります。E社のように、同じ時期に2つの申請を進めることもできます。
  4. 経費と事業の中身を分ける:場所・設備・経費を補助金ごとに分けて一覧にします(F社は、階と経費を分けて検討しました)。新事業進出・ものづくり補助金の公募要領は、経費の重複だけでなく、「国(独立行政法人等を含む)が助成する制度との重複を含む事業」も対象外としています(p.27)。経費が別でも、中身が同じ事業に見えないようにします。持続化補助金など、この記事で取り上げていない補助金の側の決まりも、それぞれの公募要領で確かめます。
  5. 共通の数字をそろえる:審査では、ほかの補助金の申請の情報も使われます。E社のように共通の数字はそろえ、結果の出ていない計画は、もう一方の計画の前提にしません。

チェックリスト:次の補助金に申請する前に

まとめ

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