「補助金で買った機械を、空いている日に別の仕事にも使えないか」「作ったシステムを、ほかの会社にも売れないか」「使わなくなった設備を売って、買い替えたい」。補助金で設備やシステムを入れると、こうした考えが出てくることがあります。

しかし、補助金で取得した物には、使い方の制限があります。ほかの事業に使う、売る、貸すといったことは「財産処分」として扱われ、自由にはできません。知らずに進めると、補助金の返還を求められることもあります。

結論:補助金で取得した物は、計画書に書いた補助事業のために使うのが原則です。1つあたり50万円(税抜)以上の物は、決められた期間(おもに税法の耐用年数)が終わるまで、ほかの事業に使う・売る・貸すなどの前に事務局の承認が要り、原則として補助金の全部または一部を納めます(取得して間もないほど、その財産にかかった補助金の額に近くなることがあります)。承認を受けずに行うと、交付決定(補助金を出すという正式な決定)の取消しと返還の対象になります。

この記事では、当社が支援した4つの事例をもとに、計画書の段階で「使い方の線」をどう引いたか(3社)、補助事業が終わったあとの報告の表で財産処分がどう扱われるか(1社)、補助金ごとの決まりの違いを整理します。

※当社が実際に支援した事例をもとにしています。会社が特定されないよう、業種・地域・金額などの一部をぼかしています。

D社・E社・F社は、申請を準備した段階の話です。G社は、補助事業が終わったあとの報告で使う表の話です。省力化投資補助金の計画づくりの全体はC社の事例紹介に、新事業進出補助金で取得した物の使い道や経費の線引きはA社の事例紹介にまとめています。

この記事で分かること

※ページは、記事を書いた時点で公式サイトに出ていた最新の版の、PDFのページ番号です(印刷されたページ番号とずれることがあります)。事業再構築補助金だけは、いちばん新しい回向けの手引きのページです。公募の回によって中身もページも変わるので、ご自身が申請した回・申請する回の公募要領・手引きで確かめてください。

まず押さえたい「財産処分」のしくみ

補助金で取得した物は、補助事業が終わったあとも、注意して管理し、補助金の目的に沿って使うことが求められます(省力化 交付規程 第24条。ほかの補助金の交付規程にも同じ定めがあります)。交付規程は、補助金を受け取る会社が守るルールを定めたものです。

なかでも、1つあたりの取得価格が50万円(税抜)以上の機械・器具などは「処分制限財産」になります。決められた期間(処分制限期間)の中で処分するときは、前もって事務局の承認を受けなければなりません。期間は、税法の耐用年数(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)を使って決まります(省力化 交付規程 第25条、新事業進出 補助事業の手引き p.65)。事業計画の期間が終わっても、耐用年数を過ぎるまでは制限が続きます(省力化 公募要領 p.35、新事業進出 補助事業の手引き p.12)。

こんな使い方が「財産処分」に当たる

処分の種類は、新事業進出補助金の手引きが表にまとめています(p.66)。ほかの補助金の資料も、処分として同じ種類を挙げています(省力化 公募要領 p.35、ものづくり 補助事業の手引き p.14 など)。

やりたいこと処分の種類
ほかの事業で使う目的外使用
他社に貸す貸付
売る・譲る譲渡
他の物と取りかえる交換
使うのをやめて捨てる廃棄
借入の担保に入れる担保に供する処分

どのくらいの使い方なら許されるかについては、経済産業省の通知に考え方があります。業務時間外や休日などに、補助事業に支障のない範囲で一時的にほかの用途に使うなど、ごく軽いと認められる使い方は、財産処分に当たらないというものです(会課第5号 p.2)。省力化と新事業進出は、財産処分をこの通知を踏まえて扱うとしています(省力化 交付規程 第25条・「財産処分の手続きについて」p.1、新事業進出 交付規程 第24条)。

ただし、補助金ごとの資料の書き方は同じではありません。新事業進出の公募要領は、既存事業に使うことを、補助金の目的に反する使用としています(p.2)。ものづくりと事業再構築の手引きは、事業の実施中は目的外使用ができないとしています(ものづくり p.16、事業再構築 p.21)。計画書にない使い方を思いついたら、使う前に事務局に相談するのが確実です。

承認を受けて処分するときは、補助金の全部または一部を納める

承認を受けて処分したあとは報告を出し、通知に従って、その財産にかかった補助金の額を上限に納めます(省力化 交付規程 第25条)。納める額の考え方は、新事業進出補助金の手引きに詳しく書かれています(p.67〜68)。以下は新事業進出の場合です。

省力化の公募要領は「残存簿価相当額又は時価(譲渡額)のいずれか高い額により、当該処分財産に係る補助金額を限度に納付」と書いています(p.35)。ただし、交付規程にある承認申請書の様式(様式第8)では、売る値段の見積書を3者以上から取ったときと、3者未満のときとで、計算のもとにする額の決め方が違います。納める額は、処分のあとに出す報告書をもとに事務局が計算し、通知書で知らせます(省力化「財産処分の手続きについて」p.2)。売る前に、見積書の取り方と、納める額の目安を事務局に確かめましょう。

目的外使用や廃棄など、見積額を出せない処分は、残存簿価相当額をもとに計算すると、同じ様式に書かれています。取得してから日が浅いほど帳簿に残っている価値は大きいので、納める額は、その財産にかかった補助金の額に近づきます。

承認を受けずに処分すると、取消し・返還

事前の承認を受けずに処分すると、交付決定の取消しの対象になります(省力化 公募要領 p.35、新事業進出 補助事業の手引き p.65 など)。取り消されれば、受け取った補助金の返還を求められます。規程への違反や補助金の他の用途への使用などで取り消されたときは、受け取った日から年10.95%の加算金もかかります(省力化 交付規程 第23条)。新事業進出補助金の手引きは「取得財産の目的外利用」を不正な行為の例に挙げ、悪質な場合は事業者名などを公表するとしています(p.5)。

一方、災害や火災(自社の責任でないもの)で使えなくなったときなどは、報告書を出せば承認を受けたものとみなされ、納付が免除されることもあります(省力化 交付規程 第25条、ものづくり 交付規程 第21条)。

事例1:作るシステムを「社内専用」と書いたD社(外販のリスク)

D社は、人材関連のサービス会社です。自社でも、外部のお客様向けにソフトウェアのサービスを提供しています。今回は、顧客対応の部署が使う業務管理の専用システムを、開発会社に委託して作る計画です。計画書では、社内のシステムの担当は既存のサービスに専念していて、このシステムを開発する体制はないと説明しています。

何が問題になりそうだったか

完成したシステムを外部向けのサービスとして売る(外販する)と、目的外使用になるおそれがあります。当社はそう判断し、計画書では社内で使うものとして書くよう助言しました。

省力化投資補助金では、次のような事業はそもそも対象外です(公募要領 p.14)。

経費でも、もっぱら申請者以外の人が使うシステム・設備の開発・導入費用は対象外です(p.23)。補助の対象は「専ら補助事業のために使用される」専用のソフトウェア・情報システムなどです(p.20)。

計画書の書き方と口頭審査への備え

外部向けのサービスを持つ会社は、補助金で作る物と売る物の線を、計画書の文章で分けておきます。D社のように、機能やプログラムを自社の商品に流用しないことまで書くと、線がよりはっきりします。

事例2:付帯設備の「汎用性」を点検したE社

E社は医療・研究向けの製品のメーカーで、製造ラインに専用の機械を入れる計画です。導入する機器の中に、圧縮空気をつくってラインに送る付帯設備がありました。

点検で指摘したこと

計画書には、この設備をラインの主な機械の専用とし、ほかの工程とは共用しないと書かれていました。それでも、当社の提出前の点検では、次の点を指摘しました。

勧めた対応

省力化投資補助金の公募要領は、対象外の経費に「汎用性があり、目的外使用になり得るものの購入費」を挙げています。例は、事務用のパソコン・プリンタ・文書作成ソフト・スマートフォン・タブレット端末・カメラ・キュービクル(受電設備)・乗用エレベータ・家具です。ただし「本事業でのみ使用が可能なもの」は除かれます(p.23)。よくある質問でも、汎用性が高く目的外使用となりうるウイルス対策ソフトの購入費は対象外です(p.9 No.6)。ただし、本事業で入れるシステムのセキュリティ対策のためだけに買う市販のウイルス対策ソフトは対象です。対象外になるのは、ソフトだけを単体で買う場合や、汎用のパソコンなどに入れる分です(公募要領 p.21)。

汎用品は、あとからほかの用途に回しやすい物です。「専用だと書類で示せるか」を計画の段階で確かめ、示せない物は最初から補助の対象に入れない、という判断もあります。

事例3:「工事にだけ使い、貸し出さない」と書いたF社

F社は、建設業の会社です。工事で使う設備を導入する計画で、その中には電源の設備も含まれます。F社は、レンタル・リースの事業も営んでいます。

点検で指摘したこと:貸し出さない設備の範囲

当社が点検した計画書には、「導入する設備は補助事業にのみ使う」とあり、他社に貸し出さないことは一部の設備についてだけ書かれていました。自社に貸し出しの事業がある以上、これでは「ほかの設備は貸すのか」と読まれかねません。当社は、目的外使用の心配を持たれないよう、次の趣旨に直すことを提案しました。

次の版の計画書には、この趣旨が入りました。

省力化投資補助金では、購入した設備を自社の事業に使わず、特定の第三者に長く貸すような事業は対象外です。有償のレンタルで他社に貸し出す機材の購入費も対象外です(公募要領 p.14・p.23)。事務局の承認なしに貸し付けや転売をすれば、交付決定の取消しになります(p.35)。

次の点検で指摘したこと:災害時の使い方

その版を点検したところ、別の食い違いが見つかりました。計画書のほかの箇所に、災害時の復旧の作業にも使うと書かれていたのです。「工事にだけ使う」の文と並べると、計画の外の使い方(目的外使用)に読まれるおそれがあります。

当社は、使う範囲の文に「災害時に自社が受託する復旧の作業を含む」という趣旨を書き足すことを提案しました。計画書は、検討のうえ、元の書き方のままになりました。

使う範囲を限る文を書いたら、将来の展開・地域への貢献・リスクへの備えといった、計画書のほかの箇所も読み直します。範囲の外に見える使い方があれば、範囲の文に含めて書くか、書き方をそろえます。

事例4:報告の表に「財産処分」の欄があったG社

G社は旅行会社で、事業再構築補助金を使って、本業とは別の分野のサービス事業を始めました。事業再構築補助金では、補助事業が終わった年度の終わりを初回に、その後5年間、毎年「事業化状況報告」を出します(補助事業の手引き p.37)。

G社では、初回の報告の日に、報告のシステムから「事業化状況報告シミュレーション」の表(Excel)を出して保存しました。この表には、補助事業の売上と収益から計算する納付の欄と並んで、次の欄があります。

表の注記には、「事業化状況報告・財産処分申請システム」で登録するよう求める一文があります。財産処分の申請も、毎年の報告と同じシステムで扱われるということです。表の計算式では、納付の累計は補助金の確定額を超えない作りでした。G社のこの表では、財産処分の欄は空欄です。

公式の手引きでも、財産処分の承認申請は、出来事が分かったら直ちに、事業化状況報告システムから出すとされています(補助事業の手引き p.32)。累計納付額は、収益に伴う納付金と財産処分に伴う納付金の合計で、その年の納付は補助金確定額を超えない範囲です(p.38)。

毎年の報告は、補助金で入れた物が計画どおりに使われているかを、社内で確かめる機会にもなります。使い方を変える予定があれば、報告の時期を待たずに、先に承認の手続きをします。

似ているが別の決まり:収益納付
補助事業で利益が出たときに、補助金の一部を納める決まりです。財産処分とは別のものです。

補助金ごとの違い:「使ってよい範囲」はどこまでか

どの補助金も「取得した物は計画書に書いた補助事業のために使う」という考え方は同じです。違うのは、何を「補助事業」と呼ぶかと、例外の有無です。

補助金使ってよい範囲
省力化(一般型)計画書の省力化の事業
新事業進出計画書の新しい事業だけ
ものづくり補助事業だけ(生産転用の特例)
事業再構築補助事業だけ(誓約書を出す)

省力化投資補助金(一般型)

新事業進出補助金(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金も同じ考え方)

ものづくり補助金

事業再構築補助金

このほか、補助事業が終わったあとの次のときも、財産処分の手続きが必要になります。予定が見えた時点で、事務局に相談しましょう。

省力化のよくある質問は、補助事業の期間が終わったあとに、大企業になるなどして対象者の要件を満たさなくなったときは「交付決定の取消はしません」と答えています(p.3 No.25)。別の問いでは、この場合「補助金の返還は必要ありません」とも答えています(p.5 No.12)。ただし、個人事業主が医療法人になる場合は、上のとおり財産処分の扱いです(p.3 No.27)。予定が見えたら、事務局に確かめましょう。

省力化では、補助事業を含む事業の一部を他社に譲っても、補助事業の承継は認められません(よくある質問 p.3 No.29)。

防ぎ方・進め方:3つの場面で線を引く

計画書をつくるとき

使う範囲を1文で書き、自社の別の事業(外部向けのサービスや貸し出し)に回さないこと、汎用品の扱い、例外の使い方をそろえます。具体的な書き方は事例1〜3のとおりで、下のチェックリストの1〜4にまとめました。

以前の補助金で入れた設備・システムとつなぐときは、どこまでが今回の経費かも言葉で示します(チェックリストの5)。省力化の公募要領では、すでに導入されているシステムの改修費用は対象外で、新しく導入するシステムと連携するための改修費用は対象とされています(p.23)。よくある質問でも、対象になる改良・据付けは今回新たに購入した物の分で、既存の機械装置・システムの改良は対象外です(p.3 No.17)。境目を書いておくと、経費の重なりがないことが伝わります。

導入したあと

使い方を変えたくなったら

チェックリスト

  1. 計画書に、補助金で入れる物を「誰が・どの業務に使うか」を書いた
  2. 外販・有償提供・他社への貸し出しをしないことを書いた(外部向けのサービスや貸し出しの事業がある会社は特に)
  3. パソコン・タブレット(公募要領の例)や、圧縮空気の設備のようにほかの用途にも回せる物は、専用と書類で示せるか、対象から外すかを決めた
  4. 災害時などの例外の使い方が、使う範囲の文と食い違っていない
  5. 以前の補助金で入れた設備・システムとの境目と、経費が重ならないことを書いた
  6. 1つあたり50万円(税抜)以上の物を物ごとに台帳に載せ、処分制限期間を書いた
  7. 設備にラベルを見える場所に貼り、台帳の番号とそろえた
  8. 使い方を変える・売る・貸す・担保に入れる・捨てる前に、事務局へ相談する流れを社内で決めた
  9. 事業の譲渡、会社の形の変更、事業の廃止の予定が出たら、早めに事務局に相談する
  10. (ものづくり補助金)試作開発の設備を生産に使うなら、補助金の支払い(精算払)が済んでから生産転用の承認を受ける

まとめ

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