補助金は、原則として事業が終わってから受け取る「後払い」です。受け取る前に、何にいくら使ったかを証拠の書類とともに出す「実績報告」があります。書類に不足や食い違いがあると、事務局から差し戻し(出し直しの依頼)が届きます。

当社が支援した事業再構築補助金の3社も、それぞれ差し戻しを受けました。3社とも書類を直して出し直し、最後は、実績報告の審査で減らされることなく、交付決定の額のまま補助金の額が確定しました(D社は、報告の前に計画変更の手続きをして、少し下がったあとの額)。ただ、報告から確定までに2か月半〜4か月ほどかかっています。

この記事では、3社が実際に受けた指摘と直し方を、「写真」「証拠書類」「振込」「保険」「様式」の順に紹介します。今の補助金(新事業進出補助金・ものづくり補助金・省力化投資補助金)でも同じ注意が要る点は、公式資料で確かめて書き添えます。なお、新事業進出補助金とものづくり補助金の新しい受付は、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に移っています(両方の公式サイトの案内)。

※当社が実際に支援した事例をもとにしています。会社が特定されないよう、業種・地域・金額などの一部をぼかしています。
この記事で分かること

この記事で取り上げる事例

事例主な経費確定まで
D社(飲食店)店舗の工事・研修・チラシ約2か月半
E社(軽作業の受託)改装工事・フォークリフト・研修・チラシ約3か月半
F社(子ども向けの福祉)改装工事・器具・研修・チラシ約4か月

「確定まで」は、実績報告を出してから補助金の額が確定するまでの期間です。D社はテイクアウトが中心の新しい店を出し、E社は本社の隣の建物を事務所兼倉庫に、F社は借りた建物を子ども向けの福祉サービスの事業所に改装しました。E社は工事を10件あまりに分けて発注したため、書類の数も多くなりました。

差し戻しの届き方と出し直し

D社には、事務局から「追加提出書類」と「内容の修正」に分けた不備の一覧が届きました。追加が4点、修正が6点です。F社では、事務局の担当者から先に大きな点だけ案内があり、電話で詳しい説明を受けたあと、電子申請の仕組み(Jグランツ)で差し戻しの内容が届きました。

直した書類は、Jグランツで出し直します。事業再構築補助金の最新の「実績報告書等作成マニュアル」(令和7年12月 第10版。以下「最新のマニュアル」)では、出し直すときは不備のあった書類に加えて、報告書の様式の3つのファイル(「様式第6の別紙1及び別紙4」「様式第6の別紙2及び別紙3」「様式第7」)を、不備がなくても必ず付けるよう求めています。

写真とラベル:名前と番号を書類にそろえる

この事例では:物件名は納品書の名前、ラベルは読めるアップで

D社は、写真を貼る台紙(参考様式17)について、次の指摘を受けました。

D社は名前を納品書どおりに直し、ラベルのアップ写真を足して出し直しました。最後の出し直しでは、台紙をエクセルのまま出さず、経費の番号ごとのPDFに分けています。

当社では、ラベルの版下を作ってお客様に印刷・貼り付けをお願いし、「対象物の全体の写真」と「ラベルのアップ写真」の2種類を送ってもらっています。内装工事のように範囲が広いものは、全部に貼るのは現実的ではないので、代表的な部屋など数か所に貼ってもらいました。F社でも、部屋ごと・器具ごとに、この2種類の写真を用意してもらいました。

公式の決まり

工事前の写真は、着工してからでは撮れません。建物の工事では、新事業進出補助金は工事前の写真が必ず要り、事業再構築補助金でも求められることがあるので、着工の前に撮っておきましょう。

証拠書類:「足りない」と「食い違い」をなくす

この事例では:検収書・修了証・請求書が足りなかった

D社は、次の書類の追加や出し直しを求められました。

E社は、最初の報告から研修ごとの修了証を付けていて、研修費の差し戻しはありませんでした。最新のマニュアルでも、研修費の書類に「研修終了が確認できる書類(受講確認書、終了証、参加証明書等)」が入っています。

この事例では:見積書とのずれは「理由書」で説明した

見積書と、納品書・請求書の中身が違う点は、理由書(違いの中身と理由を説明する書面)で説明しました。

E社の理由書は、事務局の指示どおり「①何を変えたか ②なぜ変えたか ③事業計画への影響」の3つで書きました。最新のマニュアルにも、マニュアルや手引きにない書類でも、事務局が個別に提出を求めることがあると書かれています。

この事例では:納品書に「納品場所」がなかった

E社は、ほとんどの工事の納品書に納品場所が書かれておらず、理由書を求められました。会社側で納品書のひな形を作って工事会社に渡したとき、納品場所の欄を入れ忘れていたのが原因です。理由書を出し、各納品書に納品場所を書き足して出し直しました。同じE社では、手書きの検収日の年が納品書の日付と合わない書類もあり、誤記なら正しい日付を書いた理由書を出すよう求められました。

最新のマニュアルでは、納品場所(都道府県も含めて)を納品書などで確かめ、書かれていなければ補記したもので審査するとしています。新事業進出補助金の補助事業の手引きでも、納品書などに納品場所が書かれている必要があります。

この事例では:工事は「請負契約」の書類と印紙を求められた

F社は、借りた建物の内装工事を、注文書と注文請書(注文を受けたという書面)だけで発注していました。事務局からは、建設業法に沿った請負契約の書類を出すこと、印紙が貼られているかも確かめることを求められました。F社は工事会社に、収入印紙を貼った請書と工事請負契約約款(契約の細かな条件)をそろえてもらい、注文書と合わせて出し直しました。

最新のマニュアルでは、建物費は「工事請負契約書、または注文書・注文請書のセット」とし、収入印紙の確認を求めています。機械でも、電気工事や設置工事を伴うときは工事請負契約書が必須です。新事業進出補助金は「工事請負契約書、または注文書・注文請書・契約約款のセット」で、印紙の確認も求めています(補助事業の手引き)。

この事例では:チラシは「配った証拠」を求められた

事業再構築補助金でも新事業進出補助金でも、チラシなどの配布物は受払簿を出し、事業の期間内に実際に使った数の分だけが補助の対象です(最新のマニュアル、新事業進出補助金の補助事業の手引き)。チラシそのものにも、補助金で作ったことが分かる表示を入れます。事業再構築補助金は「事業再構築補助金により作成」など(最新のマニュアル、補助事業の手引き)、新事業進出補助金は「新事業進出管理No.」です(実績報告ガイド)。

振込:支払いの証拠をたどれる形で残す

この事例では:通帳は「出金のページ」と「口座が分かるページ」

D社は通帳のコピーについて、支払いの記録のページに加えて、表紙か裏の「金融機関名・支店名・種別・口座番号」が分かるページを出すよう求められました。研修費の支払いの証拠も、振込額と振込先の口座が分かるものに出し直しています(ネット銀行なら、取引の記録の画面のコピー)。

この事例では:ATMで振り込み、振込金受領書がなかった

F社は、工事代金と研修費をATMで振り込んでいて、銀行の振込金受領書がありませんでした。事務局からは取引先の領収書を求められ、2社から、振り込んだ日と金額が分かる領収書を出してもらいました。あわせて理由書で、ATMで振り込んだので受領書がないこと、通帳のとおり銀行を通して振り込んだこと、振込手数料は自社で負担したことを説明しました。

今の補助金の資料では、ATMを使うときも、自社名義の口座から相手の口座へ振り込むことが条件で、現金での振込は認められません。そのうえで、ATMの明細と、通帳の表紙・取引のページのコピーを組み合わせて出す形が示されています(新事業進出補助金の実績報告ガイド、省力化投資補助金(一般型)の実績報告の手引き)。ものづくり補助金のマニュアルも、ATMの利用明細などは再発行に手間がかかるので無くさないよう注意しています。ATMの明細は、振り込んだその日に保管しましょう。

この事例では:別の支払いとまとめて振り込んでいた

D社は、研修費を補助の対象外の費用とまとめて振り込んでいて、内訳が分かるように書くよう求められました。F社も、器具とチラシの代金を、補助事業と関係のない費用とまとめて1回で振り込んでいました。手数料と手間を減らすためでしたが、理由書で経費ごとの内訳を示し、「振込額+手数料=通帳から出たお金」になることを説明しています。

このようなまとめ払い(混合払い)は、事業再構築補助金の補助事業の手引き(3社の回向けの版にも、第12〜13回向けの版にもあります)と、新事業進出補助金・ものづくり補助金の手引きで「行わないでください」とされています。この事例では内訳を示して認められましたが、本来は避けるべき払い方です。補助の対象の支払いは、ほかの支払いと分けて振り込みましょう。

この事例では:手数料を差し引いた振込と、分割払いの書き方

E社は工事代金を振り込むとき、振込手数料を取引先の負担にして(請求額から手数料を差し引いて)いました。事務局からは、これは実質的な値引きなので、その分を経費から減らすよう指示されました。あわせて、2回に分けて払った工事は、費目別支出明細書(経費ごとの支払いの一覧)で支払日ごとに行を分けるよう求められ、2回目の振込の証拠が抜けていた工事もありました。

E社は支払いごとに行を分け、手数料の分をマイナスの行で差し引きました。取得財産等管理台帳の金額も、手数料を引いたあとの税抜きの額にしています。E社は、補助の対象の経費に補助率を掛けた額が補助金の額を上回っていたため、差し引いても補助金の額は変わりませんでした。余裕がなければ、補助金の額も減ります。

取引先の負担にして差し引いた手数料の分を補助の対象から除くことは、今の新事業進出補助金の実績報告ガイド、ものづくり補助金のマニュアル、省力化投資補助金(一般型)の実績報告の手引きにも書かれています。手数料は自社で負担し、請求額どおりに振り込むのが確実です。

保険:入る義務があるかを先に確かめる

事業再構築補助金の保険の決まりは、公募の回によって違います。3社が申請した回では、補助金の交付申請額が1,000万円を超えると、単価50万円以上の建物・設備を対象に、保険か共済に入る必要がありました。風水害などの自然災害による損害を補償するもので、実績報告を出すときまで入っていることが条件です。付保割合(取得財産等管理台帳に書いた単価に対して、保険でいくらまで補償するかの割合)は、中小企業者等で30%以上です。小規模事業者は、代わりの取組(事業継続計画など)を様式に書くこともできました。

最新のマニュアルでは、会社全体をまとめて対象にした保険でも、補助金で取得したものに保険がかかっていると確認できればよいとしています。証券に「別紙参照」とあれば別紙も出します。第12回以降の回では、補助事業に要する経費が1,000万円を超えると、補助率以上の付保割合での加入が必須になり、入っておく期間も、最低でも事業計画期間(補助事業が終わってから3〜5年の計画の期間)が終わるまでになりました。また、第11回までのように小規模事業者が代わりの取組で済ませる決まりはありません。小規模事業者も、補助事業に要する経費が1,000万円を超えれば加入が必要です(最新のマニュアル、第12〜13回向けの補助事業の手引き)。

今の補助金の決まりは、次のとおりです。どれも、風水害などの自然災害による損害を補償する保険で、事業計画期間が終わるまで入り続けることが求められます(ものづくり補助金は推奨)。

1年ごとの契約なら、事業計画期間が終わるまで更新を続けます(省力化投資補助金の実績報告の手引きにも、必ず更新するよう書かれています)。補助金ごとに決まりが違うので、最新の公募要領で確かめてください。

様式:管理台帳と明細の数字をそろえる

この事例では:取得財産等管理台帳を3社とも直した

管理台帳で選ぶ種類によって耐用年数が決まり、それが処分制限期間になります。この期間は、事務局の承認なしに、目的外に使う・売る・貸す・担保に入れる・捨てるといった「処分」ができません。承認を受けて処分しても、補助金の一部または全部を返すことがあります。最新のマニュアルでは、同じ所在地の建物費は1つの財産にまとめ、取得年月日には検収の日を書くとしています。財産名は証拠の書類に書かれた名前を正としたうえで、建物は工事名ではなく建物の名前で書きます(例:「店舗の改装工事」ではなく「店舗」)。機械は、本体の名称・型番・製造番号を書きます。新事業進出補助金でも取得年月日は検収の日で、処分の制限は、事業計画期間が終わっても法定の耐用年数まで続きます(補助事業の手引き)。

提出前のチェックリスト

3社の指摘と公式資料の決まりから、時期ごとに確かめたい点をまとめました。

振り込む前

書類を集めるとき

報告書を出す前

扱いは、補助金や公募の回、資料の版によって変わることがあります。最新の公募要領・手引き・実績報告の資料で確かめてください。

まとめ

3社の差し戻しの多くは、「書類が足りない」か「書類どうしが合っていない」ことが原因でした。ほかに、振込手数料の扱いや財産の種類の選び方、明細の書き方といった、経費の扱いや様式の書き方の直しもありました。納品場所の欄がないひな形、受領書のないATMの振込、まとめ払い、番号を付けずに出した受払簿のように、支払いや書類集めの段階の小さな抜けが、あとで理由書や出し直しにつながります。

3社とも、指摘に沿って書類を直し、実績報告の審査で減らされることなく補助金が確定しました。ただ、確定までに数か月かかっています。支払いの前と提出の前に、上のチェックリストで確かめておきましょう。

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