補助金で買う設備を発注したら、「今は納期を確定できません」と言われた。補助金は、決められた期間のうちに設備が届き、支払いまで終わらないと受け取れません。期限は近づくのに、いつ届くか分からない。そんなときに使う手続きが「事故等報告」です。
「事故」という名前ですが、けがや事故だけの話ではありません。自社の責任ではない理由で、期限までに事業を終えられない見込みになったときに、事務局へ状況を報告し、指示を受ける手続きです。
この記事では、当社がものづくり補助金で支援したB社の事例をもとに、実際に作った事故等報告書の中身と、作るまでの進め方を紹介します。
B社の事例の全体の流れは、B社の事例紹介の記事にまとめています。この記事は、事故等報告書を作ったところまでの記録をもとにしています。その後の経過(事務局の判断など)は扱っていません。
この記事で分かること
- B社の事故等報告書に、4つの項目で何を書いたか
- 事故等報告の公式の決まり(資料名・ページ付き)と、補助金ごとの違い
- 納期が決まらないと分かった時点からの進め方(確認・代わりの手段・証拠・出す時期)
- 報告書を出す前のチェックリスト
※資料名のあとのページ番号は、ものづくり補助金の交付規程と補助事業の手引きでは、資料に印刷された番号です。そのほかの資料では、PDFのページ番号です(印刷された番号とずれることがあります)。版によってページや内容が変わることもあるので、ご自身の回の最新の資料で確かめてください。
B社で起きたこと:中心の設備の納期が決まらない
B社は、地方で飲食店を複数営む会社です。名物料理を冷凍して販売するため、ものづくり補助金で急速冷凍機などの設備を入れる計画でした。
交付決定(補助金を出すことが正式に決まること)のあと、B社は設備の発注を進めました。中心となる急速冷凍機とプレハブ冷凍庫は、交付決定から数か月後に発注しました。ところが、交付決定を受けた見積書の発注先から「現時点で納期を確定できない」という回答が届きます。
報告書を作った時点の状況は、次のとおりです。
| 設備 | 状況 |
|---|---|
| 真空包装機 | 発注済・納品待ち |
| 器具・容器洗浄機 | 発注済・納品待ち |
| 急速冷凍機 | 発注済・納期未定 |
| プレハブ冷凍庫 | 発注済・納期未定 |
急速冷凍機とプレハブ冷凍庫は、料理を冷やし、凍らせ、保管する工程を受け持ちます。この2つが届かなければ、ほかの設備が届いても、計画どおりの冷凍品づくりはできません。
原因:冷凍機器に使う材料の調達難
原因は、交付決定のあとに起きた、冷凍機器に使う材料の調達難です。報告書では、部材が手に入りにくくなり、業界全体で製造と供給が滞っていると説明しました。
販売店を通じて、ほかのメーカーへの切り替えも打診しましたが、どのメーカーからも納期の約束は得られませんでした(報告書では、業界全体で同じような供給の制約があると説明しています)。
このままでは、補助事業(補助金を使って行う事業)の実施期間のうちに、納品・据付け・支払いを終えられないおそれが高い。そこで、発注先の回答を受けた月のうちに、事故等報告書を作成しました。
実際に作った報告書:4つの項目に書いたこと
B社の報告書は、ものづくり補助金の「様式第4 事故等報告書」で作りました。頭に受付番号・日付・宛先(事務局)・会社の住所と名前を書きます。本文は、交付決定の日付と交付規程の条文を示し、事故等があったことを報告する一文から始めます。その後に、次の4つの項目と添付資料が続きます。
1. 補助事業の進捗状況
設備ごとに、発注したか、届いたか、納期はどうかを書きました(上の表と同じ内容です)。そのうえで、急速冷凍機とプレハブ冷凍庫が届かない限り、ほかの設備が届いても事業の目的を果たせない、という関係を書いています。
ポイント:一部の設備の遅れが、なぜ事業全体の遅れになるのかを、最初に示せます。
2. 事故等の内容と原因
「内容」と「原因」を分けて書きました。
- 内容:中心の2つを発注したところ、発注先から「現時点で納期を確定できない」と回答があったこと。そのため、期間内に納品・据付け・支払いを終えられないおそれが高いこと。ほかのメーカーにも打診したが、納期の約束は得られなかったこと。
- 原因:きっかけの出来事 → 原料の不足 → 冷凍機器の部材の調達難 → 業界全体で製造・供給が停滞、というつながり(出来事の名前は、この記事では伏せています)。自社の責任ではなく、不可抗力によるものであること。
ポイント:「○○の影響で遅れた」と出来事の名前だけを書くのではなく、出来事から自社の設備の遅れまでを、順番につないで説明しています。
3. 事故等に対して採った措置
- 販売店に、納期の見込みを早く示すよう求め続け、生産の再開や出荷の情報を集めていること
- 販売店を通じてほかのメーカーへの切り替えを打診し、どこも納期を約束できないと確かめたこと
ポイント:待っているだけではなく、期間内に終えるために手を打っていることを示せます。
4. 補助事業の遂行と完了の予定
納期の回答は、まだ得られていませんでした。そこで、販売店の見立てをもとに、いつごろまでに設備を確保・据え付けて事業を終えられそうかという見込みを書きました。そのうえで、実施期間の延長を認めてもらい確実に完了させること、状況が変われば速やかに報告することを書いています。
添付した資料
- メーカーが取引先向けに出した、材料の調達が難しくなっていることについての案内
- 国の機関が出した通知
報告書の本文にも、2つの資料の日付・題名・掲載先を書き、メーカーの案内は一部を切り抜いて貼り付けました。読む人は、本文を読みながら根拠をすぐ確かめられます。
公式の決まり:事故等報告とは
ものづくり補助金の決まり
- 報告の義務:自社の責任によらない理由で、予定の期間内に完了できないと見込まれるとき、または事業を進めるのが難しくなったときは、速やかに「様式第4 事故等報告書」を出し、指示を受けます(交付規程 第13条、p.3)。
- 延長の根拠:事故の報告に対して指示を受けた場合に限り、指示を受けた期間までを実施期間にできます(交付規程 第5条、p.1)。報告して指示を受けない限り、期間は延びません。
- 出す時期と方法:大雨・台風などの異常気象による激甚災害(特に被害の大きい災害)の指定、火事、地震など、事業者の責任によらない事由のとき、その状況となった時点で速やかに出します。提出方法は電子メールとされています(補助事業の手引き p.12)。
- 納期の確認:メーカーなどの販売業者に進み具合を確かめ、完了期限を見据えて進めます。支払いや実績報告書を作る時間も考えておきます。期限までに納入が終わらないなどの事情が分かったら、速やかに地域事務局へ連絡します(補助事業の手引き p.3)。
- 「完了」の意味:設備の納品・検収・支払いなど、必要な手続きがすべて終わっていることです(補助事業の手引き p.11)。設備が届いただけでは完了になりません。
- 間に合わないと:実施期限までに実績報告(事業が終わったことの報告)が出ていない場合は、交付決定の取消しになります(補助事業の手引き p.10)。
補助金ごとの違い
同じ手続きは、ほかの補助金にもあります。ただし、条文の番号や出し方などが違います。様式は、ものづくり補助金と新事業進出補助金がどちらも様式第4で、省力化投資補助金は様式第3です。
| 項目 | ものづくり | 新事業進出 |
|---|---|---|
| 条文 | 規程13条 | 規程15条 |
| 様式 | 様式第4 | 様式第4 |
| 出し方 | メール | 電子申請 |
| 証拠の指定 | 記載なし | 1つ以上 |
| 延長の上限 | 記載なし | 12か月 |
| 延長の回数 | 記載なし | 原則1回 |
※規程=交付規程。「記載なし」は、当社が参照した資料に書かれていなかったという意味です。決まりがない(延長に上限がないなど)という意味ではありません。ものづくり補助金でも、精算払い(補助金の後払いの請求)には期限があり、間に合わないと交付決定の取消しになることがあります(補助事業の手引き p.12)。ページは、ものづくり補助金:交付規程 p.3、補助事業の手引き p.12/新事業進出補助金:交付規程 p.3・p.5、補助事業の手引き p.43、ポイント資料 p.5・p.6。
省力化投資補助金(一般型)にも同じ手続きがあり、様式第3の「事故報告書」を電子申請で出します(交付規程 第16条・第8条、p.4・p.2)。よくある質問でも、自己の責任によらない理由で期間内に終えられない見込みのときは延長が認められ、具体的な方法は追って案内するとされています(よくある質問 p.3)。
様式の欄にも違いがあります。新事業進出補助金の様式には「事業終了日(変更後)」の欄があり(交付規程 p.29)、省力化投資補助金の様式には「事故に係る金額」の欄があります(交付規程 p.25)。
新しく始まった「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の公募要領にも、実施期間の延長は原則として認めないこと、天災など責任によらない事由で期間内に終えられない場合は延長が認められる場合があることが書かれています(p.56)。くわしくは「事故等報告をスムーズに進めるためのポイント」で確かめるよう案内されていますが、この補助金向けの資料は後日公開予定とされています。次に紹介する新事業進出補助金の同じ名前の資料と、同じ内容になるとは限りません。
参考:新事業進出補助金の「ポイント」資料
新事業進出補助金の事務局は、「事故等報告をスムーズに進めるためのポイント」という資料を出しています。B社の補助金とは別の補助金の資料なので、そのまま当てはまるとは限りません。ただ、何を書けば伝わるかがよく分かるので、主な点を紹介します。
- 「自己の責任によらない」とは:交付決定の前には予見できず、補助事業の期間中に起きた出来事であること(p.3)。
- できる手は尽くす:事故等が起きても、考えられるすべての対策をとり、期間内に終えるための手を打っていることが求められます(p.3)。
- 原因と内容は200字程度:何が原因で、何がどうなり、何の導入が、当初の予定からいつに遅れ、どれくらいの期間遅れたかを簡潔に書きます。「○○情勢で遅れた」のような、出来事だけの書き方は認められません(p.4)。
- 採った措置は「いつ・何を」:いつ、どんな対策をとったかを書きます(p.5)。
- 延長は遅れに見合う分だけ:変更後の終了日は、当初の完了期限日をもとに1か月単位で選びます。遅れの期間を超える分は認められない例が示されています。延長は最長12か月以内で、原則1回だけです(p.5)。
- 第三者の資料を1つ以上:公的機関の通知書・証明書、メーカーの公表文、発注先の遅延理由書などです。遅延理由書には「作成者・宛先・遅延理由・遅延する期間」を書いてもらいます(p.6)。
- 期限までに承認が必要:完了期限日までに承認を得る必要があり(新事業進出補助金の補助事業の手引き p.42)、余裕をもって申請するよう求めています(p.6)。理由が認められない場合や、期間の妥当性が確かめられない場合は、延長が認められないか、希望より短くなることがあります(p.9)。
認められる例・認められない例
同じ資料には、例も載っています(p.7・p.8)。
- 認められる例:材料不足や災害による製品の納品遅れ。たとえば、取引先の工場の火災、地震で在庫を確保できず別の業者に手配した、台風で船が長く欠航した、など。
- 認められない例:値上がり、取引先や関係者(近隣など)とのトラブル、融資などの資金繰り、着手後に見つかった不具合、取引先の人手不足、本業が忙しかった、オーダーメイドで製作に時間がかかった、海外製で輸入に時間がかかった、書類の準備に時間がかかり交付申請が遅れた、など。
製作や輸入に時間がかかる設備は、最初から日程に余裕を持たせておきましょう。なお、B社の報告書で説明した事情は、値上がりではなく、原料不足で製造・供給が滞ったというものでした。
納期が決まらないと分かったら:進め方5つのステップ
B社の事例と公式資料をもとに、納期が決まらないと分かった時点からの進め方をまとめます。
ステップ1:回答を記録に残し、くわしく聞く
発注先やメーカーの回答は、メールや書面など記録に残る形でもらいます。あわせて、次のことを聞いておきます。
- 遅れの理由(何が足りないのか、どこで止まっているのか)
- いつごろなら出せそうか、その見込みはいつ分かるか
- 遅れの理由と期間を書いた書面(遅延理由書)を出してもらえるか
発注したことを示す書類もそろえます。ものづくり補助金の手引きは、販売業者から見積書・受注書・契約書等を必ず受け取るよう求めています(p.3)。
ステップ2:支援者と事務局にすぐ知らせる
納入が期限に間に合わないと分かったら、速やかに地域事務局へ連絡します(ものづくり補助金の手引き p.3)。申請を手伝った専門家などの支援者がいれば、あわせて相談します。様式や出し方(メールか電子申請か)も、このときに確かめておくと安心です。
ステップ3:代わりの手段を探し、結果を記録する
同じ働きをする機械を、ほかのメーカーから期限内に入手できないか、販売店を通じて確かめます。B社でも、ほかのメーカーに打診し、どこも納期を約束できないことを確かめました。問い合わせた相手・日付・回答を残しておけば、報告書の「採った措置」にそのまま書けます。
ステップ4:原因と証拠をそろえる
「何が起きて、それがなぜ自社の設備の遅れになったのか」を、資料で示せるようにします。集める資料は、主に次の3種類です。
- 自社あての書面:発注先からの遅延理由書、納期についてのメール
- メーカーの公表文:取引先向けにホームページなどで出した案内
- 公的機関の資料:国や自治体の通知書、証明書など
新事業進出補助金では、遅延理由書に「作成者(発注先など)・宛先(自社)・遅延理由・遅延する期間」をはっきり書くよう求めています(同補助金の補助事業の手引き p.43)。メールでもらう場合も、この4つが分かる形で書いてもらいましょう。
メーカーの公表文や国の通知は、業界やメーカー全体の状況を示す資料です。背景の説明には役立ちますが、自社の設備がどれだけ遅れるかまでは示せません。自社あての書面と組み合わせると、より確かな裏付けになります。
ステップ5:報告書を書き、速やかに出す
4つの項目を、設備の名前と、分かっている日付(発注した月など)を入れて書きます。原因と内容は、次の形にまとめると伝わりやすくなります(「ポイント」資料 p.4 の記載例を参考にした形です)。
納期が「未定」のときは、遅れる期間を数字で示しにくいのが難しいところです。B社でも、販売店の見立てをもとに完了の見込みを書きました。「ポイント」資料は、遅延理由と遅延期間を、出す証拠の内容をもとに書くよう求めています(p.6)。見込みの期間を書面で出してもらえないか、発注先に頼んでみましょう。
出す時期は「速やかに」です。ものづくり補助金の手引きは「その状況となった時点で」としています(p.12)。B社では、発注先の回答を受けた月のうちに報告書を作りました。
延長してほしい期間を考えるときは、実績報告や精算払い(補助金の後払いの請求)の期限もあわせて確かめます。ものづくり補助金の手引きには、精算払いの請求をいつまでに終えるかの期限も書かれていて、間に合わない場合は交付決定の取消しになることがあるとされています(p.12)。
出したあとも、販売店への確認は続けます。状況が変わったら、速やかに事務局へ伝えます。B社の報告書でも、進み具合に変化があればすぐに報告すると書きました。
チェックリスト:事故等報告を出す前に
「新事業進出補助金の基準」と添えた項目は、ものづくり補助金の資料には書かれていない基準です。ほかの補助金でも、目安として確かめておきましょう。
- 回答の記録:納期についての回答を、メールや書面でもらったか
- 発注の書類:見積書・受注書・契約書など、発注したことが分かる書類がそろっているか
- 原因:自社の責任ではない出来事か。値上がり、資金繰り、取引先とのトラブル、もともと長い納期などではないか(認められない例は新事業進出補助金の基準)
- 時期:原因の出来事は、交付決定のあとに起きた、予見できなかったものか(新事業進出補助金の基準)
- 代わりの手段:ほかのメーカーや機種を当たり、相手・日付・回答を記録したか。切り替えるなら、事前に計画変更を相談したか
- 証拠:第三者の資料(メーカーの公表文、公的機関の通知、発注先の遅延理由書)をそろえたか(新事業進出補助金の基準では1つ以上)
- 4つの項目:進捗状況・内容と原因・採った措置・完了の予定を、設備の名前と日付を入れて書いたか
- 期間:遅れる期間と、延長してほしい期間がつり合っているか。実績報告や精算払いの期限にも間に合うか
- 出し方:支援者・事務局に連絡し、様式と出し方(メールか電子申請か)を確かめたか
- 出す時期:その状況になった時点で、速やかに出せるか。完了期限日まで余裕はあるか
まとめ
- 自社の責任によらない理由(災害や火事など)で設備の納期が決まらず、期限に間に合わない見込みになったら、「事故等報告」で事務局に報告し、指示を受けます。報告して指示を受けない限り、実施期間は延びません。
- B社では、発注先の回答を受けた月のうちに、進捗状況・内容と原因・採った措置・完了の予定の4つを書いた報告書を作り、メーカーの案内と国の機関の通知を添えました。
- 伝わる報告書のかぎは、出来事から自社の設備の遅れまでを順番につなぐこと、代わりの手段を探したと示すこと、第三者の資料で裏付けることです。
- 決まりは補助金ごとに違います。最新の公募要領・手引きで確かめ、早めに事務局へ相談しましょう。
当社では、申請だけでなく、交付申請や事故等報告、実績報告の準備まで一緒に進めています。「納期が危ないかもしれない」と思ったら、早めにご相談ください。