「補助金で買った機械を、空いている日に別の仕事にも使えないか」「作ったシステムを、ほかの会社にも売れないか」「使わなくなった設備を売って、買い替えたい」。補助金で設備やシステムを入れると、こうした考えが出てくることがあります。
しかし、補助金で取得した物には、使い方の制限があります。ほかの事業に使う、売る、貸すといったことは「財産処分」として扱われ、自由にはできません。知らずに進めると、補助金の返還を求められることもあります。
この記事では、当社が支援した4つの事例をもとに、計画書の段階で「使い方の線」をどう引いたか(3社)、補助事業が終わったあとの報告の表で財産処分がどう扱われるか(1社)、補助金ごとの決まりの違いを整理します。
- D社:人材関連のサービス会社。社内の業務を管理する専用システムの開発を委託する計画(省力化投資補助金・一般型)
- E社:医療・研究向けの製品のメーカー。製造ラインに専用の機械を入れる計画(省力化投資補助金・一般型)
- F社:建設業の会社。工事で使う設備を導入する計画(省力化投資補助金・一般型)
- G社:旅行会社。本業とは別の分野で新しいサービス事業を始めた(事業再構築補助金)
D社・E社・F社は、申請を準備した段階の話です。G社は、補助事業が終わったあとの報告で使う表の話です。省力化投資補助金の計画づくりの全体はC社の事例紹介に、新事業進出補助金で取得した物の使い道や経費の線引きはA社の事例紹介にまとめています。
この記事で分かること
- どんな使い方が「財産処分」に当たり、承認と納付がどう進むか
- 外販・貸し出し・汎用品について、各社が計画書で線を引いた実例
- 省力化・新事業進出・ものづくり・事業再構築の決まりの違いと、チェックリスト
※ページは、記事を書いた時点で公式サイトに出ていた最新の版の、PDFのページ番号です(印刷されたページ番号とずれることがあります)。事業再構築補助金だけは、いちばん新しい回向けの手引きのページです。公募の回によって中身もページも変わるので、ご自身が申請した回・申請する回の公募要領・手引きで確かめてください。
まず押さえたい「財産処分」のしくみ
補助金で取得した物は、補助事業が終わったあとも、注意して管理し、補助金の目的に沿って使うことが求められます(省力化 交付規程 第24条。ほかの補助金の交付規程にも同じ定めがあります)。交付規程は、補助金を受け取る会社が守るルールを定めたものです。
なかでも、1つあたりの取得価格が50万円(税抜)以上の機械・器具などは「処分制限財産」になります。決められた期間(処分制限期間)の中で処分するときは、前もって事務局の承認を受けなければなりません。期間は、税法の耐用年数(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)を使って決まります(省力化 交付規程 第25条、新事業進出 補助事業の手引き p.65)。事業計画の期間が終わっても、耐用年数を過ぎるまでは制限が続きます(省力化 公募要領 p.35、新事業進出 補助事業の手引き p.12)。
こんな使い方が「財産処分」に当たる
処分の種類は、新事業進出補助金の手引きが表にまとめています(p.66)。ほかの補助金の資料も、処分として同じ種類を挙げています(省力化 公募要領 p.35、ものづくり 補助事業の手引き p.14 など)。
| やりたいこと | 処分の種類 |
|---|---|
| ほかの事業で使う | 目的外使用 |
| 他社に貸す | 貸付 |
| 売る・譲る | 譲渡 |
| 他の物と取りかえる | 交換 |
| 使うのをやめて捨てる | 廃棄 |
| 借入の担保に入れる | 担保に供する処分 |
- 目的外使用:持ち主は変えずに、補助事業以外の業務に使うことです。「転用」とも呼ばれます。
- 貸付・譲渡:お金を受け取っても受け取らなくても当たります。持ち主が変わるのが譲渡、使う人が変わるのが貸付です。
- 担保:省力化では原則として認められません。補助事業に必要な資金を借りる場合に限り、事前の承認で認められることがあります。その場合も、担保が実行されたとき(借入を返せず、担保の設備が処分されたとき)は、補助金を納めます(公募要領 p.21・p.39)。
どのくらいの使い方なら許されるかについては、経済産業省の通知に考え方があります。業務時間外や休日などに、補助事業に支障のない範囲で一時的にほかの用途に使うなど、ごく軽いと認められる使い方は、財産処分に当たらないというものです(会課第5号 p.2)。省力化と新事業進出は、財産処分をこの通知を踏まえて扱うとしています(省力化 交付規程 第25条・「財産処分の手続きについて」p.1、新事業進出 交付規程 第24条)。
ただし、補助金ごとの資料の書き方は同じではありません。新事業進出の公募要領は、既存事業に使うことを、補助金の目的に反する使用としています(p.2)。ものづくりと事業再構築の手引きは、事業の実施中は目的外使用ができないとしています(ものづくり p.16、事業再構築 p.21)。計画書にない使い方を思いついたら、使う前に事務局に相談するのが確実です。
承認を受けて処分するときは、補助金の全部または一部を納める
承認を受けて処分したあとは報告を出し、通知に従って、その財産にかかった補助金の額を上限に納めます(省力化 交付規程 第25条)。納める額の考え方は、新事業進出補助金の手引きに詳しく書かれています(p.67〜68)。以下は新事業進出の場合です。
- 納付額=「処分価額」または「残存簿価相当額」×補助率。上限は、その財産にかかった補助金の額です。
- ここでの補助率は、公募要領の補助率(1/2など)ではなく、「確定した補助金の額÷補助の対象になった経費の実績額」です。上限額に当たって補助金が抑えられた場合などは、公募要領の補助率より低くなります。
- 残存簿価相当額=取得価額−それまでの減価償却費の合計。帳簿に残っている価値のことです。
- 売る・有償で貸すときは、実際の額で計算します(残存簿価相当額より著しく安く、理由を説明できなければ残存簿価相当額)。
- 目的外使用、無償の譲渡・貸付、交換、廃棄など、お金を受け取らないときは、残存簿価相当額で計算します。
省力化の公募要領は「残存簿価相当額又は時価(譲渡額)のいずれか高い額により、当該処分財産に係る補助金額を限度に納付」と書いています(p.35)。ただし、交付規程にある承認申請書の様式(様式第8)では、売る値段の見積書を3者以上から取ったときと、3者未満のときとで、計算のもとにする額の決め方が違います。納める額は、処分のあとに出す報告書をもとに事務局が計算し、通知書で知らせます(省力化「財産処分の手続きについて」p.2)。売る前に、見積書の取り方と、納める額の目安を事務局に確かめましょう。
目的外使用や廃棄など、見積額を出せない処分は、残存簿価相当額をもとに計算すると、同じ様式に書かれています。取得してから日が浅いほど帳簿に残っている価値は大きいので、納める額は、その財産にかかった補助金の額に近づきます。
承認を受けずに処分すると、取消し・返還
事前の承認を受けずに処分すると、交付決定の取消しの対象になります(省力化 公募要領 p.35、新事業進出 補助事業の手引き p.65 など)。取り消されれば、受け取った補助金の返還を求められます。規程への違反や補助金の他の用途への使用などで取り消されたときは、受け取った日から年10.95%の加算金もかかります(省力化 交付規程 第23条)。新事業進出補助金の手引きは「取得財産の目的外利用」を不正な行為の例に挙げ、悪質な場合は事業者名などを公表するとしています(p.5)。
一方、災害や火災(自社の責任でないもの)で使えなくなったときなどは、報告書を出せば承認を受けたものとみなされ、納付が免除されることもあります(省力化 交付規程 第25条、ものづくり 交付規程 第21条)。
事例1:作るシステムを「社内専用」と書いたD社(外販のリスク)
D社は、人材関連のサービス会社です。自社でも、外部のお客様向けにソフトウェアのサービスを提供しています。今回は、顧客対応の部署が使う業務管理の専用システムを、開発会社に委託して作る計画です。計画書では、社内のシステムの担当は既存のサービスに専念していて、このシステムを開発する体制はないと説明しています。
何が問題になりそうだったか
完成したシステムを外部向けのサービスとして売る(外販する)と、目的外使用になるおそれがあります。当社はそう判断し、計画書では社内で使うものとして書くよう助言しました。
省力化投資補助金では、次のような事業はそもそも対象外です(公募要領 p.14)。
- 将来的な対外向け販売を前提とする設備・システム等の開発を含む事業
- 利用者に有償で提供する設備、システム、サービス等の開発・改良を含む内容の事業
経費でも、もっぱら申請者以外の人が使うシステム・設備の開発・導入費用は対象外です(p.23)。補助の対象は「専ら補助事業のために使用される」専用のソフトウェア・情報システムなどです(p.20)。
計画書の書き方と口頭審査への備え
- 本文に1文で書く:計画書の本文には、「このシステムは顧客対応の部署専用の社内業務システムで、外部への販売・有償提供や、自社のサービスへの機能・プログラムの転用は行わない。自社のサービスに生かすのは業務の知見だけ」という趣旨が書かれています。
- 経費の欄にも書く:システムの経費の欄にも、「顧客対応業務専用の社内利用システム。専用に一から開発するもので、型番はない」とあります。
- 口頭審査で答えをそろえる:省力化では、システム開発などの案件を中心に、オンラインの口頭審査が行われることがあります。計画書に書いていない、意思決定の背景を聞かれることもあります(公募要領 p.34)。D社の想定問答には「自社でもソフトウェアを提供している会社が、なぜ外注するのか」「このシステムを将来売ることはないか」という問いがあり、答えは計画書と同じ内容です。
外部向けのサービスを持つ会社は、補助金で作る物と売る物の線を、計画書の文章で分けておきます。D社のように、機能やプログラムを自社の商品に流用しないことまで書くと、線がよりはっきりします。
事例2:付帯設備の「汎用性」を点検したE社
E社は医療・研究向けの製品のメーカーで、製造ラインに専用の機械を入れる計画です。導入する機器の中に、圧縮空気をつくってラインに送る付帯設備がありました。
点検で指摘したこと
計画書には、この設備をラインの主な機械の専用とし、ほかの工程とは共用しないと書かれていました。それでも、当社の提出前の点検では、次の点を指摘しました。
- 圧縮空気をつくる設備は汎用性が高く、ほかの設備にも空気を送れる
- そのため「汎用性があり、目的外使用になり得るものの購入費」として、対象外かどうかを問われるおそれがある
- 専用であることの裏づけが弱いと、交付申請の段階で減額されうる
勧めた対応
- 専用の配管と制御でラインに組み込み、ほかの工程には送らないことを、仕様書や配置図で示す
- 書類で示せないなら、補助の対象経費から外すことも考える
省力化投資補助金の公募要領は、対象外の経費に「汎用性があり、目的外使用になり得るものの購入費」を挙げています。例は、事務用のパソコン・プリンタ・文書作成ソフト・スマートフォン・タブレット端末・カメラ・キュービクル(受電設備)・乗用エレベータ・家具です。ただし「本事業でのみ使用が可能なもの」は除かれます(p.23)。よくある質問でも、汎用性が高く目的外使用となりうるウイルス対策ソフトの購入費は対象外です(p.9 No.6)。ただし、本事業で入れるシステムのセキュリティ対策のためだけに買う市販のウイルス対策ソフトは対象です。対象外になるのは、ソフトだけを単体で買う場合や、汎用のパソコンなどに入れる分です(公募要領 p.21)。
汎用品は、あとからほかの用途に回しやすい物です。「専用だと書類で示せるか」を計画の段階で確かめ、示せない物は最初から補助の対象に入れない、という判断もあります。
事例3:「工事にだけ使い、貸し出さない」と書いたF社
F社は、建設業の会社です。工事で使う設備を導入する計画で、その中には電源の設備も含まれます。F社は、レンタル・リースの事業も営んでいます。
点検で指摘したこと:貸し出さない設備の範囲
当社が点検した計画書には、「導入する設備は補助事業にのみ使う」とあり、他社に貸し出さないことは一部の設備についてだけ書かれていました。自社に貸し出しの事業がある以上、これでは「ほかの設備は貸すのか」と読まれかねません。当社は、目的外使用の心配を持たれないよう、次の趣旨に直すことを提案しました。
- 導入する設備はどれも、自社が請け負う工事にだけ使い、自社のレンタル・リース事業も含めて他社には貸し出さない
- 電源の設備は、導入する別の設備の専用とする
- 設備の一部は、補助の対象に入れていない自社の機械と組み合わせて使う
次の版の計画書には、この趣旨が入りました。
省力化投資補助金では、購入した設備を自社の事業に使わず、特定の第三者に長く貸すような事業は対象外です。有償のレンタルで他社に貸し出す機材の購入費も対象外です(公募要領 p.14・p.23)。事務局の承認なしに貸し付けや転売をすれば、交付決定の取消しになります(p.35)。
次の点検で指摘したこと:災害時の使い方
その版を点検したところ、別の食い違いが見つかりました。計画書のほかの箇所に、災害時の復旧の作業にも使うと書かれていたのです。「工事にだけ使う」の文と並べると、計画の外の使い方(目的外使用)に読まれるおそれがあります。
当社は、使う範囲の文に「災害時に自社が受託する復旧の作業を含む」という趣旨を書き足すことを提案しました。計画書は、検討のうえ、元の書き方のままになりました。
使う範囲を限る文を書いたら、将来の展開・地域への貢献・リスクへの備えといった、計画書のほかの箇所も読み直します。範囲の外に見える使い方があれば、範囲の文に含めて書くか、書き方をそろえます。
事例4:報告の表に「財産処分」の欄があったG社
G社は旅行会社で、事業再構築補助金を使って、本業とは別の分野のサービス事業を始めました。事業再構築補助金では、補助事業が終わった年度の終わりを初回に、その後5年間、毎年「事業化状況報告」を出します(補助事業の手引き p.37)。
G社では、初回の報告の日に、報告のシステムから「事業化状況報告シミュレーション」の表(Excel)を出して保存しました。この表には、補助事業の売上と収益から計算する納付の欄と並んで、次の欄があります。
- 財産処分時の納付予定額:その年度に登録した「財産処分」の申請の納付額が出る
- 目標未達時の補助金の返還予定額
- 前年度までの累計納付額:収益による納付金、財産処分による納付金、目標未達による返還をまとめた額
表の注記には、「事業化状況報告・財産処分申請システム」で登録するよう求める一文があります。財産処分の申請も、毎年の報告と同じシステムで扱われるということです。表の計算式では、納付の累計は補助金の確定額を超えない作りでした。G社のこの表では、財産処分の欄は空欄です。
公式の手引きでも、財産処分の承認申請は、出来事が分かったら直ちに、事業化状況報告システムから出すとされています(補助事業の手引き p.32)。累計納付額は、収益に伴う納付金と財産処分に伴う納付金の合計で、その年の納付は補助金確定額を超えない範囲です(p.38)。
毎年の報告は、補助金で入れた物が計画どおりに使われているかを、社内で確かめる機会にもなります。使い方を変える予定があれば、報告の時期を待たずに、先に承認の手続きをします。
補助事業で利益が出たときに、補助金の一部を納める決まりです。財産処分とは別のものです。
- 省力化(一般型):求めない(公募要領 p.10)
- ものづくり:最新の手引きでは不要(p.38)。ただし不要になったのはある回からで、それより前の回は扱いが違います
- 事業再構築:あり。会社全体の経常利益が赤字の年は免除。受け取った補助金の額が上限(補助事業の手引き p.11)
補助金ごとの違い:「使ってよい範囲」はどこまでか
どの補助金も「取得した物は計画書に書いた補助事業のために使う」という考え方は同じです。違うのは、何を「補助事業」と呼ぶかと、例外の有無です。
| 補助金 | 使ってよい範囲 |
|---|---|
| 省力化(一般型) | 計画書の省力化の事業 |
| 新事業進出 | 計画書の新しい事業だけ |
| ものづくり | 補助事業だけ(生産転用の特例) |
| 事業再構築 | 補助事業だけ(誓約書を出す) |
省力化投資補助金(一般型)
- 補助の対象は「専ら補助事業のために使用される」専用の設備・システムです(公募要領 p.7・p.20)。
- 外部への販売や有償での提供を前提にした開発、他社に長く貸すだけの事業は、最初から対象外です(p.14)。
- 承認なしの貸し付け・転売は交付決定の取消しです(p.35)。公募要領の冒頭の【重要】の欄でも、「転売や目的外使用等を行っていた場合は、残存簿価相当額等を国庫に返納」と注意しています(p.3)。
新事業進出補助金(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金も同じ考え方)
- 「専ら補助事業に使用」とは、計画書に書いた、新しく取り組む事業にだけ使うことです。今の事業(既存事業)に使うと、補助金の目的に反する使用として、残存簿価相当額などを納めることになります(新事業進出 公募要領 p.2、補助事業の手引き p.5)。
- 建物などを不動産の賃貸などに転用することは、一切認められていません(新事業進出 公募要領 p.25)。
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領にも同じ文があり(p.2)、既存事業と共用する経費は対象外です(p.33)。事業計画の期間中に、対象外の事業者や大企業へ事業を承継することも、目的に反する使用に当たります(p.58)。
ものづくり補助金
- 補助事業以外で使えば目的外使用として、残存簿価相当額などを国庫に納めます(公募要領 p.3)。事業の実施中も、購入した設備を目的外に使うことはできません(補助事業の手引き p.16)。
- 例外:試作品の開発の成果を生かす事業のために、設備を生産に転用する場合は、事前の承認を受ければ納付が免除されます(公募要領 p.48)。申請は、補助金の支払い(精算払)が済んでからです。事業の実施中はできません(補助事業の手引き p.8・p.20)。生産工程の改善を目的に入れた設備は、この特例の対象外です(p.20)。
- 処分制限期間は耐用年数などで決まり、たとえば開発研究用の機械・装置は4年、ソフトウェアは3年とされています(設備投資だけが目的の事業者は別。補助事業の手引き p.18)。
- 財産処分の申請は、事業化状況報告システムから出します(補助事業の手引き p.14)。
事業再構築補助金
- 交付申請では、すべての申請者が「取得財産に係る誓約書」を出します(補助事業の手引き p.5)。中身は、補助事業の期間と処分制限期間の間は「本事業のみで使用し、他の事業用途で一切使用しない」という誓約です(p.82)。この誓約書は、どの回向けの手引きにも載っています。
- 既存事業など、補助事業以外で使えば目的外使用として、残存簿価相当額などを国庫に返納します(p.47)。この文が載っているのは、いちばん新しい回向けの手引きだけです。ほかの事業に使わないという約束は、前の回の事業者も上の誓約書でしています。
- 財産処分の申請は事業化状況報告システムから出し、納付金は毎年の報告の累計納付額にも入ります(p.32・p.38)。
このほか、補助事業が終わったあとの次のときも、財産処分の手続きが必要になります。予定が見えた時点で、事務局に相談しましょう。
- 補助の対象者でなくなるとき(新事業進出・ものづくり):財産処分になります。ただし、大企業などに成長する場合は除きます。大企業の子会社になるなどして「みなし大企業」(大企業と同じ扱いになる中小企業)になる場合も除きます(新事業進出 公募要領 p.11・補助事業の手引き p.66、ものづくり 補助事業の手引き p.9)。
- 個人事業主が医療法人になるとき(省力化):財産処分の扱いになり、補助金の一部を返します。最近の回では、歯科医業の個人事業主が、一定の要件を満たす歯科医業の医療法人になる場合は例外とされています。法人化の予定があれば、前もって中小機構(中小企業基盤整備機構)の承認を受けます(よくある質問 p.3 No.27・No.28)。
- 事業をやめるとき(事業再構築 補助事業の手引き p.33)
省力化のよくある質問は、補助事業の期間が終わったあとに、大企業になるなどして対象者の要件を満たさなくなったときは「交付決定の取消はしません」と答えています(p.3 No.25)。別の問いでは、この場合「補助金の返還は必要ありません」とも答えています(p.5 No.12)。ただし、個人事業主が医療法人になる場合は、上のとおり財産処分の扱いです(p.3 No.27)。予定が見えたら、事務局に確かめましょう。
省力化では、補助事業を含む事業の一部を他社に譲っても、補助事業の承継は認められません(よくある質問 p.3 No.29)。
防ぎ方・進め方:3つの場面で線を引く
計画書をつくるとき
使う範囲を1文で書き、自社の別の事業(外部向けのサービスや貸し出し)に回さないこと、汎用品の扱い、例外の使い方をそろえます。具体的な書き方は事例1〜3のとおりで、下のチェックリストの1〜4にまとめました。
以前の補助金で入れた設備・システムとつなぐときは、どこまでが今回の経費かも言葉で示します(チェックリストの5)。省力化の公募要領では、すでに導入されているシステムの改修費用は対象外で、新しく導入するシステムと連携するための改修費用は対象とされています(p.23)。よくある質問でも、対象になる改良・据付けは今回新たに購入した物の分で、既存の機械装置・システムの改良は対象外です(p.3 No.17)。境目を書いておくと、経費の重なりがないことが伝わります。
導入したあと
- 台帳とラベル:省力化では、1つあたり50万円(税抜)以上の物を取得財産等管理台帳で管理します(実績報告の手引き p.28)。設備にシールなどを貼って「設備01」から番号をつけ、保管リストの番号とそろえます。実績報告のあとの検査では、現地で使い方と管理の状況が確かめられます(p.17)。ものづくり補助金の手引きには、ラベルの例として「ものづくり補助金事業以外での使用禁止」と書いたものが載っています(p.18)。
- ラベルは見える場所に:事業再構築では、物を動かさないと貼ってあるか確かめられない場合などは、きちんと保管していないとみなされます(補助事業の手引き p.31)。
- 物ごとに期間を書く:台帳には、物ごとの処分制限期間と置き場所を書きます(省力化 実績報告の手引き p.28)。新事業進出では、耐用年数が違うので一式にまとめず、物ごとに載せるよう求めています(補助事業の手引き p.6)。
- 書類は期間が終わるまで:証拠書類の保存期間が過ぎても、処分制限期間の間は台帳などを保存します(省力化 実績報告の手引き p.28)。
使い方を変えたくなったら
- 先に相談・承認:使い方を変える、売る、貸す、担保に入れる、捨てる前に、事務局に相談し、承認申請を出します。一部だけを処分するときも、前もって相談します(新事業進出 補助事業の手引き p.6)。
- 納付額を見積もる:新事業進出では、残存簿価相当額(売るときは売った額)×補助率で、おおよその額が分かります。この補助率は「確定した補助金の額÷経費の実績額」です(補助事業の手引き p.67〜68)。省力化では、処分の前に、見積書の取り方と納める額の目安を事務局に確かめます(公募要領 p.35、交付規程 様式第8)。
- 売るときは銀行振込で:新事業進出と事業再構築では、売った代金の受け取りは銀行振込の記録で確かめ、それ以外は認められません(新事業進出 補助事業の手引き p.66、事業再構築 補助事業の手引き p.36)。
- ものづくりの生産転用:試作開発の設備を、成果を生かした生産に使うなら、補助金の支払い(精算払)が済んでから、生産転用の承認申請を出します(補助事業の手引き p.8・p.20)。
チェックリスト
- 計画書に、補助金で入れる物を「誰が・どの業務に使うか」を書いた
- 外販・有償提供・他社への貸し出しをしないことを書いた(外部向けのサービスや貸し出しの事業がある会社は特に)
- パソコン・タブレット(公募要領の例)や、圧縮空気の設備のようにほかの用途にも回せる物は、専用と書類で示せるか、対象から外すかを決めた
- 災害時などの例外の使い方が、使う範囲の文と食い違っていない
- 以前の補助金で入れた設備・システムとの境目と、経費が重ならないことを書いた
- 1つあたり50万円(税抜)以上の物を物ごとに台帳に載せ、処分制限期間を書いた
- 設備にラベルを見える場所に貼り、台帳の番号とそろえた
- 使い方を変える・売る・貸す・担保に入れる・捨てる前に、事務局へ相談する流れを社内で決めた
- 事業の譲渡、会社の形の変更、事業の廃止の予定が出たら、早めに事務局に相談する
- (ものづくり補助金)試作開発の設備を生産に使うなら、補助金の支払い(精算払)が済んでから生産転用の承認を受ける
まとめ
- 補助金で取得した物を、ほかの事業に使う・売る・貸すなどは「財産処分」です。処分制限期間の中では事前の承認と納付が要り、無断なら取消し・返還の対象になります。
- 計画書の段階で使う範囲を1文で書き、外販・貸し出し・汎用品に線を引いておくと、あとで迷いません(D社・E社・F社)。以前の補助金で入れた物とつなぐときは、経費の境目も書きます。
- 何が「補助事業」かは補助金ごとに違います。新事業進出と事業再構築では、既存事業に使うことも目的外です。ものづくりには生産転用の特例があります。事業再構築とものづくりでは、財産処分の申請を毎年の報告と同じシステムで出します(G社)。