口頭審査とは
新事業進出補助金では、書面審査に加えて「口頭審査」が実施されます。これは、提出された事業計画書の内容について、審査委員が経営者に直接質問を行い、その回答をもとに計画の妥当性や実現可能性を確認するための審査です。
口頭審査は、事業再構築補助金の時代から導入された仕組みで、書面だけでは判断しにくい「経営者の本気度」や「計画への理解度」を見極める目的があります。書面審査で高い評価を得ていても、口頭審査での対応が不十分であれば不採択になる可能性があるため、しっかりとした準備が必要です。
口頭審査の流れ
口頭審査はオンライン(ビデオ会議システム)で実施されます。審査の当日の流れは、おおむね以下のとおりです。
実施形式
- 実施方法:オンライン(Zoomなどのビデオ会議ツール)
- 所要時間:おおむね15〜20分程度
- 参加者:申請企業の代表者(経営者本人)、審査委員2〜3名
- 形式:審査委員からの質問に経営者が回答する形式(プレゼンテーションはなし)
成長加速化補助金のプレゼン審査とは異なり、新事業進出補助金の口頭審査では経営者からのプレゼンテーションは行いません。審査委員が事業計画書を読んだうえで質問を投げかけ、経営者がそれに答えるという「質疑応答形式」で進みます。
質問の傾向
口頭審査で問われる質問には、一定の傾向があります。以下の3つのテーマを中心に質問が行われるケースが多いとされています。
1. 事業の新規性
新事業進出補助金の名前のとおり、「新しい事業」であることが大前提です。審査委員は以下のような観点から新規性を確認します。
- 既存事業との違いは何か
- なぜこのタイミングで新事業に進出するのか
- 同業他社にない独自の強みは何か
- ターゲットとなる顧客層は既存事業と異なるか
「既存事業の延長線上ではないか」という疑いを払拭できるよう、新規性を明確に説明できる準備が必要です。たとえば、新たな技術の活用、異なる市場への参入、新しい顧客層の開拓など、具体的な差別化ポイントを示しましょう。
2. 実現可能性
審査委員は、計画が「絵に描いた餅」でないかを厳しくチェックします。実現可能性に関する質問の例としては以下のようなものがあります。
- 新事業を推進する人材はいるのか、どう確保するのか
- 必要な技術やノウハウをどのように獲得するのか
- 販路の開拓はどのように進めるのか
- 想定通りに進まなかった場合の対策は考えているか
特に「人材」に関する質問は頻出です。新しい事業を始めるにあたって、それを担う人材がいるのかどうかは、計画の実現性を左右する最も重要な要素の一つだからです。
3. 収支計画
収支計画に関しては、数字の根拠を具体的に問われます。以下のような質問が想定されます。
- 売上の見込みはどのように算出したのか
- 原価率の想定根拠は何か
- いつから黒字化する見込みか
- 付加価値額の年率4%成長は達成可能と考える理由は何か
数字を「なんとなく」で設定していると、質問に詰まってしまいます。市場調査のデータ、見積書、既存顧客からのヒアリング結果など、客観的な裏付けを用意しておきましょう。
コンサルタント同席不可の注意点
口頭審査において最も注意すべき点の一つが、コンサルタントや支援機関の同席が認められていないことです。審査の場に入れるのは、原則として申請企業の代表者(経営者)本人のみです。
これは、補助金の事業計画がコンサルタント主導で作られたものではなく、経営者自身の意思と理解に基づいているかを確認するための措置です。日頃からコンサルタントに任せきりにせず、計画の隅々まで自分で把握しておくことが大切です。
特に以下の点は、経営者自身が即答できるようにしておきましょう。
- 収支計画の各数値の根拠
- 投資する設備の具体的な仕様と選定理由
- 新事業の市場規模と自社の想定シェア
- 補助事業終了後の事業展開ビジョン
口頭審査の練習方法
口頭審査で力を発揮するためには、事前の練習が欠かせません。以下に効果的な練習方法をご紹介します。
想定質問リストの作成
まず、想定される質問を30〜50問程度リストアップします。事業計画書を読み返しながら、「審査委員ならどこを突くだろうか」という視点で質問を考えましょう。弱点や曖昧な箇所ほど、質問されやすい傾向があります。
回答の準備と暗記ではない理解
各質問に対する回答を準備しますが、一字一句暗記するのではなく、要点を理解して自分の言葉で説明できるようにすることが重要です。暗記した回答は不自然になりやすく、想定外の質問が来た際に対応できなくなります。
模擬審査の実施
第三者に審査委員役をお願いし、本番に近い形式で模擬審査を行います。オンラインで実施し、カメラの映り方、話すスピード、回答の分かりやすさなどもチェックしましょう。録画して自分で見返すのも効果的です。
練習のコツ
- 簡潔に答える:質問に対して長々と話さず、結論を先に述べてから補足する
- 数字を交えて話す:「たくさんの需要がある」ではなく「年間○億円の市場規模がある」と具体的に
- わからないことは正直に:知ったかぶりをするよりも、「確認して回答させていただきたい」と正直に伝えるほうが印象が良い
- 落ち着いて話す:緊張で早口にならないよう、意識的にゆっくり話す練習をする