今回ご紹介するのは、食品をつくる会社と、食品を加工して卸す会社の2つの事例です。1社は、惣菜やデザートを製造し、スーパーなどの量販店に卸している食品メーカー(以下、D社)。もう1社は、業務用の肉を加工して、給食・福祉施設・ホテルなどに卸している会社(以下、E社)です。2社とも、中小企業省力化投資補助金(一般型)で採択されました。

2社の現場には、詰める・盛り付ける・切る・包む・ラベルを貼るといった手作業が多く残っていました。そのうえ、冷やす・解かす・保管するといった温度の管理や、洗浄・手洗いなどの衛生の作業も欠かせません。その中の「何を」省力化の対象にすればよいのか。2社の計画書をもとに、具体的に見ていきます。

※当社が実際に支援した事例をもとにしています。会社が特定されないよう、業種・地域・金額などの一部をぼかしています。

この記事では、次のことが分かります。

2つの事例の概要

項目D社E社
業種惣菜・デザートの製造業務用食肉の加工・卸
主な納め先スーパーなど給食・福祉・ホテルなど
規模従業員20名ほど役員を含め十数名
主な設備充填機・急速冷凍機などスライサー・真空包装機など
補助対象経費約550万円約2,000万円
補助率2/3で申請1/2で申請
1日の人手の時間46時間→約24時間41.5時間→約19時間
省力化指数0.980.97
結果採択採択

※「1日の人手の時間」は、計画書にある、工程ごとの人手の作業時間の合計です(いずれも計画の数字)。

※補助率は、会社の規模(小規模企業者・小規模事業者にあたるか)や、再生事業者かどうか、特例の有無で変わります。再生事業者とは、中小企業活性化協議会などの支援を受け、応募の時点で再生計画を作っている途中か、作り終えて応募の締切からさかのぼって3年以内に計画が成立した事業者のことです。回によっては補助金額でも変わり、補助金額のうち1,500万円を超える部分を1/3とした回もあります。申請するときは、最新の公募要領で確かめてください。

D社:手で詰める作業と、凍るのを待つ時間を対象にした

D社では、主力商品を手作業で盛り付け、カップ入りの冷凍デザートも手で詰めていました。計画書では、充填・凍結・表示の3つの工程を省力化の対象にしています。

1. 手で詰める作業(充填)

デザートの充填は手作業で、1.5時間で詰められるのは200〜300個ほどでした。計画書では、量のばらつきによる詰め直しも課題に挙げています。計画では、品目ごとに重さを登録できる定量充填機を入れ、同じ1.5時間で約1,000個を詰めることを目標にしています。

2. 凍るのを待つ時間(凍結)

通常の冷凍では、1回(1バッチ)凍らせるのに2〜3時間かかっていました。その間、入れ出し・見張り・記録・完了待ちに人が取られます。その日のうちに製造から出荷までを終えられない「翌日またぎ」も起きていました。急速冷凍機を入れると、1バッチ(約300個)を約40分で凍らせられる計画です。

3. ラベルの印字と記録の流れ(表示)

計画書には、ラベルの印字と貼り付け、製造日報などへの記録を、包装する場所のそばでまとめて済ませる流れに変えることも書かれています。ラベルに入れる項目(品目コード・ロット・賞味期限など)と桁数を社内でそろえ、専用のラベル印字機に設定する計画です。

計画書の課題の欄には、機械の説明より先に、手で詰める時間や凍るのを待つ時間のように、人の手が取られている場面が書かれています。

繁忙期には、ラインの人数を倍ほどに増やすこともあった

D社の主力商品は、年末年始やお盆、催事の時期に注文が集中します。ふだんは最小限の人数で回しているラインを、繁忙期には倍ほどの人数まで増やすこともありました。臨時のスタッフに頼ると、教える手間がかかり、品質のばらつきにもつながります。ヒアリングでは、繁忙月の人件費が平月の1.5倍以上にふくらみ、利益を圧迫していることも分かりました。物流センターへの納品時刻が年々早まり、朝早くからの人の配置や残業が増えている、という事情もありました。

E社:肉が流れる順番に沿って、手間の多い工程を拾い出した

E社は、肉の塊を仕入れて、切り分け・包装・冷凍保管・解凍・スライスをしてから納めています。計画書には、工程の流れが「原材料の受け入れ→大割(大きな塊を荒く切り分ける)→真空保存→解凍→規格どおりのスライス→出荷」と整理され、その流れの中で手間がかかっている工程が挙げられています。

計画では、大割用と規格スライス用のスライサー、大きな塊のまま包める真空包装機、塊ごと浸けられる幅の広い解凍シンク、容量の大きい冷凍庫・冷蔵庫などを入れます。あわせて、作業の並びを一直線に近い配置に組み直します。解凍にかかる時間は、平均40〜90分から20〜30分に縮める見込みです。

処理できる量の上限が、受注の上限になっていた

E社では、手作業の多さに、動線(人や物が行き来する通り道)や保管の容量の制約が重なって、「1日に処理できる量の上限」になり、繁忙期や大口の注文で受注を取りこぼしていました。ヒアリングでは、設備の制約から取引を断ることもある、と伺いました。一方で、既存の取引先からは、供給できる量が増えることを前提に、取引を増やしたいという打診も来ていました。E社は計画書で、省力化を、この受注の機会を取り切るための手段と位置づけています。

減る時間を、2社はどう数えたか

公募要領では、設備の導入によって業務がどの程度省力化されるのかを、具体的かつ詳細に書くよう求めています。省力化指数を計算する様式のシート(事業計画書その3の別紙)には、「1日あたりの人手による作業時間」を入れること、機械・装置が自動で行う工程・作業は書かないことが説明されています(応募申請の手引き)。2社とも、工程ごとの1日あたりの人手の時間を、導入前と導入後で並べました。

D社の主な工程(1日あたり)

工程導入前導入後
デザートの充填540分120分
充填の手直し・詰め直し90分なし
凍結の段取り・手待ち150分40分
充填機の洗浄・組み付けなし20分
充填量の調整・重さの確認なし10分

表は、設備で変わる主な工程を抜き出したもので、数字はどれも計画書にある見積もりです。表にない工程も含めた1日の合計は、導入前の2,760分(46時間)から、導入後の1,450分(約24時間)へ、約47%減る計画です。

E社の主な工程(1日あたり)

工程導入前導入後
大割・整形540分180分
真空包装360分130分
袋の詰め直し・再真空120分なし
冷凍庫への入庫・整理60分45分
解凍の準備・入れ替え180分60分
規格スライス540分180分
計量・小分け240分144分
スライサーの段取り・清掃なし45分

こちらも、計画書にある見積もりの数字から、主な工程を抜き出したものです。表にない工程も含めた1日の合計は、2,490分(41.5時間)から1,129分(約19時間)へ、約55%減る計画です。計量・小分けが減るのは、スライスの厚みがそろい、手直しや計り直しが減るためです。

機械が冷やす・解かす時間ではなく、人が付いている時間を数える

D社の凍結の行は、省力化指数を計算するシートの行の名前どおり、入れ出し・見張り・記録・手待ちなど、人が付いている時間として書かれています(150分→40分)。機械の時間と人の時間の違いが分かりやすいのは、E社の解凍の行です。解凍そのものにかかる時間(平均40〜90分→20〜30分)とは別の、準備や入れ替えにかかる人の時間(180分→60分)が数えられています。

洗浄・清掃など、導入後に増える作業も入れる

2社とも、機械を入れると新しく発生する作業を表に入れています。D社は充填機の洗浄・組み付け(20分)と、充填量の調整・重さの抜き取り確認(10分)。E社は、スライサーの段取り・刃の交換・毎日の清掃(45分)です。D社の計画書には、洗浄・組み付けや重さの確認を充填する場所の近くで短時間に行い、衛生と量の正確さを保つことも書かれています。

省力化指数の式では、導入後に新しく発生する作業の時間を差し引きます。入れ忘れると、指数が実際より高く出てしまいます。公募要領でも、省力化指数について「記載内容や算出根拠が妥当なものとなっているか」が審査の観点に挙げられています。

省力化指数と「1日全体の削減率」は別の数字

公募要領の省力化指数の計算式は、「(設備の導入で削減される業務にかかっていた時間 − 設備の導入後に発生する業務の時間)÷ 設備の導入で削減される業務にかかっていた時間」です。計算は、事業計画書(その3)の別紙1のシートで行います。シートでは、導入後の作業ごとに「新たに追加される作業」か「内容は変化しない作業」かを選びます。内容は変化しない作業には、対応する導入前の作業の番号を入れます。導入前の作業のうち、つながる作業がないものは全部の時間が、短くなったものは減った分が、式の「削減される業務にかかっていた時間」に入ります。新しく加わる作業の時間と、延びた作業の延びた分は、「導入後に発生する業務の時間」に入ります(様式の別紙1、応募申請の手引き)。

D社なら、減った時間が約22.3時間、新しく加わる作業が0.5時間で0.98、E社は約23.4時間と0.75時間で0.97でした。表の「導入前」「導入後」の合計から出す数字ではありません。一方、1日全体の人手の時間で見た削減率は、D社が約47%、E社が約55%です。2つは別の数字なので、計画書の中で混同しないようにしましょう。

1日の差を、月や年の計算に使う

1日あたりの差は、D社が約21.8時間、E社が約22.7時間です。D社はこれを月約654時間として、生まれた時間の使い道を割り振りました。また、投資回収期間を計算するシート(その3の別紙)には、1日あたりの削減時間に、年間の稼働日数と人件費単価を掛ける欄があります。年間の稼働日数には、設備を使う事業(補助事業)の稼働日数を、実態に合わせて入れます(応募申請の手引き・よくある質問)。D社は365日稼働の工場なので365日、E社は250日としました。

数え方についての「よくある質問」:事務局の「よくある質問」では、人件費単価は「総人件費(事業者全体)÷総労働時間(従業員+役員)」で出すこと、不定期に行う作業は、稼働日に毎日行うと仮定して日割りした時間を入れることが示されています。申請する回の公募要領・手引き・よくある質問で確かめてください。

生まれた時間を何に使うか(計画)

公募要領では、省力化した労働力を補助事業以外の事業にどう生かし、会社全体でどんな価値を生むのかを書くよう求めています。審査でも、省力化された時間や労働力を高付加価値業務に振り向けることで賃上げにつながるか、という観点が示されています。2社は、生まれた時間を次のように割り振りました。

D社:月約654時間の使い道

使い道月の時間
主力商品の磨き込み218時間
デザートの新商品開発164時間
営業・新規開拓136時間
品質・衛生・記録54時間
人材育成・標準化54時間
改善・データ分析28時間

E社:1日約22.7時間の使い道

使い道割合
既存商品の付加価値アップ40%
営業(既存先・新規先)25%
品質・衛生・HACCP15%
記録の整備10%
人材育成・多能工化10%

E社の計画では、この割り振りを四半期ごとに見直すことも決めています。

成果は、数字で追える目標にする

2社とも、生まれた時間の成果を、数字で追える目標(KPI)にしています。D社では、その日のうちに製造から出荷までを終えられる割合を60%から95%へ、臨時のスタッフに頼る割合を25%から12%へ(いずれも導入1年後)、といった目標です。E社も、規格外の割合、繁忙期に注文に応えられた割合、商談の件数、記録の提出にかかる時間などを指標に挙げています。そのうえで、2社とも、1人当たり給与支給総額を年平均5%ほど引き上げる計画です。E社は、増える付加価値額のおおむね38%を賃上げに充てる方針も書いています。

2社の計画書の工夫

1. 汎用の機械でも「自社のライン用」に合わせる点を書く

一般型の対象は、オーダーメイド設備などの導入です。公募要領では、汎用の設備であっても、導入する環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、機能が変わる場合や、組み合わせることでより高い省力化効果を生む場合はオーダーメイド設備とみなす一方、汎用の設備を単体で入れるだけの事業は対象にならない、としています(参考:省力化投資補助金のカタログ型と一般型の違い)。

D社の計画書には、個々の機械は汎用品をもとにしつつ、ノズルの太さや吐き出す量を品目ごとに登録すること、容器を並べて支える型の間隔や作業台の高さ、ラベルに印字する項目を、自社のラインに合わせて設計・調整することが書かれています。そのうえで、充填・急速冷凍・ラベル印字を、1本の流れとして使う計画です。

2. 同じ種類の機械を複数入れるなら、使い分けを書く

E社は、用途の違うスライサーを複数入れる計画でした。準備の段階の打ち合わせでは、それぞれの使い分けと、それぞれが必要な理由を書くことが論点になりました。E社は計画書で、大割用は仕入れた塊を荒く切り分けて真空保存に回すため、規格スライス用は商品として納める厚みにそろえて切るため、と目的を書き分けています。

3. 保管庫や衛生の設備は、人の時間とのつながりを説明する

冷凍庫・冷蔵庫や自動の手洗い器は、それだけでは「人手が減る」設備に見えにくいものです。E社の準備の段階でも、冷蔵庫を大きくすることや手洗い器を入れることが、どう省人化につながるのかを説明する必要がある、という点が論点になりました。

E社は計画書で、冷凍・冷蔵の容量が足りないために仮置きが増え、前もって仕込むことや出荷の調整が難しいことを、今の課題として挙げています。時間の表でも、冷凍庫への入庫・整理は60分から45分に減る見込みです。容量が増えれば前倒しで仕込んで出荷をならせるので、繁忙期の取りこぼしを減らす効果もある、としています。

一方、自動の手洗い器は、時間の表に入っていません。計画書では、手洗いなどの衛生の動線を作業場の入口側にまとめ、人のミスを減らすという衛生面の効果として説明されています。省力化の効果と衛生の効果は、分けて書くと読む人に伝わりやすくなります。

なお、保管庫や手洗い器が補助の対象として認められるかは、交付申請のときに改めて審査されます。公募要領では、建物・構築物(簡易な建物を含む)の取得費用と、それらを組み立てるための部材の費用は対象外です。ほかの用途にも使える汎用性のあるものの購入費も、対象外とされています。パネルを組み立てて作る冷凍・冷蔵庫などは、機械として認められるかを、見積もりの段階で事務局や見積先に確かめておきましょう。

また、補助の対象になる経費は、必要性と金額の妥当性を証拠書類で確かめられるものに限られます(公募要領)。時間の表に入らない手洗い器なども、その費用が必要な理由を説明できるようにしておきましょう。

4. 繁忙期の事情を、数字と一緒に書く

2社とも、季節や行事、大口の注文によって忙しさが大きく変わる現場でした。2社の計画書は、D社では繁忙期にラインの人数を倍ほどまで増やす場面があったこと、E社では繁忙期や大口の注文で受注を取りこぼしていたことを、課題の中心に置いています。そのうえで、D社は「その日のうちに製造から出荷まで終える」流れづくりを、E社は保管の容量を増やして前倒しで仕込む体制を、解決策として示しています。

5. 表示・衛生・記録をセットで考える

2社の計画書では、表示や記録の不備を、取引先からの信用に関わるリスクとして挙げています。D社はラベルの印字と記録を作業の流れの中で済ませる形に、E社は温度・衛生・出荷の記録の様式をそろえる形にしました。2社とも、省力化で生まれた時間の一部を、品質・衛生・記録に充てています。

6. 分かりにくい言葉は、伝わる言葉に置き換える

D社の計画書では、「律速」ではなく「ボトルネック」、「スループット」ではなく「生産性」、「多頭」ではなく「複数ノズル式」のように、読む人に伝わる言葉が使われています。

食品の現場ならではの注意点

2社の計画づくりと公式資料から、食品の現場で特に気をつけたい点をまとめます。

注意:採択されても、すべての経費が認められたわけではありません。公募要領では、採択されたことをもって申請内容のすべてが承認されたわけではなく、設備が補助の対象になるかどうかや経費の中身は、交付申請のときに改めて審査され、減額や交付決定ができない場合がある、としています。また、交付決定の前に発注・契約した経費は、いかなる理由でも対象になりません(参考:補助金で設備を買う前に知っておきたい「着手制限」)。

申請前のチェックリスト

食品の現場で省力化の計画をつくるときに、確かめておきたい点です。

まとめ

2社の計画書に共通するのは、「機械を入れる」という話が、「どの工程で、人の時間が何分減るのか」という現場の言葉で書かれていることです。D社は、手で詰める時間と凍るのを待つ時間を中心に、充填・凍結・表示の工程を対象にしました。E社は、肉が流れる順番に沿って、大割・包装・解凍・スライス・保管の手間を拾い出しました。そのうえで2社とも、洗浄や清掃のように導入後に増える作業も入れて、1日の時間を積み上げています。

生まれた時間は、D社は主力商品の磨き込みと新商品・営業に、E社は規格パックの拡充と営業、品質・衛生と記録の整備に割り振りました。食品の現場では、衛生・温度管理・表示を守ることが前提です。省力化の効果と衛生の効果を分けて整理し、生まれた時間で何を生み出すのかまで、具体的な数字で示すことを心がけてみてください。

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