はじめに ― 第4回公募が始まりました
令和8年3月27日、新事業進出補助金の第4回公募が開始されました。この補助金は、中小企業が新しい事業分野に挑戦するための設備投資やシステム導入を支援する制度で、最大9,000万円(大幅賃上げ特例適用時)の補助を受けることができます。
第1回公募の採択率は約37.2%(応募3,006件に対し採択1,118件)でした。約3社に1社が採択されている計算ですが、裏を返せば6割以上の企業が不採択となっています。しっかりとした準備なしに採択を勝ち取ることは難しい補助金です。
そして今回の第4回は、現行制度としての最終回となる見込みです。2026年度中に「ものづくり補助金」との統合が予定されており、統合後は申請の要件や審査の基準が大きく変わる可能性があります。新事業への進出をお考えの企業にとって、今の制度で申請できる最後のチャンスになるかもしれません。
第4回公募の基本スケジュール
公募開始:令和8年3月27日(金)
申請受付開始:令和8年5月19日(火)
応募締切:令和8年6月19日(金)18:00
採択結果発表:令和8年9月末頃(予定)
公募開始から応募締切まで約3か月ありますが、実際に申請書類を提出できるのは5月19日以降です。事業計画の作成や必要書類の準備には相応の時間がかかりますので、「まだ先」と思わず、今から準備を始めることが大切です。
申請ポイント① ― GビズIDプライムの事前取得
新事業進出補助金の申請は、すべてインターネット上の電子申請システムで行います。この申請システムを利用するためには、「GビズIDプライム」というアカウントが必要です。
GビズIDプライムは、国が提供する事業者向けの共通認証サービスです。取得自体は無料ですが、申請してから発行されるまでに2〜3週間かかることがあります。まだ取得していない方は、すぐに手続きを開始してください。
1. GビズIDの公式サイトにアクセスし、「gBizIDプライム作成」から申請
2. 必要事項を入力し、印鑑証明書を郵送(または電子申請)
3. 審査完了後、メールでアカウント情報が届く(2〜3週間程度)
すでにGビズIDプライムをお持ちの方は、ログインできるか事前に確認しておきましょう。パスワードを忘れている場合、再設定にも時間がかかることがあります。
認定支援機関との連携も早めに
申請にあたっては、「認定経営革新等支援機関」(認定支援機関)による確認書が必要です。認定支援機関とは、国から認定を受けた専門家や金融機関のことで、事業計画の実現可能性を第三者の目で確認する役割を担います。
支援機関によっては、繁忙期に対応が遅れることもありますので、早い段階で相談を始めておくことが重要です。
申請ポイント② ― 新事業の「新規性」を明確にする
新事業進出補助金で最も重要なのは、取り組もうとしている事業が本当に「新しい事業」であるかどうかです。ここが不明確だと、審査で大きく減点されるか、そもそも要件を満たさないと判断される可能性があります。
「既存事業の延長」ではNGです
よくある失敗例として、既存事業で使っている設備を新しくするだけの計画や、すでに手がけている事業の対象エリアを広げるだけの計画があります。これらは「新規性がない」と判断されやすいパターンです。
新規性があると認められるためには、以下のような要素が求められます。
- 新しい製品やサービス:これまで自社で提供していなかった製品・サービスを開発・提供すること
- 新しい市場・顧客層:既存事業とは異なる顧客層や市場に進出すること
- 新しい技術や手法:これまでの自社にはなかった技術や生産方式を導入すること
新規性を整理するための3つの質問
自社の計画に新規性があるかどうかを確認するために、以下の3つの質問に答えてみてください。
- この事業で提供する製品・サービスは、自社でこれまで扱っていなかったものか?
- この事業のターゲットとなる顧客層は、既存事業と明確に異なるか?
- この事業を実現するために、新たな設備投資や技術の導入が必要か?
3つとも「はい」と答えられる場合は新規性が高いと言えます。1つでも「いいえ」となる場合は、計画の練り直しや、申請書での説明の工夫が必要かもしれません。
申請ポイント③ ― 数値計画の整合性を確保する
新事業進出補助金の申請では、具体的な数値を使った事業計画が求められます。審査員は数字のつじつまが合っているかを細かく確認しますので、計画全体の整合性が非常に重要です。
基本要件:付加価値額の年平均成長率4%以上
新事業進出補助金の基本要件として、補助事業の終了後、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)を年平均4%以上成長させる計画であることが求められます。
たとえば、現在の付加価値額が3,000万円であれば、3年間の事業計画期間で約3,375万円以上に増やす計画が必要になります。
付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費
現在:営業利益 500万円 + 人件費 2,000万円 + 減価償却費 500万円 = 3,000万円
3年後目標:3,000万円 × 1.04 × 1.04 × 1.04 = 約3,375万円(年平均4%成長)
新事業の売上比率10%以上
もうひとつ重要な数値基準として、新事業の売上が全体の売上の10%以上を占める計画であることが求められます。「片手間の副業」ではなく、会社の新たな柱となる事業であることを、売上の数字で示す必要があります。
数値計画でよくあるミス
- 売上の伸びに対して、原価や人件費の増加が考慮されていない
- 設備投資による減価償却費の変動が反映されていない
- 既存事業と新事業の売上を混同して計算している
- 市場規模に対して非現実的な売上目標を設定している
申請ポイント④ ― 口頭審査への万全の準備
新事業進出補助金では、書面審査に加えて口頭審査(オンライン面接)が実施されます。これは他の多くの補助金にはない特徴的な審査方法です。
口頭審査の基本ルール
- 形式:オンライン(ビデオ通話)で実施
- 出席者:経営者本人のみ。コンサルタントや支援機関の同席は認められません
- 内容:事業計画の内容について審査員から質問され、経営者が直接回答する
口頭審査で聞かれやすい質問
過去の公募で口頭審査を経験された企業の声をもとに、よく聞かれる質問の傾向をまとめます。
- 「なぜこの新事業に取り組むのですか?」 ― 経営者自身の言葉で、動機や背景を説明できるようにしましょう
- 「既存事業との違いは何ですか?」 ― 新規性のポイントを簡潔に答えられるよう準備してください
- 「売上目標の根拠を教えてください」 ― 具体的な受注見込みや市場データをもとに説明できると説得力が増します
- 「設備投資の内容と金額の妥当性は?」 ― なぜその設備が必要で、なぜその金額なのかを説明できるようにしましょう
- 「事業のリスクと対策は?」 ― 想定されるリスクとその対処方法を事前に考えておきましょう
口頭審査の準備のコツ
口頭審査を乗り越えるための準備のポイントをお伝えします。
- 事業計画書を何度も読み返す:自分の言葉で説明できるまで、計画書の内容を頭に入れてください
- 想定質問への回答を準備する:上記のような質問に対する回答を、箇条書きでまとめておきましょう
- 模擬面接を行う:社内の方や支援機関に協力してもらい、実際の質疑応答を練習しましょう
- オンライン環境を整える:通信環境、カメラ、マイクの動作確認を事前に行いましょう
- 簡潔に答える:質問に対して長々と話すのではなく、結論から簡潔に答えることを意識しましょう
申請ポイント⑤ ― 最終回を見据えた戦略的な申請
冒頭でもお伝えしたとおり、第4回は現行の新事業進出補助金としての最終回となる見込みです。2026年度中にものづくり補助金との統合が予定されており、統合後は制度の枠組みが大きく変わることが想定されます。
なぜ「今回」が重要なのか
統合後の新制度については、まだ詳細が発表されていません。しかし、以下のような変化が予想されます。
- 申請の要件や審査基準が変わる可能性がある
- 補助上限額や補助率が見直される可能性がある
- 「新事業進出」に特化した枠組みがなくなる可能性がある
- 新制度の立ち上げ直後は、運用が安定しない可能性がある
現行制度の内容をよく理解し、要件を満たせる見込みがある企業にとっては、今回の第4回で申請するのが最も確実な選択肢です。
「見送り」にもリスクがあります
「今回は準備が間に合わないから、次の制度で申請しよう」という判断もあるかもしれません。しかし、統合後の新制度がいつ公募を開始するか、どのような要件になるかは不透明です。新事業への進出を計画している場合は、可能な限り今回の第4回での申請を検討してください。
4月前半:GビズID取得の確認、認定支援機関への相談開始
4月後半〜5月前半:事業計画書の作成、数値計画の策定
5月中旬:認定支援機関による計画書の確認・修正
5月19日以降:電子申請システムでの申請手続き
6月上旬:申請書類の最終確認・提出(締切の1週間前が目安)
まとめ ― 早めのご相談が採択への近道です
新事業進出補助金 第4回公募のポイントを改めて整理します。
- GビズIDプライムの取得には2〜3週間かかる。まだの方は今すぐ手続きを
- 新事業の「新規性」を明確に。既存事業の延長ではなく、新たな挑戦であることを示す
- 数値計画の整合性を丁寧に。付加価値額+4%、売上比率10%以上を根拠とともに示す
- 口頭審査は経営者本人が対応。事業計画を自分の言葉で語れるよう準備する
- 第4回は現行制度の最終回の見込み。申請できる条件が揃っているなら、今回が最善のタイミング
補助金の申請は、計画書の作成から提出まで多くの工程があります。お一人で進めるのが不安な場合は、認定支援機関にお早めにご相談ください。申請の方向性を固めるだけでも、準備のスピードが大きく変わります。