「実店舗だけでは厳しい。これからはネット販売も始めたい」——そう考える中小企業・個人事業主が急増しています。
ECサイト(ネットショップ)の立ち上げや拡大には、サイト制作費・広告費・システム開発費など、まとまった初期投資が必要です。ここで大きな力を発揮するのが補助金です。
この記事では、ネットショップ・ECサイト立ち上げ・越境EC・D2Cに使える補助金を整理し、どのケースでどの制度を選ぶべきかを解説します。
・ECで使える主な補助金4種類の違い
・「規模・目的」別のおすすめ補助金
・ECで対象になる経費・ならない経費
・EC特有の事業計画の書き方と注意点
EC参入に補助金を使う企業が急増中
実店舗の売上が鈍る一方、ネット通販市場は拡大を続けています。BtoC-EC(企業から消費者向けのインターネット通販)市場は今も毎年伸び続けており、中小企業が「自社ECを持つ」「越境ECで海外に売る」「D2C(メーカーが直接消費者に販売する方式)で始める」といった動きが活発です。
こうした動きを国も後押ししており、ECを始めるための投資は多くの補助金で対象になっています。
ECで使える補助金4種類の比較表
| 補助金名 | 向いている規模 | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金 | 小〜中規模のEC立ち上げ | 数十万〜数百万円 | 1/2〜2/3程度 |
| 小規模持続化補助金 | 個人・小規模のEC開始 | 通常枠50万円、特例で最大250万円 | 2/3 |
| ものづくり補助金 | 自社ECシステム開発 | 最大4,000万円 | 1/2(小規模事業者は2/3) |
| 新事業進出補助金 | 本格的なEC事業への進出 | 従業員数により750万〜7,000万円(賃上げ特例で最大9,000万円) | 1/2 |
各補助金の特徴
① デジタル化・AI導入補助金(ECサイト構築・決済導入)
あらかじめ登録されたITツールを導入する場合に使える補助金です。ShopifyやBASE(ネットショップ作成サービス)、その他のECプラットフォーム、決済システム、在庫管理ツールなど、登録済みのツールを導入する際に申請できます。
- 向いている:ECを「小さく始めたい」「既存のサービスを使いたい」
- 特徴:登録ツールから選ぶので、導入までの流れが明確
② 小規模持続化補助金(新規EC立ち上げ・広告)
従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)の小規模事業者が使える補助金。ECサイトの新規制作、広告出稿、撮影費など、販路開拓に関わる幅広い経費が対象になります。
- 向いている:既存店舗が新たにECを始めるケース、個人事業主のEC立ち上げ
- 特徴:補助率2/3と高く、初めての補助金挑戦にも適している
③ ものづくり補助金(自社ECシステム開発)
名前は「ものづくり」ですが、独自のECシステムを開発する場合にも使えます。大規模な自社ECサイトの構築、独自の受注・在庫管理システムの開発などが対象です。
- 向いている:既製のECサービスでは実現できない、独自の仕組みを持ちたい企業
- 特徴:補助上限が大きいが、計画書のハードルも高め
④ 新事業進出補助金(本格的なEC事業への進出)
これまでと違う分野に本格的に事業展開する場合の補助金です。実店舗だけだった会社がEC専業部門を立ち上げる、新ブランドでD2Cを始める、越境ECで海外市場に進出する、といったケースが該当します。
- 向いている:EC事業を新しい柱として育てたい企業
- 特徴:数千万円規模の投資を支援できる大型補助金
シーン別:EC立ち上げでどの補助金を選ぶ?
既存店舗が「ECも始めたい」
実店舗を持つ小規模事業者が、初めてネット販売を始めるケース。小規模持続化補助金が第一候補です。サイト制作費、商品撮影費、SNS広告費などをまとめて対象にできます。
Shopify・BASE等で手軽に始めたい
すでにあるECプラットフォームを使って、スピーディーにオンラインショップを始めたい場合は、デジタル化・AI導入補助金が向いています。登録ツールであれば、導入費と初期設定費用が対象になります。
自社物流・自社システムで大規模展開したい
既製のECサービスでは物足りず、独自の受発注システムや物流連携を作りたい場合は、ものづくり補助金が適しています。システム開発費として数百万〜数千万円規模の投資が対象になります。
越境EC・新市場に本格参入したい
海外市場に進出する、新ブランドを立ち上げる、といった事業の軸を変えるレベルの取り組みでは、新事業進出補助金を検討しましょう。サイト構築だけでなく、マーケティング費や人件費の一部まで含めた大きな投資を支援できる補助金です。
ECで対象になる経費・ならない経費
対象になりやすい経費
- ECサイトの制作費(初期構築費、デザイン費)
- 決済システムの導入費
- 広告費(リスティング広告、SNS広告、雑誌広告など)
- 商品撮影費(カメラマン委託費、スタジオ費)
- ITツール導入費(在庫管理、顧客管理、メルマガ配信など)
- 翻訳費(越境ECの場合)
対象にならない経費
- 在庫仕入れ費用:販売する商品自体の仕入れは補助対象外
- 既製品の単なる転売:自社商品や独自性のあるサービスでないと審査で通りにくい
- ドメイン更新料のみ:新規取得は対象になる場合があるが、継続的な更新費用は対象外
- サーバー利用料の継続分:初期導入は対象でも、毎月の運用費は対象外になることが多い
- 人件費(一部の補助金を除く)
EC特有の事業計画の書き方
①「なぜ売れるのか」を数字で示す
EC事業の審査では、「なんとなく売れそうだから」は通用しません。ターゲットとなる市場規模、想定するアクセス数、転換率(アクセスから購入に至る割合)、客単価、リピート率などを数字で示しましょう。
② SEO・広告戦略をセットで書く
ECサイトは「作れば売れる」ものではなく、検索上位に出るためのSEO(検索エンジン最適化)施策や広告による集客施策が必須です。計画書には「どうやってお客さまに見つけてもらうか」を具体的に書きましょう。
③ LTV(お客さま1人当たりの生涯売上)を意識
ECでは「1回だけ買って終わり」のお客さまでは利益が出にくく、リピート購入が鍵になります。メルマガ、LINE公式アカウント、定期購入の仕組みなど、リピートを促す施策を計画書に盛り込むと評価が上がります。
④ 3年間の売上予測を現実的に
EC立ち上げ初年度は売上が伸びにくく、2〜3年目から加速するのが一般的です。「1年目は赤字、2年目以降で黒字化」という現実的な計画の方が、審査員にとって納得感があります。
採択後に気をつけたいこと
リニューアルは対象外になりやすい
事業期間中に「やっぱりデザインを変えたい」「別のECプラットフォームに移したい」となっても、申請時の計画から大きく外れる変更は認められにくいです。計画は練り込んでから申請しましょう。
ドメイン変更に注意
ECサイトのドメイン(URL)を途中で変更すると、SEOの評価がリセットされ、集客に悪影響が出ます。さらに、補助事業として提出するサイトのURLが変わると、実績報告での整合性が問題になることもあります。
成果を測る指標を最初に決めておく
「売上」「アクセス数」「会員数」など、成果を測る指標を採択前に決めておきましょう。採択後に途中で指標を変えると、補助事業の効果測定が難しくなります。
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まとめ
- ECサイト立ち上げには4つの補助金が活用できる(デジタル化・AI導入/小規模持続化/ものづくり/新事業進出)
- 規模と目的で補助金を選び分けることが重要
- 在庫仕入れ・単なる転売・リニューアルは対象外
- 計画書は「市場規模・集客・リピート・売上予測」を数字で示す
- 採択後のドメイン変更・仕様変更には注意