新事業進出補助金の概要

新事業進出補助金は、中小企業が新たな事業分野に進出するための設備投資やシステム導入を支援する国の補助金制度です。これまで「事業再構築補助金」として広く知られていた制度の後継にあたり、より明確に「新分野への進出」に焦点を当てた設計に改められました。

事業再構築補助金との大きな違いは、「既存事業の転換」だけでなく、「既存事業を維持しながら新たな柱を立てる」という取り組みにも幅広く対応している点です。本業は続けたまま、新しい事業で売上の多角化を図りたいという企業に適した制度と言えます。

対象となる企業

新事業進出補助金の対象は、中小企業基本法に定める中小企業および特定非営利活動法人です。業種ごとに資本金や従業員数の上限が定められていますので、自社が中小企業の定義に該当するかを事前に確認してください。

なお、大企業の子会社(いわゆる「みなし大企業」)は対象外です。また、過去に事業再構築補助金で採択を受けた企業であっても、新たな事業内容であれば申請は可能ですが、同一の事業内容での重複申請はできません。

従業員数別の補助上限額

新事業進出補助金の補助上限は、従業員数によって異なります。以下の表をご確認ください。

従業員数 補助上限額(通常) 大幅賃上げ特例 補助率
20人以下 2,500万円 3,000万円 1/2
21〜50人 4,000万円 5,000万円 1/2
51〜100人 5,500万円 7,000万円 1/2
101人以上 7,000万円 9,000万円 1/2

最大で9,000万円と、中小企業向けの補助金としてはかなり手厚い水準です。特に従業員101人以上の企業にとっては、大規模な設備投資の資金負担を大幅に軽減できるチャンスとなります。

基本要件(付加価値額 年+4%)

新事業進出補助金の申請にあたっては、事業計画において「付加価値額を年率4%以上向上させる」という基本要件を満たす必要があります。

付加価値額とは、おおまかに言えば「営業利益 + 人件費 + 減価償却費」で計算される指標です。単に売上が増えるだけでなく、企業が生み出す価値そのものが増加するかどうかが問われます。

付加価値額の計算式:
付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費

例)現在の付加価値額が5,000万円の場合、3年後に5,624万円以上(年率4%成長)の計画が必要です。

対象となる経費

補助金の対象となる経費は、新事業に直接必要なものに限定されています。主な対象経費は以下のとおりです。

対象外の経費にご注意:土地の取得費、車両購入費(一部例外あり)、消耗品費、旅費交通費の一部などは補助対象外です。また、補助事業開始前に発注・契約した経費も対象になりませんので、必ず採択後に手続きを進めてください。

申請の流れ

新事業進出補助金の申請から採択までの流れは、大きく以下のステップで進みます。

ステップ1:GビズIDの取得

申請は電子申請システムを通じて行うため、事前に「GビズIDプライム」の取得が必要です。取得に2〜3週間かかることがありますので、早めに手続きを始めてください。

ステップ2:認定経営革新等支援機関との連携

事業計画書の作成にあたっては、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)と連携することが求められます。支援機関による確認書が申請に必要な書類の一つです。

ステップ3:事業計画書の作成・提出

新事業の概要、市場分析、収支計画、設備投資の内容などを記載した事業計画書を作成し、電子申請システムから提出します。

ステップ4:書面審査

提出された事業計画書をもとに、外部審査委員による書面審査が行われます。

ステップ5:口頭審査(一部の申請者が対象)

新事業進出補助金の特徴の一つが、口頭審査が設けられている点です。一部の申請者に対して、オンラインでの口頭審査が実施されます。口頭審査では、事業計画の内容について審査委員から質疑が行われ、経営者が直接回答する必要があります。対象となった場合に備え、事前の準備をしておくことが重要です。

ステップ6:採択・交付決定

口頭審査の結果を踏まえて、最終的な採択が決定します。採択後、交付申請を経て交付決定を受け、事業を開始します。

申請にあたって押さえるべきポイント

  1. 新規性の明確化:既存事業との違い、新しい市場・顧客層を明確に定義する
  2. 収支計画の合理性:付加価値額年+4%を達成できる根拠を数値で示す
  3. 実施体制の説明:新事業を推進する人材・組織体制を具体的に記載する
  4. 口頭審査への備え:一部の申請者に口頭審査が実施されるため、経営者自身が計画を理解し、質問に的確に回答できるよう準備する