「事業内容は悪くないはずなのに、なぜか補助金に落ちてしまう」

この悩みを抱える経営者は、実はとても多いです。

補助金の審査員は、あなたの会社を直接見に来るわけではありません。審査員が見るのは「紙の上に書かれた言葉」だけです。つまり、同じ事業内容でも、言葉の選び方ひとつで採択にも不採択にもなるのです。

この記事では、不採択になる事業計画書に共通して出てくる「NG表現」を10個厳選してご紹介します。「NG例 → なぜダメか → 書き直しOK例」の順にまとめたので、ご自身の計画書をチェックしながら読み進めてください。

この記事で分かること:
・審査員に嫌われる「NG表現」10パターン
・なぜその書き方が減点されるのか
・そのまま使える書き直しOK例
・自分でできるセルフチェックの方法

そもそも、なぜ「言葉選び」で落ちるのか

事業計画書の審査は、多くの場合、外部の審査員(中小企業診断士や金融機関OBなど)が採点表に沿って点数をつける方式で行われます。

審査員は1件あたり短い時間で読み切るため、曖昧な表現や根拠のない数字があると「評価できない」と判断されて減点されます。内容が良くても、伝わらなければ点数にならないのです。

逆に言えば、言葉を少し直すだけで採点が上がる可能性もあります。それでは、実際に落ちやすいNG表現を見ていきましょう。

NG①「頑張ります」「努力します」系の精神論

NG例:「社員一丸となって、売上向上に全力で取り組みます」

なぜダメか

審査員は「どれくらい頑張るか」ではなく、「何をどうやって実現するか」を知りたいと思っています。精神論だけでは、実現可能性がゼロとみなされてしまいます。

書き直しOK例

「新設備の導入により作業時間を1日あたり2時間短縮し、浮いた時間を新商品の試作に充てることで、年間12件の新商品開発を実現します」

NG②「業界初」「地域唯一」など根拠なき断定

NG例:「当社のサービスは業界初の画期的なものです」

なぜダメか

「業界初」「地域唯一」という言葉は、裏付けとなる調査結果がないと単なる自称になってしまいます。審査員は「本当に?」と疑いながら読むため、根拠のない断定はかえって信頼を失います。

書き直しOK例

「静岡県西部の板金加工業者50社を独自に調査した結果、24時間対応を行っている企業は当社のみでした(2026年2月時点、自社調査)」

ポイント:どうしても「業界初」を使いたいなら、「何の調査で」「いつ時点で」「範囲はどこか」を必ずセットで書きましょう。

NG③ 数字の根拠がない売上目標

NG例:「3年後に売上を2倍にします」

なぜダメか

数字だけが大きくても、そこに至るまでの計算根拠がないと「希望的観測」とみなされます。審査員は「なぜ2倍なのか」「どう2倍にするのか」を知りたいのです。

書き直しOK例

「新設備の稼働で1日あたりの生産個数が現在の80個から160個に倍増します。既存取引先3社からは年間合計2,000万円分の追加発注の内示をいただいており、3年後の売上を1億円(現在の2倍)とする計画です」

NG④「最新のAI」「革新的な技術」など抽象的な形容詞

NG例:「最新のAI技術を活用した革新的なサービスを提供します」

なぜダメか

「最新」「革新的」「画期的」といった形容詞は、具体的に何をするかが全く伝わりません。審査員は専門家なので、カッコいい言葉よりも「実際の仕組み」を知りたがっています。

書き直しOK例

「画像認識の仕組み(カメラで撮影した部品をコンピュータが自動で判別する機能)を使い、これまで熟練工が目で行っていた不良品チェックを自動化します」

NG⑤ 専門用語だらけで審査員に伝わらない表現

NG例:「SaaS型のBtoBプラットフォームでDXを推進しSFAと連携しKPIを可視化します」

なぜダメか

(SaaS、BtoB、DX、SFA、KPIはいずれもIT系の専門用語)審査員は必ずしも、あなたの業界の専門家ではありません。読んで意味が分からなければ、評価されないのは当然です。特にIT・医療・建築などは専門用語が多くなりがちなので要注意です。

書き直しOK例

「インターネット経由で使える業務管理システムを導入し、営業担当者がどの顧客にいつ連絡したかを全社で共有できるようにします。これにより、商談の進み具合を社長がリアルタイムで把握できるようになります」

注意:専門用語を使う場合は、必ず括弧書きで「(つまり○○のこと)」と言い換えを入れましょう。中学生が読んでも分かるレベルが理想です。

NG⑥ 顧客像が曖昧(「幅広い世代に」など)

NG例:「幅広い世代のお客様に喜んでいただけるサービスを目指します」

なぜダメか

「誰にでも」売りたい商品は、結局「誰にも」届きません。ターゲット顧客がぼやけていると、集客の計画そのものが成り立ちません

書き直しOK例

「メインターゲットは、浜松市に住む30〜40代の共働き世帯で、平日夜の夕食準備に困っている層です。市場調査では、この層は浜松市内に約3万世帯存在します」

NG⑦ 主語が「当社」ばかりで顧客視点がない

NG例:「当社は○○を行います。当社は××も導入します。当社の強みは△△です」

なぜダメか

主語が「当社」ばかりだと、顧客にとってのメリットが見えてきません。審査員が知りたいのは、「あなたの会社がどうするか」ではなく、「その結果、顧客にとって何が嬉しいか」です。

書き直しOK例

「新設備の導入で納期が現在の10日から3日に短縮されます。これにより、急ぎの修理依頼が多い取引先(自動車整備工場)にとっては、部品が届かず作業が止まる時間を大幅に減らすことができます」

NG⑧ 競合分析が「競合はいない」一行で終わる

NG例:「当社のようなサービスは他になく、競合は存在しません」

なぜダメか

審査員は経験上、「競合がいない」と書かれていると警戒します。理由は2つあります。ひとつは「本当に需要があるなら、なぜ他社はやっていないのか?」という疑問。もうひとつは「調べ方が甘いのでは?」という不信感です。

書き直しOK例

「同じ業種ではA社・B社の2社が近隣で同種のサービスを提供しています。ただし両社とも営業時間は18時までであり、夜間対応を行う当社は『仕事帰りの利用者』という層で差別化できます」

ポイント:代替手段(たとえば「自分でDIYする」「大手に頼む」など)も競合として捉えると、分析に厚みが出ます。

NG⑨ 補助事業と既存事業の境界が曖昧

NG例:「今回の補助金で新事業を進めつつ、既存事業も強化していきます」

なぜダメか

補助金は「補助事業」として申請した範囲にしか使えません。既存事業とごちゃ混ぜに書かれていると、「どこまでが補助対象か分からない」と判断され、減点や対象外の原因になります。

書き直しOK例

「今回の補助事業は、新たに開始する『冷凍惣菜の製造販売』のみを対象とします。既存の弁当仕出し事業は別事業として継続しますが、補助金の対象経費には含みません。両事業は製造ラインも会計処理も分離して管理します」

NG⑩ 賃上げ・雇用への言及が抜けている

NG例:(賃上げや雇用についての記載が一切ない)

なぜダメか

近年の補助金は、賃上げや雇用の創出を重視しています。審査項目にはっきり含まれている制度も多く、言及がないと加点を取り逃します。ものづくり補助金・新事業進出補助金などでは、賃上げが要件そのものになっているケースもあります。

書き直しOK例

「本事業の収益拡大により、3年後までに従業員の給与総額を年額3%以上引き上げます。また、新規にパート従業員2名を雇用し、地域の雇用創出にも貢献します」

NG表現10選まとめ一覧

NG表現書き直しのポイント
①「頑張ります」系の精神論具体的な行動と数値で置き換える
②「業界初」「地域唯一」の根拠なき断定調査範囲・時点・出典を明記する
③ 根拠のない売上目標積み上げの計算式を示す
④ 抽象的な形容詞仕組みを具体的に説明する
⑤ 専門用語だらけ括弧書きで言い換えを入れる
⑥ 顧客像が曖昧地域・年齢・ニーズを絞る
⑦ 主語が「当社」ばかり顧客にとっての価値で書き直す
⑧「競合はいない」代替手段まで含めて分析する
⑨ 補助事業と既存事業の境界が曖昧対象範囲を明確に切り分ける
⑩ 賃上げ・雇用への言及なし数値目標を盛り込む

自分で書いた計画書をセルフチェックする5つの質問

書き上げた計画書を提出する前に、以下の5つを自問してみてください。ひとつでも「はい」と即答できないものがあれば、書き直しの余地があります。

  1. 数字に根拠はあるか?(「2倍」ではなく「80個→160個」と書けているか)
  2. 専門用語は言い換えてあるか?(業界外の家族に読んでもらって分かるか)
  3. 顧客像は絞れているか?(「誰に」「どこで」「なぜ」が明確か)
  4. 競合分析は一行で終わっていないか?(複数社を具体的に比較できているか)
  5. 賃上げ・雇用への言及はあるか?(数値目標が入っているか)
注意:書いた本人には「NG表現」がなかなか見えません。必ず一度、第三者(社内の別部署の人、家族、専門家など)に読んでもらうことを強くおすすめします。

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まとめ