省力化投資補助金(一般型)では、設備を入れることで業務量がどれだけ減るかを、「省力化指数」という数字で示します。様式の計算シートに工程と時間を入れると自動で計算されるため、一見かんたんです。ところが、どの作業を入れるか、どう数えるかで、指数は大きく変わります。
この記事では、当社が支援して採択された3社(建設1社・食品2社)の計算を並べ、業種によって時間の数え方がどう違ったかと、計算シートでよくある間違い、その防ぎ方を整理します。
この記事で分かること
- 省力化指数と「全体で何%減るか」の違い
- 建設と食品で、時間の数え方がどう違ったか
- 計算シートでよくある6つの間違いと、その防ぎ方
- 提出前に使えるチェックリスト
3社の計算を並べてみる
まず、3社の計算の結果を並べます。C社は、土木会社のICT建機の事例で紹介した会社です。D社は惣菜やデザートをつくる食品メーカー、E社は業務用の肉を加工して卸す会社です。3社とも、省力化投資補助金(一般型)で採択されました。
| 項目 | C社 | D社 | E社 |
|---|---|---|---|
| 業種 | 建設 | 食品製造 | 食品卸 |
| 単位 | 1区画 | 1日 | 1日 |
| 人数 | 掛けない | 人時 | 人時 |
| 導入前 | 8時間 | 46時間 | 41.5時間 |
| 導入後 | 4時間 | 約24時間 | 約19時間 |
| 削減率 | 50% | 約47% | 約55% |
| 減る時間 | 5時間 | 約22時間 | 約23時間 |
| 増える時間 | 1時間 | 0.5時間 | 0.75時間 |
| 指数 | 0.80 | 0.98 | 0.97 |
表の言葉の意味は、次のとおりです。
- 単位:C社は「10メートル四方の区画を1日で施工する場合」、D社・E社は「1日あたり」で数えています。
- 人数:C社は工程ごとの時間をそのまま足しています(人数は掛けていません)。D社・E社は、工程ごとに、かかわる人の作業時間を合計した「人時(にんじ)」で数えています。人時とは、たとえば2人で30分かかる作業を60分と数える方法です。
- 削減率:導入前の合計時間に対して、全体で何%減るかを表します。
- 減る時間・増える時間:計算シートの「設備導入により削減される業務に要していた時間」と「設備導入後に発生する業務に要する時間」です。
指数と「全体の削減率」は別の数字
表を見ると、全体の削減率は3社とも5割前後なのに、指数は0.80から0.98までばらついています。公式の資料は、省力化指数を「補助事業者の業務領域・導入環境において、当該事業計画により業務量が削減される割合」と説明しています(よくある質問 p.5 No.2、公募要領 第8回 p.12)。計算は「(減る時間−増える時間)÷減る時間」で、C社なら(5時間−1時間)÷5時間=0.80です。
ただし、式の分母は「減る時間」で、導入前の全部の作業時間ではありません。そのため、全体の削減率とは別の数字になります。D社の計画書でも、省力化指数の0.98と、人手の時間の約47%削減という2つの数字が並んでいます。どちらも正しい数字ですが、意味が違います。計画書では、2つの名前を分けて書きましょう。
なお、導入の前後で内容も時間も変わらない作業は、計算シートで「内容は変化しない作業」を選び、導入前の工程の番号で対応づければ、計算に入りません。対応づけを忘れると、その作業の時間が「減る時間」と「増える時間」の両方にまるごと入り、指数が下がります。
省力化指数の公式の決まり
ここで、公募要領と応募申請の手引きに書かれている決まりを確認しておきます。最新の第8回の資料で確かめ、以前の回の資料とも見比べました。
計算式
省力化指数=(設備導入により削減される業務に要していた時間−設備導入後に発生する業務に要する時間)÷設備導入により削減される業務に要していた時間です(公募要領 第8回 p.7)。
「削減される業務に要していた時間」には、今ある業務で減る時間を入れるのが基本です。新たに出店する場合は、新しい業務の流れで将来生じる人手の削減時間も入れられます(同)。新しい事業で申請する場合は、設備を入れずに事業を行う場合の見込みを導入前に、入れて行う場合の見込みを導入後に入れるよう、よくある質問(第5回〜第8回)で回答されています(p.10)。
計算シートの入れ方
- 計算は、事業計画書(その3)の(別紙1)省力化計算シートで行います。(別紙1)に入れた工程は、(別紙2)の業務プロセス図に自動で表示されます(応募申請の手引き 第8回 p.58〜59)。
- 導入前と導入後の「1日あたりの人手による作業時間」を、工程ごとに分で入れます。機械・装置などの設備が自動で行う工程・作業は書きません(同)。
- 導入後の作業ごとに、「新たに追加される作業」か「内容は変化しない作業」かを選びます。変化しない作業には、対応する導入前の工程の番号を入れます。
- 変化しない作業として対応づけた工程は、時間の差だけが計算に入ります。時間が同じなら計算に入らず、減った分は「減る時間」に、増えた分は「増える時間」に入ります(様式の計算式で確認)。
- 毎日は行わない作業は、稼働日に毎日行うと仮定し、日割りした時間を入れます(よくある質問 第5回〜第8回 p.10)。
- 減る時間から増える時間を引いた「削減工数」は、(別紙3)の投資回収期間の計算に自動で入ります(応募申請の手引き 第8回 p.59)。ただし、(別紙3)で「新規事業の事業計画」にチェックを入れた場合、削減工数は0とみなされます(様式の表示)。
審査での見られ方
審査(技術面)では、「省力化指数が高い取組であることが示されており、その記載内容や算出根拠が妥当なものとなっているか」が見られます(公募要領 第8回 p.30)。算出根拠とは、数字をどう出したかの説明のことです。様式にも「『(別紙2)省力化業務プロセス図』も作成し省力化指数の詳細を説明してください」とあり、事業計画書作成の参考ガイドにも「省力化指数が、詳細な根拠とともに計算されていますか?」という確認の項目があります(p.2)。
目安の値はある?
一般型の公募要領、応募申請の手引き、よくある質問には、「指数がいくつ以上ならよい」という数字は見当たりません。なお、中小企業庁の「中小企業省力化投資補助事業に関する指針」では、カタログ注文型に製品を登録するときの要件を「原則として省力化指数が20%以上」としています。これは製品を登録するときの基準で、一般型の採択の基準ではありません。
回による違い
計算式、計算シートの説明、審査の観点は、見比べた以前の回の資料と第8回とで同じでした。ただし、様式は回ごとに、また同じ回の途中でも更新されることがあります。第8回の(その3)も、公開されたあとに(別紙3)の説明書きが増えています(計算式は同じです)。第8回の手引きでは、第7回以前の(その3)の様式は(別紙4)がないため使えないとしています(p.56)。申請する回の様式と手引きで確かめ、提出前に公式サイトから様式の最新版を取り直してください。
よくある間違い6つと、業種による違い
間違い1:指数と全体の削減率を同じものとして書く
先ほどのとおり、指数と全体の削減率は別の数字です。全体の削減率を「省力化指数」と書いてしまうと、読む人が計算シートの数字と照らし合わせられなくなります。計画書の本文・図・計算シートで、同じ名前に同じ数字が入っているかを確かめましょう。
間違い2:変わらない作業の時間まで減らしてしまう
計算シートでは、「内容は変化しない作業」として対応づけた工程の時間を少しでも減らすと、その分が「減る時間」に入ります。設備とかかわりのない工程の時間まで減らすと、算出根拠を説明できなくなります。3社は次のように扱っていました。
- C社(建設):重機で掘る・盛る・整える作業(掘削・盛土・整形、120分)と、手直し・再掘削(60分)は、導入後も同じ時間で数えています。
- D社(食品製造):原料の受け入れ・解凍(150分)、盛り付け(240分)、保管・出荷(150分)は、導入の前後で同じ時間です。
- E社(食品卸):原材料の受け入れ・確認(180分)は同じ時間です。計量・小分けは240分から144分に減らしていますが、自動のスライサーで厚みがそろい、後の工程の手直しや計量のやり直しが減ることを、計画書に理由として書いています。
やり直し(手直し・再作業)の扱いは、3社で分かれました。C社は手直しの時間を減らしていません。D社は充填(容器に中身を詰める作業)の不良の手直し(90分)を、E社は袋の詰め直し・再真空(120分)を、導入後はなくなる作業としています。E社の場合は、大きな肉の塊を分けずに真空包装できる機械を入れるので、分けて詰め直す作業そのものがなくなる、という理由です。
防ぎ方:時間を減らす工程ごとに、「どの設備で、なぜ減るのか」を1行で説明できるか確かめます。やり直しをなくす場合は、その原因が設備でなくなる理由を書きます。説明できない短縮は入れません。
間違い3:新しく増える作業を入れ忘れる
設備を入れると、それを動かすための人の作業が新しく生まれます。新しく増える作業をすべて入れ忘れ、時間が増えた工程もなければ、「増える時間」はゼロになり、指数は1.00になります。一方で、設備が自動で動いている時間は、人の作業として入れません。
応募申請の手引きの記入例(券売機と清掃ロボットを入れる例)では、清掃ロボットが自動で掃除する150分は数えず、ロボットの動作設定(5分)、自動清掃の確認・立ち会い(5分)、機器のフロア移動(15分)、機器の回収・確認(3分)を、新しく増える作業として入れています(第8回 p.58)。
3社が入れた「新しく増える作業」は、業種によって中身が違いました。
- C社(建設):3Dデータの取り込みと、現場の座標合わせ(データ上の位置と現場の位置を合わせる作業)で60分。機械を動かす前の、データの準備です。
- D社(食品製造):充填機の洗浄・組み付け(20分)と、充填量の調整(レシピの校正)・重さの抜き取り確認(10分)。衛生と量の正確さを保つための作業です。
- E社(食品卸):スライサーの段取り・刃の交換・毎日の清掃(45分)。
どこまでが機械の仕事かも、設備によって違います。C社が入れる重機は、運転席の画面で仕上がりの位置を案内するしくみを備えていますが、操作するのは運転手です。そのため、C社は掘削・盛土・整形の120分を、導入後も人の作業として数えています。
防ぎ方:機械の前後で人がすること(準備、セット、立ち会い、取り出し、洗浄・清掃、刃や部品の交換、データの入力など)を書き出し、1日あたりの時間を入れます。機械が動いている間に人がそばを離れられるかも、現場で確かめておきましょう。
間違い4:作業の分け方を決めずに入れる
計算シートでは、同じ時間の変化でも、作業の分け方しだいで指数が変わります。たとえば、手作業で60分かかっていた作業が、機械を使って20分になるとします。
- 「同じ作業で40分減った」と入れる場合:減る時間40分、増える時間0分で、指数は1.00
- 「60分の作業がなくなり、機械を使う20分の作業が増えた」と入れる場合:減る時間60分、増える時間20分で、指数は約0.67
どちらでも、正味で減る時間(40分)は変わりません。投資回収期間に使う削減工数も同じです。違うのは指数で、前者のほうが高く出ます。
どちらで入れるかの手がかりになるのは、様式の選択肢の名前と、手引きの記入例です。選択肢は「新たに追加される作業」と「内容は変化しない作業」の2つだけで、「やり方が変わった作業」という選択肢はありません。手引きの記入例では、やり方が変わる作業について、元の作業を「削減される作業」(なくなる作業)、導入後の作業を「新たに追加される作業」として扱っています。上の例でいえば、後者の入れ方です。
たとえば、手作業の「注文受付(50分)」はなくなる作業で、導入後は券売機による自動作業です。「売上集計・回収(25分)」もなくなる作業で、券売機を入れたあとの「売上集計(1分)」は新しく増える作業です。掃除のときの「フロア移動(5分)」と、ロボットの「機器フロア移動(15分)」も、別の作業として扱っています。導入前の工程のうち、導入の前後で同様の作業としているのは、時間も変わらない「ごみ捨て(5分)」と「調理(500分)」だけです。
この記事の3社でも、分け方は同じではありません。C社は、なくなる作業(測量、丁張り=地面に完成形の目印をつける作業、検測など)と、新しく増える作業(データの取り込み・座標合わせ)を分けて入れています。D社・E社は、計画で機械を使う工程(充填、大割=大きな塊を切り分ける作業、スライスなど)も導入前と同じ工程として対応づけ、減る時間を数えています。そのうえで、計画書の図に「導入前後で共通の工程」「導入前だけの工程」「導入後だけの工程」の区分を示しています。
防ぎ方:どこまでを「内容は変化しない作業」とするかの細かな決まりは、公募要領・手引き・よくある質問には見当たりません。公式の手がかりは、上で見た選択肢の名前と記入例です。分け方の考え方を決めて、すべての工程に同じように当てはめ、算出根拠や図で説明しましょう。機械に置き換わる工程を「内容は変化しない作業」として対応づける場合は、そう扱った理由も算出根拠に書きます。審査する人が、指数の出どころを追えるようにすることが大切です。
間違い5:人数の数え方が、導入の前と後でそろっていない
計算シートには人数を書く欄がありません。公募要領・手引き・よくある質問にも、複数の人で行う作業を人数分で数えるかどうかの決まりは見当たりません。採択された3社でも、C社は工程の時間(人数は掛けない)、D社・E社は人時で数えていました。
気をつけたいのは、導入の前と後で数え方がずれることです。たとえば、導入前は人数分の時間で、導入後は工程の時間で数えると、減る時間が実際より大きく見えてしまいます。
また、人時で数えると、工程の時間で数えるより「減る時間」の時間数は大きくなります。減る時間から増える時間を引いた「削減工数」は、投資回収期間の計算にも使われます。そこで掛ける人件費単価は、よくある質問で「総人件費(事業者全体)÷総労働時間(従業員+役員)」と示されています(第5回〜第8回 p.10)。どちらで数えたかによって、減る時間が「1人分の時間」なのか「かかわる人全員の時間」なのかが変わります。
防ぎ方:①工程の時間で数えるか、人時で数えるかを決める、②導入の前と後で同じ数え方にする、③どう数えたかを算出根拠に書く、の3つです。人時で数える場合は、その合計が、実際に働いている人の1日の労働時間と比べて無理がないかも見ておきます。どちらで数えるか迷ったら、申請する回の手引きや事務局(コールセンター)で確かめましょう。
間違い6:「1日」の基準がそろっていない
計算シートは「1日あたり」で入れますが、1日の仕事の量は業種によって違います。3社は次のように決めていました。
- C社(建設):「10メートル四方の区画を1日で施工する場合」という単位を決めて数えました。年間の稼働日数は250日です。
- D社(食品製造):繁忙期には人を増やして対応しており、日によってつくる量が変わります。計算シートは1日あたりの時間で入れ、年間の稼働日数は365日としています。
- E社(食品卸):1日あたりの時間で入れ、年間の稼働日数は250日としています。
年間の稼働日数は、様式の(別紙3)で投資回収期間を計算するときに、1日あたりの削減工数に掛ける日数です。様式の説明書きには、「直近の実績値を基に入力」とあります。事業を行う場所が複数あり、稼働日数が違う場合は、計算シートで基準にした事業所の日数を入れるよう説明があります。一方、よくある質問は、事業を行う場所が複数あるときについて「当該事業としての全体の年間稼働日数を入力」と答えています(p.10 No.18)。言い方が違うので、拠点が複数あって迷うときは、事務局に確かめましょう。
先ほどの中小企業庁の指針では、省力化を「従前と同等またはそれ以上の付加価値を算出するために投入する労働量を減少させること」と定義しています。C社の「10メートル四方の区画を1日で施工する場合」のように、導入の前と後で同じ量の仕事を前提にすると、比べやすくなります。
防ぎ方:どんな日を「1日」とするか(平均的な日か、どの品目をどれだけつくる日か)を決め、算出根拠に書きます。毎日は行わない作業は日割りし、年間の稼働日数は実際の稼働に合わせます。様式の説明どおり、直近の実績値を基に入れましょう。
提出前のチェックリスト
- 「1日」の基準(区画、つくる量、品目など)を決め、算出根拠に書いた
- 毎日は行わない作業を日割りし、年間の稼働日数は直近の実績を基に入れた
- 設備が自動で動く時間は入れず、人がかかわる時間だけを入れた
- 導入後に新しく増える作業(準備・セット・立ち会い・洗浄・刃の交換・データの準備など)を入れた
- 変わらない作業は同じ時間のまま、「内容は変化しない作業」を選んで導入前の工程の番号で対応づけた
- 時間を減らした工程や、なくしたやり直しの作業には、設備でそうなる理由を書いた
- 作業の分け方の考え方を決め、全工程に同じように当てはめた(機械に置き換わる工程を変化しない作業とするなら、その理由も書いた)
- 人数の数え方(工程の時間か、人時か)を導入の前後でそろえ、算出根拠に書いた
- 指数と全体の削減率を書き分け、本文・図・計算シートの数字が一致している
- 公式サイトから取り直した最新版の様式と、申請する回の応募申請の手引きで、入れ方を確かめた
まとめ
省力化指数は、計算シートに工程と時間を入れれば自動で出てくる数字です。しかし、「何を1日とするか」「どの作業を入れるか」「作業をどう分けるか」「人数をどう数えるか」で、結果は大きく変わります。採択された3社でも、建設のC社は区画を単位に工程の時間で、食品のD社・E社は1日あたりの人時で数えるなど、数え方は業種や会社によって違いました。
公式の資料で細かく決まっていない部分は、自社の現場に合った数え方を決め、導入の前後でそろえ、算出根拠として説明できるようにしておくことが大切です。審査で見られるのも、指数の高さとあわせて、その記載内容や算出根拠が妥当かどうかです。