「補助金が出るのだから、設備の代金はその補助金で払えばいい」。そう考えて計画を進めると、途中でお金が足りなくなります。補助金は、事業が終わって報告と検査を済ませたあとに振り込まれる「後払い」です。その間の代金は、いったん自社で用意しなければなりません。省力化投資補助金や新事業進出・ものづくり補助金では、金融機関から借りるなら、申請のときに「金融機関の確認書」も必要になります。

この記事では、当社が支援した2つの事例をもとに、補助金が入るまでのお金の段取りと、確認書で慌てないための進め方を、公式の資料の文言で整理します。

どちらも、申請を準備した段階の話です。

※当社が実際に支援した事例をもとにしています。会社が特定されないよう、業種・地域・金額などの一部をぼかしています。

補助金ごとの支援の流れは、事例紹介の記事(宿の新事業進出、冷凍食品のものづくり補助金、ICT建機の省力化投資補助金)にまとめています。

この記事で分かること

※文中の「新事業進出・ものづくり補助金」は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のことです。資料名のあとのページは、当社が参照した版のPDFのページ番号です(印刷されたページ番号とずれることがあります)。決まりは補助金ごと・公募の回ごとに変わることがあるので、申請する回の最新の公募要領・手引きで確かめてください。

2つの事例で見る、補助金が入るまでのお金の段取り

G社:投資の約半分を補助金、残りを借入。補助金の分は「つなぎ融資」で立て替える

G社は、建設業の会社です。省力化投資補助金では現場の作業を減らす機械を、新事業進出・ものづくり補助金では新しい事業のための設備を入れる計画で、2つの申請を準備しました。どちらも1億円規模の投資です。

G社のお金の組み立ては、2つの申請とも同じ形です。

G社の省力化投資補助金の計画書には、この組み立てと、確認書(設備資金とつなぎ資金の両方)を同じ金融機関から取得済みであることが書かれています。事業の進め方を書く取組内容の表にも、「完了から30日以内に実績報告を行い、補助金の入金後につなぎ融資を返済する」と、返す順番まで書かれています。新事業進出・ものづくり補助金の別添資料には、「発注・契約 → 納入・据付と代金の支払い(借入とつなぎ融資)→ 完了・実績報告 → 補助金の入金とつなぎ融資の返済」の流れが図で示されています。G社は、補助金の入金を完了から数か月あとと見込んでいます。

G社:計画名が変わったので確認書を取り直し、金額が変わったときは取り直さなかった

省力化投資補助金の申請の直前に、G社は入れる設備の組み合わせを見直しました。それに合わせて、事業計画の名前(計画名)も変わりました。確認書は、前の名前ですでにもらっていました。

確認書には、計画名を書く欄があります。申請書と確認書で計画名が違うと、どの計画を確認したのかが分からなくなります。そこで、新しい計画名が決まったところで、すぐに金融機関へ取り直しを頼みました。確認書は、新しい名前で取り直せました。

その後、設備の仕様を変えたことで、投資額と借入額が減りました。このときは取り直していません。確認書の様式には金額を書く欄がなく、計画名も変わっていないからです。

新事業進出・ものづくり補助金の申請でも、準備の途中で投資額や借入額が動きました。こちらも、計画名は申請書と同じで、確認書に金額の記載もないため、取り直しは要らないと判断しました。

ポイント:確認書を取り直すかどうかは、「確認書に書いてあることが変わったか」で考えます。計画名が変われば取り直しを頼み、金額だけが変わったなら、確認書に金額を書いてもらっていないかを確かめます。ただし、公式の資料に「計画名を変えたら取り直す」とまで書いた記述は見当たらないため、これは当社の判断です。迷ったら、事務局と金融機関に確かめてください。

H社:借入はしないので確認書は不要。それでも金融機関向けの資料と突き合わせた

H社は、整体院を営む会社です。新しい事業としてジムを開くため、内装の工事と機器の購入などを計画しました。借入はせず、投資はすべて自己資金で賄います。補助金が入るまでの分も、自己資金で立て替えます。金融機関からお金を借りないので、確認書は要りません。

ただ、H社には、別の目的で金融機関向けに作られていた事業の資料がありました。借入をしなくても、金融機関への説明と申請書の内容が食い違うのは避けたいところです。そこで、次の3つを突き合わせました。

もう一つ気をつけたいのが、書き方です。「全額を自己資金で賄う」とだけ書くと、補助金がなくてもできる事業だと読まれるおそれがあります。新事業進出・ものづくり補助金の審査項目「公的補助の必要性」に、「国からの補助がなくとも、自社単独で容易に事業を実施できるものではないか」とあるためです(公募要領 p.47)。そこで当社は、書き方を助言しました。H社の別添資料には、「発注は交付決定の後とし、補助金の入金までは自己資金で立て替える」と書かれています。

公式の決まり①:補助金は「後払い」(精算払い)

補助金は、かかった費用を確かめてから支払う「精算払い」です。省力化投資補助金と新事業進出・ものづくり補助金の流れは、次のとおりです(省力化投資補助金の応募申請の手引き p.9・実績報告の手引き p.6、新事業進出・ものづくり補助金の応募申請ガイド p.58)。

  1. 交付決定(補助金を出すことが正式に決まること)を受けてから、発注・契約する
  2. 決められた期間内に、納品・検収(届いた物を確かめること)・支払いを済ませる
  3. 事業が終わった日から30日以内(または完了の期限日の、早い方)に実績報告を出す
  4. 事務局の確定検査(書類や現地の確認)を経て、補助金の額が決まる
  5. 額の確定の通知を受けてから、補助金を請求する(精算払請求)
  6. 事務局から補助金が振り込まれる

代金を払ってから補助金が入るまでに、報告と検査の期間がはさまります。補助金ごとの書き方は次のとおりです。

今回確かめた公式の資料には、完了から入金までにかかる日数の目安は書かれていませんでした。G社・H社は、どちらも入金を完了から数か月あと(H社は約半年後)に置いて、資金繰りを組んでいます。

事業を行える期間(実施期間)も決まっています。省力化投資補助金(一般型)は交付決定から17か月以内(採択発表から19か月以内。公募要領 p.9)です。新事業進出・ものづくり補助金は、新事業進出枠とグローバル枠が交付決定から14か月以内(採択発表から16か月以内)、革新的新製品・サービス枠が10か月以内(同じく12か月以内)です(公募要領 p.8〜10)。

注意:補助金の額は、採択のあとの交付申請で減ることがあります。新事業進出・ものづくり補助金の公募要領は、交付決定額は採択時点の補助金申請額を上回ることはできず、応募のときに入れていない経費を交付申請で新たに足すこともできない、としています(p.55)。省力化投資補助金でも、採択後の交付申請で経費が改めて審査され、補助対象経費が減ることがあります(公募要領 p.3・p.38)。消費税も補助金の対象外です(省力化投資補助金の公募要領 p.23、新事業進出・ものづくり補助金の公募要領 p.33)。資金の計画は、補助金が減った場合と、消費税の分まで含めて組みます。

公式の決まり②:金融機関の確認書が要る場合と様式

金融機関から借りて補助事業を行うときは、申請のときに「金融機関の確認書」を出します。金融機関が事業計画を見て、目標の達成が見込まれると確認したことを示す書類です。要る場合と様式は、補助金ごとに少しずつ違います。

省力化投資補助金(一般型)

新事業進出・ものづくり補助金

新事業進出・ものづくり補助金では、申請のときに出す「資金調達表」(応募申請画面のインポート用フォーマット)にも、入金までのお金を書きます。表は2つに分かれています。

G社はこの欄に、つなぎ融資を書きました。H社は自己資金です。様式の説明には、消費税などの「公租公課は補助対象外」であることや、複数から調達するなら全ての調達先を書くことも書かれています。

公募を終えた前の補助金(参考)

計画名や金額が変わったときは(資料で確かめられた範囲)

資金の手当ては審査でも見られる

確認書は、出せば終わりの書類ではありません。省力化投資補助金の審査項目には「金融機関等からの十分な資金の調達が見込まれるか」(公募要領 p.30)、新事業進出・ものづくり補助金には「補助事業を適切に遂行できる財務状況が十分に確保されているか。金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか」(公募要領 p.45)があります。どこからいくら用意し、補助金が入るまでどう乗り切るかを、計画書の中で説明できるようにしておきます。

注意:補助金で買う設備などを担保にして借りることは、省力化投資補助金でも新事業進出・ものづくり補助金でも、原則として認められません。認められるのは、補助事業を進めるのに必要な資金を借りる場合だけで、必ず事前に事務局の承認を受けます。担保権が実行された(返せなくなり、担保が処分された)ときは、その設備に係る補助金の額を上限に、お金を納める必要があります(省力化投資補助金の公募要領 p.21・p.39と交付規程 第25条、新事業進出・ものづくり補助金の公募要領 p.58〜59と応募申請ガイド p.93)。新事業進出・ものづくり補助金では、建物などへの根抵当権の設定も認められません。

防ぎ方・進め方:お金の段取りは、この順番で決める

  1. 払う総額を税込で出す:見積の合計に消費税を足した額が、実際に出ていくお金です。補助金は、消費税を除いた補助対象経費から計算します。
  2. 3つに分ける:総額を「補助金」「借入」「自己資金」に分けます。補助金は、交付申請で減る場合も考えておきます。
  3. 補助金の分の立て替え方を決める:つなぎ融資か、自己資金か。G社はつなぎ融資、H社は自己資金でした。
  4. 計画名を固めてから、確認書を頼む:借りるなら、計画書の案を金融機関に見てもらい、確認書をもらいます。確認書の計画名は、申請書と同じにしておきます。
  5. 変更があったら、確認書の中身と見比べる:計画名が変われば、取り直しを頼みます(公式の決まりではなく、当社のすすめです)。金額が変わっただけなら、判断の理由や支援計画など、金融機関が文章で書く欄に金額が書かれていないかを確かめます。
  6. 金融機関向けの資料と申請書を突き合わせる:借りない場合も、金融機関向けの資料があれば、事業の説明・税込と税抜・売上の見込みがそろっているかを見ます(H社)。
  7. 資金繰りの表で、いちばん苦しい月を確かめる:作り方は次のとおりです。

資金繰りの表の作り方(G社・H社の表から)

G社・H社は、どちらも月ごとにお金の出入りと残高を計算しています(H社の別添資料には、3か月ごとにまとめた表が載っています)。H社の表の行に、借入を使う場合の行を足すと、次のようになります。

行入れるもの
本業の収支利益+減価償却費
設備などの支払い税込の額
借入・つなぎ融資借りた額・返す額
補助金の入金入金を見込む月に
その他税金・今の借入の返済
月末の残高前の月+上の合計

減価償却費は、お金が出ていかない費用なので、利益に足し戻します。H社は借入をしないので、3行目がない形です。表ができたら、次の4つを確かめます。

チェックリスト:申請の前に、お金の段取りを確かめる

まとめ

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