新事業進出補助金は第4回で終了、新制度「新事業進出枠」へ

2025年に事業再構築補助金の後継として始まった「中小企業新事業進出補助金」(以下、新事業進出補助金)は、第4回公募(2026年6月19日締切)をもって、現行制度としての募集を終了しました。

2026年度からは、ものづくり補助金と統合した新しい制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」がスタートします。新事業進出補助金の役割は、この新制度の中の「新事業進出枠」に引き継がれます。

「申請を検討していたのに間に合わなかった」「第3回・第4回に申請したが、この先どうすればいいのか」という経営者の方に向けて、旧制度と新制度の違いを「変わらない点」「変わった点」に分けて整理します。

この記事で分かること
・新事業進出補助金 第3回の採択結果と、第4回(最終回)の今後の予定
・旧制度(第4回時点)と新制度「新事業進出枠」の違い(早見の比較表)
・第4回で先行導入された賃上げ要件+3.5%・補助率2/3特例と、新制度で変わった点の詳細
・新制度・第1回公募(2026年9月30日締切)のスケジュールと準備のポイント

直近の動き:第3回採択結果が2026年7月1日に発表

2026年7月1日、新事業進出補助金の第3回公募の採択結果が発表されました。応募1,212者に対して採択は423者、採択率は約34.9%です。第2回の約35.4%(応募2,350者・採択832者)とほぼ同じ水準で、おおむね3社に1社が採択されるという難易度が続いています。

公募回 応募数 採択数 採択率
第2回 2,350者 832者 約35.4%
第3回 1,212者 423者 約34.9%

そして、2026年6月19日に締め切られた第4回公募が、現行制度としての最終回です。採択発表は2026年9月頃の予定で、以降の受け皿は新制度に移ります。

結論:制度の骨格はほぼそのまま「新事業進出枠」に引き継がれた

先に結論からお伝えすると、補助金額・対象・要件とも、最終回(第4回)の内容がほぼそのまま新制度に引き継がれています。注意したいのは、賃上げ要件の強化(+3.5%への一本化)と補助率2/3の特例が「新制度から」ではなく第4回公募の時点で先行導入されていたことです。主な違いを表にまとめます。

項目 旧:新事業進出補助金 新:新事業進出枠
制度の位置づけ 単独の補助金 「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の3つの枠の1つ
補助上限 2,500万〜7,000万円
(賃上げ特例 3,000万〜9,000万円)
変わらず
補助下限 750万円 変わらず
補助率 1/2(第4回から、最低賃金引上げ特例の該当者は2/3) 変わらず(1/2、特例該当者は2/3)
付加価値額要件 年平均+4.0%以上 変わらず
賃上げ要件 1人当たり給与支給総額 年平均+3.5%以上(第4回から。第3回までは選択式で実質+2.5%等) 変わらず(年平均+3.5%以上)
最低賃金要件 地域別最低賃金+30円(毎年) 変わらず
補助対象経費 機械装置・建物費・広告宣伝費など(原材料費は対象外) 原材料費が追加

※「旧制度」の内容は最終回(第4回公募・2026年6月19日締切)時点のものです。賃上げ要件と補助率の特例は第4回で変更・導入されたため、第3回以前に検討していた方は特にご注意ください。

変わらない点:補助上限・下限と付加価値額要件はそのまま

補助金額は最大7,000万円(特例で最大9,000万円)を維持

新事業進出枠の補助上限は、旧制度と同じく従業員規模に応じて2,500万〜7,000万円、賃上げ特例を使う場合は3,000万〜9,000万円です。補助下限も750万円のままで、一定規模以上の投資が対象という性格は変わりません。

従業員数 補助上限 賃上げ特例適用時
20人以下 2,500万円 3,000万円
21〜50人 4,000万円 5,000万円
51〜100人 5,500万円 7,000万円
101人以上 7,000万円 9,000万円

※賃上げ特例は、1人当たり給与支給総額を年平均+6.0%以上(基本要件の+3.5%に+2.5%上乗せ)、かつ社内の最も低い賃金を地域別最低賃金+50円以上とする、より高い賃上げに取り組む場合に補助上限が引き上がる仕組みです。達成できなかった場合は引き上げ分の返還規定があります。

付加価値額要件も年平均+4.0%以上のまま

補助事業終了後3〜5年で、付加価値額(会社が生み出した利益や人件費などの合計)を年平均+4.0%以上成長させるという要件も、旧制度と同水準です。旧制度で事業計画を作り込んでいた方は、その計画の骨子を新制度でも活かせます。

賃上げ要件と補助率の特例は「第4回」の内容をそのまま引き継ぎ

賃上げ要件と補助率については、実は最終回である第4回公募(2026年3月公募要領公開)の時点で先行して変更されており、新制度はその内容をほぼそのまま引き継いでいます。第3回以前に検討していた方は、ここが「昔の感覚と違う」ポイントになるため、順を追って整理します。

賃上げ要件は「1人当たり 年平均+3.5%以上」(第4回から強化済み)

第3回公募までは、1人当たり給与支給総額(従業員1人当たりに支払う給与の合計)の伸びについて「地域別最低賃金の直近5年平均成長率以上」または「給与支給総額で年平均+2.5%以上」のどちらかを満たせば良い選択式でした。

これが第4回公募で「1人当たり給与支給総額の年平均成長率+3.5%以上」に一本化・強化され、新制度の新事業進出枠も同じ+3.5%を求めます。第3回以前の「+2.5%」を前提に人件費計画を立てていた会社にとっては、賃上げのハードルが上がったままになっていることに注意が必要です。

賃上げは一度実施すると簡単には引き下げられません。補助金で行う新事業がその原資を生み出せるのか、収益計画とセットで慎重に設計する必要があります。

未達の場合は返還規定があります
賃上げ要件(年平均+3.5%以上)を達成できなかった場合、未達成の程度に応じた補助金の返還規定があります(成長率がゼロ以下の場合は全額返還)。また、毎年、社内で最も低い賃金を地域別最低賃金+30円以上とする最低賃金要件(旧制度と同じ)にも返還規定があります。実現可能な賃上げ計画かどうか、申請前に必ず検証しましょう。

補助率は1/2、「地域別最低賃金引上げ特例」の該当者は2/3(第4回で導入済み)

補助率(投資額のうち補助金でまかなえる割合)は、第3回公募までは一律1/2でしたが、第4回公募で「地域別最低賃金引上げ特例」が新設され、該当する事業者は2/3に引き上げられるようになりました。新制度の新事業進出枠もこの特例を引き継いでいます。

この特例は、最低賃金の引き上げの影響を強く受ける事業者(目安として、2024年10月〜2025年9月の間に、地域別最低賃金に近い水準で雇用している従業員が全体の30%以上を占める月が3か月以上ある事業者)が対象です。該当すれば同じ投資でも自己負担が大きく軽くなります。適用条件の詳細は、公式サイト(中小機構)で最新の公募要領をご確認ください。

変わった点①:1つの制度に統合され、枠の使い分けがしやすく

新制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」には、新事業進出枠のほかに革新的新製品・サービス枠(旧ものづくり補助金に相当)グローバル枠があり、合計3つの枠から選んで申請します。

申請枠 対象となる取り組み 補助上限(特例適用時)
革新的新製品・サービス枠 革新的な新製品・新サービスの開発 750万〜2,500万円
(850万〜3,500万円)
新事業進出枠 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出 2,500万〜7,000万円
(3,000万〜9,000万円)
グローバル枠 海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化など 最大7,000万円
(最大9,000万円)

※補助下限は革新的新製品・サービス枠が100万円、新事業進出枠・グローバル枠が750万円です。補助率はグローバル枠のみ中小企業2/3です。

これまでは、ものづくり補助金と新事業進出補助金という別々の制度を比べて選ぶ必要がありました。統合後は同じ制度の中で自社の計画に合った枠を選べるため、「新製品開発が主眼なら革新的新製品・サービス枠」「海外輸出を目指すならグローバル枠」という使い分けがしやすくなっています。枠選びの考え方は「どの枠で申請すべき?3つの申請枠の選び方」で詳しく解説しています。

変わった点②:補助対象経費に「原材料費」が追加

旧制度の補助対象経費は、機械装置・システム構築費、建物費、広告宣伝・販売促進費などでしたが、原材料費は対象外でした。新制度の新事業進出枠では、これらに加えて原材料費(試作品の開発などに必要な原材料の購入費)が補助対象に追加されています。

新事業で扱う製品の試作を重ねながら市場投入を目指す計画では、使い勝手が良くなった変更点です。対象になる経費の細かい条件は公募要領でご確認ください。

変わった点③:基本要件に「子育て等の職場環境整備」が追加

新制度では、旧制度にあった要件(付加価値額・賃上げ・最低賃金・一般事業主行動計画の公表・金融機関の確認)に加えて、「子育て等に関する職場環境整備」の取り組みが基本要件に追加されました。次のいずれか1つに取り組み、その内容を事業計画に記載する必要があります。

なお、「くるみん認定」(プラチナくるみん・トライくるみん含む)を取得している会社は、この要件が免除されます。

新制度・第1回公募のスケジュール

新制度・第1回公募の締切は2026年9月30日(水)18:00です。

項目 日程
公募要領公開(公募開始) 2026年6月29日(月)
申請受付開始 2026年8月31日(月)
応募締切 2026年9月30日(水)18:00(厳守)
採択発表 2026年12月頃(予定)
交付申請 採択発表日から原則2か月以内
事業実施期間 交付決定日から14か月以内(新事業進出枠)

審査は書類審査に加えて、該当者のみ口頭審査(面接形式の審査)が行われます。また、申請にはGビズIDプライム(国の電子申請に使う共通ID)のアカウントが必要です。取得に時間がかかるため、お持ちでない方は早めの準備をおすすめします。

なお、第2回公募の予定は現時点で発表されていません。当面の申請機会は第1回のみと考えて、逆算で準備を進めるのが安全です。

第3回・第4回で申請済み・採択済みの方への影響

採択済み・申請中の案件は、旧制度のルールのまま継続

旧制度で採択済みの案件や、第4回で申請中(結果待ち)の案件は、旧制度のルールのまま継続します。賃上げ要件などが後から新基準に変わることはありません。交付申請や実績報告など、旧制度の手続きをそのまま進めてください。

第3回で不採択だった方:新制度・第1回での再挑戦を検討

第3回で不採択だった方は、新制度の第1回公募(2026年9月30日締切)での再挑戦を検討できます。補助金額や付加価値額要件は旧制度とほぼ同じなので、作成済みの事業計画は土台として活かせます。ただし、賃上げ要件が+3.5%に強化されているため、人件費計画と収益計画の見直しは必須です。

第4回の結果待ちの方:発表時期と第1回締切がほぼ重なる点に注意

第4回の採択発表は2026年9月頃(予定)、新制度第1回の締切は2026年9月30日です。
発表と締切がほぼ同時期のため、第4回の結果を見てから第1回に申請するのは日程的に困難です。第2回公募の予定も未発表のため、万一に備えた今後の選択肢を早めに整理しておくことをおすすめします。

まとめ

※ 本記事は2026年7月10日時点の公式公表情報に基づいています。申請前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。

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