補助金の結果通知で「不採択」の文字を見たとき、まず知りたいのは「どこが悪かったのか」だと思います。けれども、省力化投資補助金や新事業進出・ものづくり商業サービス補助金などの今の公募要領には、採択結果の理由は開示しないと書かれています。理由が分からないまま、前回とほとんど同じ計画書を出し直してしまう。再申請でいちばん避けたいのは、この形です。

この記事では、当社が再申請を支援した2つの事例を取り上げます。どちらも、不採択のあとに審査のコメントを確認できた記録が残っています。そこで指摘された弱点を今の審査項目と結びつけ、理由が開示されない今でも自分で使える「見直しの観点」に置き換えます。

2社とも最初の申請は不採択でしたが、計画書を見直して再申請し、採択されました。

※当社が実際に支援した事例をもとにしています。会社が特定されないよう、業種・地域・金額などの一部をぼかしています。

この記事で分かること

※資料名のあとのページは、当社が参照した版のPDFのページ番号です(印刷されたページ番号とずれることがあります)。公募の回によって内容が変わることもあるので、申請する回の最新の公募要領で確かめてください。

前提:今の公募要領では、不採択の理由は開示されない

当社が確認した次の公募要領には、いずれも「採択結果についての理由開示及び異議申立は一切受け付けておりません」という趣旨の一文があります。

今の補助金

公募を終えた前の補助金(参考)

つまり、結果の理由を開示してもらうことも、異議を申し立てる(結果に不服を申し出る)こともできません。「事務局に問い合わせれば理由が分かる」という前提で動かないようにしましょう。

一方で、計画を見直したうえで、もう一度申請することはできます。ただし、ものづくり補助金と新事業進出補助金は、すでに公募を終えています。どちらの公式サイトにも、新規の受付は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」まで、と案内があります(この記事の公開時点で確認)。どの補助金で不採択になったかで、申請先と根拠が分かれます。

申請を受け付ける期間は、公募の回ごとに決まっています。公式サイトで確かめてください。

もう一つ押さえておきたいのは、審査の中心は提出した計画書だということです。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、提出された事業計画等を外部の有識者でつくる審査委員会が審査・評価するとしています(p.39)。省力化投資補助金も同じです(第8回 p.3)。書面の審査では、計画書に書いていないことは伝わりません。

ただし、口頭審査(オンラインの面接)の対象に選ばれることもあります。そのときは、申請した会社が自分の言葉で計画を説明します。答えられるのは、代表者など、公募要領で決められた人だけです。社内の人なら誰でもよい、というわけではありません。答えられる人と同席できる人は、補助金ごとに次のように決まっています。

計画書づくりを手伝った支援者やコンサルタントは、どちらの補助金でも、答えることも同席することもできません(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 p.52、省力化投資補助金 第8回 p.34)。

再申請で中心になるのは、計画書に何を、どこまで具体的に書くかの見直しです。あわせて、口頭審査への備えと、加点(条件を満たすと審査で点が上乗せされる項目)も見直しましょう。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の加点には、パートナーシップ構築宣言、経営革新計画、事業継続力強化計画などがあり、申請の締切日の時点で条件を満たしている必要があります(p.47〜50)。省力化投資補助金は加点の項目が違い、パートナーシップ構築宣言と経営革新計画はありません。いつの時点で満たせばよいかも、項目ごとの説明で確かめてください(第8回 p.32〜33)。

注意:このあと紹介する2つの事例では、不採択のあとに審査のコメントを確認できていました。これは、それぞれの事例の当時の記録です。今の補助金で同じようにコメントを受け取れるわけではありません。

実例1:D社(IT分野の会社)|「実績」「外注」「役割」を指摘された

伝えられたコメント

D社は、IT分野の事業を営む会社です。ものづくり補助金で、新しいサービスのシステムを開発する計画を立てました。不採択のあと、事務局に問い合わせて伝えてもらった審査のコメントは、要約すると次のとおりです。

最初の計画書は、どうなっていたか

コメントを最初の計画書と突き合わせると、指摘の理由が見えてきました。

当社は、発注先が決まっていないことで「本当に実現できるのか」を疑われたと見立てました。そこで、実績(取引先・取引の中身・規模)、具体的な発注先と機能の仕様・金額、お客様からの変更要望への対応のしかた、新しい事業での従業員の役割分担を、お客様に質問しました。

D社が再申請で直したこと

この再申請で、D社は採択されました。

実例2:E社(軽作業の受託)|「必要性」「競合」「相乗効果」を指摘された

確認できたコメント

E社は、地域に根ざした既存事業を営む会社です。企業から軽い作業を請け負う新事業を計画して、事業再構築補助金に申請しました。不採択のあとに確認できた事務局のコメントは、次のような内容でした。

良い点として、制度の指針にそった取り組みであることが書かれている、という評価もありました。

当社の見立て:計画書と決算書が食い違って見えた

最初の計画書は、外部環境の影響で賃貸の収入が大きく減ったことを中心に、事業を変える必要性を訴えていました。ところが決算書を見ると、会社全体の年間の売上は前の期より増えていました。当社は、必要性・緊急性についての指摘は、この食い違いを見ての判断ではないかと考えました。あわせて、競合を含めた市場の説明と、既存事業との相乗効果の説明も弱かったと見ました。

そこで、お客様に次の4点を聞き直しました。

  1. 賃貸の収入が減ったこと以外に、実際に受けた具体的な被害
  2. 新事業で競合となるところ
  3. その競合に勝てるポイント
  4. 既存事業と新事業の相乗効果

E社が再申請で書き足したこと

この再申請で、E社は採択されました。

実例の弱点を「自分で見直す観点」に置き換える

2つの事例で見えた弱点は、今の公募要領の審査項目にも近い観点がそろっています。下の表の審査項目の番号は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領(第1回)のものです。

実例の弱点審査項目見直す点
実績の記述がない(2)② 競争優位性実績を数字で
丸ごと外注(3)② 体制・依存自社の役割
役割が分からない(3)② 体制担当者と役割
短期の開発は厳しい(3)④ スケジュール工程と期間
必要性・緊急性(2)① 転換の理由具体的な出来事
決算書とのずれ(3) 実績との整合決算書と照合
競合・市場ニーズ(3)③ ニーズの裏付け選ばれる理由
既存事業との相乗効果(2)① 一貫性既存事業とのつながり
デジタル・地域への貢献(5)③ イノベーション当てはまれば明記

※(2)(3)は p.45(「実績との整合」は p.46 の注記)、(5)③は p.47。

① 実績や強みに、数字の裏づけがあるか(D社)

実例では:大手の顧客がいて売上が伸びている、という説明はあっても、実績を示す数字がありませんでした。

審査項目では:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、外部環境と自社の経営資源の強み・弱みを踏まえて、競争優位性を発揮できるかを審査します((2)②、p.45)。事業計画書作成のポイントでも、定性的・定量的な情報を使い、具体的な理由や根拠を示して書くよう求めています(p.44)。

見直し方:強みや実績と書いた箇所に、件数・人数・期間・取引先の種類などの数字や事実が添えてあるかを確かめます。「豊富な実績」「高い技術力」のような言葉だけの箇所は、根拠を足すか書き換えましょう。

② 外部に頼りすぎていないか(D社)

実例では:計画書では、開発会社が「選定中」のままでした。コメントでは、丸ごと外注したシステムを買うだけでは変更に対応できず、実現性に乏しい、と指摘されました。

審査項目では:「第三者に過度に依存している事業ではないか」が、実現可能性の審査項目に明記されています(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 (3)②、p.45)。

見直し方:一部を外に頼むこと自体はできます。D社も、再申請で外注をやめたわけではありません。ただし、事業の主な内容そのものを外に任せる事業や、実施の大半を外に任せて自社は企画だけを行う事業は、補助の対象外です。採択のあとに分かった場合も、採択や交付決定の取り消しになります(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領 p.26)。

大事なのは、外注先が決まっていること、その会社を選んだ理由、そして自社が何を担うか(仕様決め、受け取ったあとの調整や改良など)が書いてあることです。外注費(検査・加工・設計などの一部を外に頼む費用)を計上するなら、外注先の概要と選んだ理由を計画書に具体的に書く必要があります(p.30)。「選定中」「予定」のままの箇所がないかを探しましょう。

③ 誰が、何を、いつやるかが見えるか(D社)

実例では:計画書は、社内の体制を代表がすべて行う書き方で、期間も半年ほどでした。コメントでは、従業員の役割が分からず短期の開発は厳しい、と指摘されました。

審査項目では:補助事業をやり遂げられる体制(人材、事務処理能力など)と、進め方・スケジュールの妥当性が審査されます(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 (3)②④、p.45/省力化投資補助金 第8回の計画面、p.30)。

見直し方:体制図に担当者の役割が書いてあるか、工程ごとに「自社か外注か」「誰が」「いつまでに」が分かるかを確かめます。代表一人に仕事が集まっている計画は、ほかの人の担当を書き出してみましょう。

④ なぜ今、事業を変えるのかを、出来事で示しているか(E社)

実例では:事業を変える必要性や緊急性を示せるとよい、と指摘されました。

審査項目では:これまでの事業活動との一貫性や経営戦略の中での位置づけに加えて、「事業の転換がある場合は合理的な理由が示されているか」が審査されます(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 (2)①、p.45)。

見直し方:「厳しい状況」「先行きが不安」といった言葉だけでなく、何が起きて、どれだけ影響したかを、具体的な出来事で書けているかを確かめます。E社は、借り手の退去、受注の取りやめ、資材の仕入れの遅れを書き足しました。

⑤ 計画書の説明と決算書の数字が食い違っていないか(E社)

実例では:計画書は賃貸の収入の減少を強調していましたが、決算書では会社全体の売上が増えていました。

審査項目では:過去の経営実績や各種の経営指標との連続性・整合性が取れているか、事業計画との間に無理や食い違いがないかも審査されます(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、事業の実現可能性の注記、p.46)。

見直し方:計画書の「売上が減った」「伸びている」という説明を、直近の決算書と並べて読みます。一部の数字だけを取り出していて、会社全体の動きと逆に見える場合は、全体の動きも書いたうえで、どの事業にどんな影響があったのかを説明しましょう。

⑥ 競合と選ばれる理由、既存事業とのつながりを書いているか(E社・D社)

実例では:E社は競合の動きと相乗効果を、D社は市場ニーズと人を確保できるかを指摘されました。

審査項目では:顧客ターゲットの明確さ、ニーズの裏付け、選ばれる理由が整理されているかが審査されます(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 (3)③、p.45)。同じ公募要領の事業計画書作成のポイントも、競合他社と比べた明確な優位性(差別化)を具体的に示すよう求めています(p.44)。既存事業とのつながりは、これまでの事業活動との一貫性((2)①、p.45)にも関わります。E社へのコメントにあった「先端的なデジタル技術の活用」「新しいビジネスモデル」「地域のイノベーション」という言葉は、今の審査項目にもほぼそのまま入っています(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 (5)③、p.47)。

見直し方:競合の種類を挙げ、価格・納期・品質などのどこで勝つのかを書いているかを確かめます。需要の裏づけは、「内諾」より「契約」、「関心がある」より「依頼があった」のように、一歩進んだ事実があれば差し替えましょう。

再申請の進め方:理由が分からなくても、ここまではできる

  1. 最新の公募要領から読み始める:審査項目は、補助金や公募の回によって変わることがあります。前回の計画書ではなく、今回の審査項目から読みます。
  2. 審査項目ごとに「計画書のどこに書いたか」を書き出す:答えていない項目や、言葉だけで根拠のない項目に印を付けます。E社へのコメントにも、判断材料が少ないので公募要領をもとに計画書をより明確に書くとよい、というものがありました。
  3. 前回の計画書と決算書を並べる:売上や利益の説明が、決算書の数字と食い違って見えないかを確かめます(E社では、当社はここが弱点だったと見立てました)。
  4. 「予定」「選定中」「内諾」を探す:前回の申請から時間がたっていれば、決まったことや進んだことがあるはずです。D社は発注先を、E社は契約や人の確保を書き足しました。
  5. 足りない材料は、社内で聞き直す:E社への4つの質問のように、印を付けた項目ごとに質問をつくり、担当者から具体的な出来事や数字を集めます。
  6. 量より根拠で直す:たとえば省力化投資補助金の公募要領は、記載の分量で審査するものではないと明記しています(第8回 p.26)。書き足すときは、文章を増やすより、数字・具体的な事実・担当者を足すことを優先しましょう。

チェックリスト:再申請の前に確かめること

まとめ

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