採択の知らせが届いてひと安心、と思ったら、交付申請(補助の対象にする経費を見積で示し、補助金の額を決めてもらう手続き)で、事務局から「見積書のこの行は補助の対象外です」と連絡が来る。このとき初めて、見積の中に対象にならない行が混ざっていると気づくことがあります。

対象外とされた行があると、その額に補助率(経費のうち補助金で出る割合)を掛けた分、補助金が減ることがあります。減った分は自己負担です。差し戻し(事務局から直すよう求められて返されること)のたびに見積書や経費明細表を直すので、交付決定(補助金を出すことが正式に決まること)も遅れます。新事業進出補助金の補助事業の手引きには、書類の不備で審査に時間がかかると、そのぶん事業を行える期間が短くなるとあります(p.26)。差し戻しを重ねても不備が直らなければ、審査を打ち切る場合があるともしています(p.7)。

この記事では、当社が支援した2つの事例で、見積書のどの行が対象外とされたのかを1行ずつ取り上げます。

※当社が実際に支援した事例をもとにしています。会社が特定されないよう、業種・地域・金額などの一部をぼかしています。

事例の全体の流れは、A社の事例紹介とB社の事例紹介の記事にまとめています。

この記事で分かること

※資料名のあとのページは、PDFのページ番号です(印刷されたページ番号とずれることがあります)。参照した版は次のとおりです。新事業進出補助金は、補助事業の手引き(第1.8版)と実績報告ガイド(第1.7版)。ものづくり補助金は、最後の公募回(23次締切)の公募要領と補助事業の手引き(1.0版)。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、公募要領(1.3版)。版や公募の回によってページや内容が変わるので、申請する回の最新の資料で確かめてください。

2つの事例で、見積書から外された行

まず、2つの事例で対象外とされた行を一覧にします。金額は税抜きで、丸めています。行の中身は、このあと①〜⑧で1行ずつ説明します。

見積書の行事務局の判断金額
A社(宿の新築・新事業進出補助金)
防災工事の諸経費この書き方では不可数万円
消火器と置き台器具・備品に当たる数万円
外構工事構築物に当たる300万円台
仮設トイレ対象外(理由不明)数万円
許可の手続き費用対象外(理由不明)30万円台
B社(冷凍の設備・ものづくり補助金)
二次側の工事対象外約51万円
冷媒配管対象外約116万円
特注カート説明後も対象外約48万円
取扱説明費対象外約3万円
試運転・諸経費諸経費は消す指示―

A社では、建物の工事費のうち約350万円(その9割以上が外構)が外れ、補助金は応募時より約180万円(7%ほど)少なくなりました。B社では約220万円が外れ、補助金は約15%(140万円あまり)減っています。

もう一つ知っておきたいのは、指摘は一度にまとめて来るわけではないことです。A社は約2か月の間に7回、B社は4回提出し、そのやり取りの中で対象外の行が少しずつ増えていきました。A社の仮設トイレやB社の冷媒配管は、何回かやり取りをしたあとで初めて指摘されています。なお、B社の記録に残っている指示には、どの行についても理由は書かれていません。

前提:補助金ごとに「入れられる箱」が違う

見積の1行が補助の対象になるには、まず、その行が補助金で決められた経費の区分(箱)のどれかに当たる必要があります(新事業進出補助金の補助事業の手引き p.86)。同じ手引きは、機械装置・システム構築費と建物費を、税法の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」にもとづいて審査するとしています(p.88・p.89)。A社への指摘にも、「器具及び備品」「構築物」という、この省令の言葉が使われていました。

一方、ものづくり補助金には、建物の工事を入れる箱がありません(公募要領 p.8・p.9)。同じ「電気工事」「外構」という行でも、補助金によって扱いが変わりうるのは、この違いがあるからです。主な違いをまとめます(相見積は、値段を比べるために別の会社から取る見積です)。

見積の行新事業進出補助金ものづくり補助金
建物の工事建物費で対象入れる区分なし
外構条件付きで対象対象外
機械の据付け軽微なものだけ軽微なものだけ
器具・備品機械装置・システム構築費の中機械装置・システム構築費の中
諸経費・一式詳細不明は対象外一式のみは不可
予備品対象外対象外
相見積原則3社以上原則2社以上
外れたとき下限を割ると取消3分の2の要件

表の補足です(金額は税抜き)。

※ページは、新事業進出補助金:補助事業の手引き p.9・18・20・27・87〜90/ものづくり補助金:公募要領 p.25・26・31、補助事業の手引き p.4・15・16。

統合後の補助金で申請する方へ:2つの補助金の公募は終わっていて、新しい応募は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」で受け付けています(両補助金の公式サイト)。上の表は、統合前の2つの補助金の決まりです。統合後の公募要領での主な点は、次のとおりです(p.29・p.33・p.55)。

これですべてではありません。申請する回の最新の公募要領で確かめてください。

外された行を、1行ずつ見る

ここからは、外された行を一つずつ見ていきます。それぞれ「この事例では」「公式の決まりでは」「見積の段階で」の順に書いています。

① 「諸経費」の行(A社・B社)

この事例では:A社の工事の見積では、防災工事の章に「諸経費」の行がありました。事務局からは、この書き方では公募要領にあるとおり補助の対象として認められない、と指摘され、外しています。同じ防災工事でも、感知器、その取り付け工事、調整試験の行は対象のまま残りました。B社では、急速冷凍機とプレハブ冷凍庫の見積にあった「試運転調整費・(現場)諸経費」の行について内訳を求められ、現場諸経費は消すよう指示を受けました。試運転調整費のほうは対象として残っています。

公式の決まりでは:新事業進出補助金の公募要領と補助事業の手引きは、「諸経費、会社経費、一般管理費、現場管理費、雑費等、詳細が確認できない経費」を対象外としています(補助事業の手引き p.20)。交付申請ガイドも、見積書のよくある不備として「一式表示のみは不可」を挙げ、内訳が確認できないと対象外になる項目の例に、諸経費・会社経費・雑費を挙げています。ものづくり補助金の補助事業の手引きも、見積金額に複数の項目が含まれる場合は内訳を示すこと、「〇〇一式」のみは不可としています(p.4、p.16)。

見積の段階で:諸経費は、A社では行ごと外れ、B社では内訳を求められたうえで、現場諸経費を消すよう指示されました。現場管理費や一般管理費も含め、対象外の前提で資金計画に入れておきましょう。試運転のように対象になりうる費用と1行にまとめられていると、その行ごと内訳を求められることがあります。見積を頼むときに「諸経費は独立した行に」「数量と単価を書き、一式にしない」とお願いしておくと、出し直しが減ります。

② 消火器と置き台:器具・備品(A社)

この事例では:宿の新築工事の見積では、防災工事の章に、感知器などと並んで「ABC粉末消火器」と、その置き台の「スタンド」の行がありました。事務局からは、器具及び備品に当たるため対象外とされました。どちらも1つ1万円に届かない品です。A社は補助の対象からは外したものの、経費明細表(見積の中身を1行ずつ書き写す表)の「経費区分」の欄が建物費のまま残っていたことに後で気づき、「補助対象外経費」に直して出し直しました。

公式の決まりでは:新事業進出補助金の建物費の対象は、税法上の「建物」と「建物附属設備」です(補助事業の手引き p.90)。「器具及び備品」は機械装置・システム構築費の側に挙がっている区分で、しかも単価10万円(税抜き)以上のものに限られます(同 p.87・p.88)。家具・家電のように汎用性があるものは、対象外の一覧に入っています(同 p.20)。

見積の段階で:建物の工事の見積に、置くだけの器具・備品(消火器、家具、家電など)が混ざっていないかを確かめ、工事とは別の行にしてもらいましょう。外した行は、経費明細表の区分の欄まで直すのを忘れないでください。

③ 外構工事:構築物(A社)

この事例では:見積の「外構工事」の章(駐車場やアプローチのコンクリート、ブロック積み、フェンス、砂利敷きなど)は、事務局から、構築物に当たるため対象外とされました。金額は300万円台で、A社で外れた工事費の9割以上を占めます。外構は見積の中で独立した章になっていたので、そのページに「外構工事すべて補助対象外」と書き込み、章ごと外すだけで済みました。

公式の決まりでは:新事業進出補助金では、構築物は建物費の中の条件付きの扱いです。補助事業で建てる・改修する建物に付属または隣接して一体的に使うもので、その建物より耐用年数(税法で決められた使用年数)が短いものだけが対象です(補助事業の手引き p.18・p.89・p.90)。実績報告ガイドの見本の見積書(p.11)でも、「建物外構整備(駐車場舗装)」の行には「補助対象」の印が付いていません(理由は書かれていません)。ものづくり補助金では、工場建屋・構築物・簡易建物の取得費用が対象外の一覧に入っています(公募要領 p.31)。

見積の段階で:外構は建物本体と別の章、できれば別の見積にしてもらい、対象にならない前提で資金計画を立てましょう。対象にしたい部分がある場合は、上の条件に当たるかを、交付申請の前に事務局へ確かめておくと安心です。

④ 仮設トイレ(A社)

この事例では:工事の間だけ置く仮設トイレの1行が、何回かやり取りをしたあとで対象外とされました。理由は記録に残っていません。同じ「仮設工事」の章でも、足場、養生、工事用の電気・水道、清掃、廃材の処分などの行は対象のまま残っています。

公式の決まりでは:公募要領と補助事業の手引きには、仮設工事の扱いについての記載は見当たりませんでした。

見積の段階で:仮設工事は「一式」にせず、中身が分かるように行を分けてもらいましょう。行が分かれていれば、一部が外れても、その行を外すだけで済みます。

⑤ 営業許可の手続きを専門家に頼む費用(A社)

この事例では:A社は応募のとき、宿の営業許可の取得などを専門家に相談する費用を、専門家経費として計上していました。交付申請では、行政書士の見積で申請しています。中身は、事前の調査と行政との協議、届け出の書類や許可申請書の作成・提出、地元への説明の立ち会い、役所に払う申請手数料で、合わせて30万円台。審査の結果、まとめて対象外とされました。理由の説明は残っていません。

公式の決まりでは:理由とは別に、関係する決まりを挙げます。新事業進出補助金では、「事業者が行うべき手続きの代行費用」が、どの経費の区分にも共通する対象外の一覧に入っています(補助事業の手引き p.20)。許可などで国等に払う手数料も、同じ一覧にあります。外注費の説明にも、「申請者自身が行うべき手続きの代行に係る経費」は対象外とあります(同 p.93)。専門家経費の対象は、専門家の技術指導や助言が必要不可欠な場合のコンサルティング業務などです。計画書に必要な理由を具体的に書く必要があり、交付審査で必要性が認められなければ対象外となる場合があります(同 p.94)。

見積の段階で:許認可の書類の作成・提出などを代わりに行ってもらう費用は、この「手続きの代行費用」に当たりうるので、経費の区分を変えても対象にならない前提で資金計画に入れておきましょう。役所に払う手数料の行は対象外です。専門家経費で認められうるのは、補助事業に欠かせない技術指導や助言に当たる部分だけです。その場合も、応募の段階で計画書にその専門家が必要な理由を書き、交付申請の前に事務局へ確かめましょう。

⑥ 建物側とつなぐ工事:二次側の電気・給排水工事と冷媒配管(B社)

この事例では:B社の急速冷凍機とプレハブ冷凍庫の見積には、本体のほかに「二次側電気工事費」「二次側給排水工事費」「冷媒配管工事費」「冷媒配管部材費」などの行がありました。二次側工事とは、建物側の電源盤や給排水の口から、設備本体までをつなぐ工事です。1回目の差し戻しでは、工事の内容によって対象外かどうかを判断するとして説明を求められ、専用の電源工事、給排水管の接続、排熱用ダクトの接続など、設備を動かすのに欠かせない工事だと説明しました。それでも2回目の差し戻しで二次側の電気・給排水工事(約51万円)が、3回目には冷媒配管(冷凍機と本体をつなぎ、冷やすためのガスを通す配管)の工事費・部材費(約116万円)が対象外とされました。一方、搬入・据付、試運転調整、プレハブ冷凍庫の組み立ての費用は対象のまま残っています。

公式の決まりでは:ものづくり補助金の機械装置・システム構築費には、機械と一体で行う「据付け」も含まれます。ただし、その範囲は「新たに購入する機械装置の設置と一体で捉えられる軽微なもの(設置場所に固定等)」に限られ、「設置場所の整備工事や基礎工事は含みません」(公募要領 p.26)。設置場所の整備工事・基礎工事の費用は、対象外の一覧にも入っています(公募要領 p.31、補助事業の手引き p.16)。新事業進出補助金でも、機械の据付けは、設置と一体の軽微なものに限られます(補助事業の手引き p.88)。

見積の段階で:設備の見積は、「本体」「搬入・据付」「試運転」と、「建物側の電気・給排水・ダクトの工事」「配管」を別々の行にしてもらいましょう。ものづくり補助金では、建物側の工事は自己負担になる前提で資金計画を立てておくと安全です。工事で何をするのかを短く説明できるメモも用意しておくと、説明を求められたときに慌てません。

補足:新事業進出補助金を使ったA社では、建物の電気設備や給排水設備、水道の引き込みの工事は、建物費として対象のまま認められています。同じ「電気工事」「給排水工事」という行でも、補助金と工事の中身によって扱いが分かれる例です。

⑦ 特注カート:予備品ではないと説明したが対象外(B社)

この事例では:急速冷凍機の見積には、本体とは別の行で「特注カート」がありました。食材を載せたトレイごと冷凍機に差し込む、専用の台車です。1回目の差し戻しで、それが何か、複数あるのは予備品ではないのか、と説明を求められました。B社は、一般の台車では規格が合わないと説明しました。また、カートを冷凍機に入れている間に、別のカートで次の食材を準備するので、複数ないと作業が止まる、予備品ではない、とも説明しました。それでも2回目の差し戻しで対象外(約48万円)とされました。

公式の決まりでは:予備品の購入費用は、ものづくり補助金(補助事業の手引き p.16)でも、新事業進出補助金(補助事業の手引き p.20)でも対象外です。

見積の段階で:本体と別の行になっている付属品、とくに「同じものが複数」の行は、予備品ではないかと確かめられやすい行です。何に使うのか、なぜその数が要るのかを見積の段階で整理しておき、それでも対象外になりうる前提で資金計画を立てましょう。

⑧ 現地での取扱説明費(B社)

この事例では:真空包装機の見積には、本体・運賃と並んで「現地取り扱い説明費」(約3万円)の行がありました。3回目の差し戻しで対象外とされています。運賃のほうは対象のまま残りました。

公式の決まりでは:ものづくり補助金の機械装置・システム構築費として挙げられているのは、機械装置などの購入・製作・借用と、それと一体で行う改良・修繕・据付けです(公募要領 p.26)。操作の説明や講習の費用は挙げられていません。

見積の段階で:操作説明・講習・研修の費用が別の行で出てきたら、対象外になる前提で、自己負担の分として資金計画に入れておきましょう。

外された行は、どう直し、何に響くか

対象外とされた行は、見積書に「補助対象外」と書き込み(B社では本見積と相見積の両方に)、経費明細表で対象から外して、補助金を計算し直しました。同じ見積の中に値引きがあるときは、対象と対象外で値引きを比率で割り振ります(新事業進出補助金の補助事業の手引き p.25)。

外された分は、補助金が減るだけでは終わりません。補助金ごとに、次の決まりにも響きます。

注意:ここで紹介した対象外の判断は、それぞれの事例で事務局から示されたものです。同じ名前の行でも、工事の中身や補助金、公募の回によって扱いが変わることがあります。申請する回の最新の公募要領・手引きで確かめ、迷う行は事務局に問い合わせてください。

見積を受け取ったら:危ない行を見分ける進め方

見積は、できれば応募の前から集め、その段階で行を仕分けておくのが理想です。ものづくり補助金の公募要領も、申請の準備段階で複数の会社から見積を取っておくと、採択後に円滑に事業を始められるとしています(p.25)。

  1. 見積を頼むときに、行を分けてもらう:見積依頼書に「本体、付属品、運搬・据付、試運転、建物側の工事、配管、説明・講習、諸経費、外構、仮設は別の行に」「数量と単価を書き、一式にしない」と書いておきます。相見積も同じ分け方で取ります。
  2. 届いた見積の全行を仕分ける:下のチェックリストを使い、「対象」「要確認」「対象外」に分けます。
  3. 「対象外」「要確認」の合計を、自己負担として資金計画に入れる:新事業進出補助金なら下限額、ものづくり補助金なら3分の2の割合も確かめます。統合後の補助金では、どの枠も下限額を確かめます。
  4. 「要確認」の行は、説明を先に用意する:何に使うのか、なぜその数なのか、工事で何をするのか。B社が求められたのも、この説明でした。迷う行は、交付申請の前に事務局へ問い合わせます。

チェックリスト:見積書を受け取ったら確かめる行

まとめ

関連コラム