補助金で買う設備を発注したら、「今は納期を確定できません」と言われた。補助金は、決められた期間のうちに設備が届き、支払いまで終わらないと受け取れません。期限は近づくのに、いつ届くか分からない。そんなときに使う手続きが「事故等報告」です。

「事故」という名前ですが、けがや事故だけの話ではありません。自社の責任ではない理由で、期限までに事業を終えられない見込みになったときに、事務局へ状況を報告し、指示を受ける手続きです。

この記事では、当社がものづくり補助金で支援したB社の事例をもとに、実際に作った事故等報告書の中身と、作るまでの進め方を紹介します。

※当社が実際に支援した事例をもとにしています。会社が特定されないよう、業種・地域・金額などの一部をぼかしています。

B社の事例の全体の流れは、B社の事例紹介の記事にまとめています。この記事は、事故等報告書を作ったところまでの記録をもとにしています。その後の経過(事務局の判断など)は扱っていません。

この記事で分かること

※資料名のあとのページ番号は、ものづくり補助金の交付規程と補助事業の手引きでは、資料に印刷された番号です。そのほかの資料では、PDFのページ番号です(印刷された番号とずれることがあります)。版によってページや内容が変わることもあるので、ご自身の回の最新の資料で確かめてください。

B社で起きたこと:中心の設備の納期が決まらない

B社は、地方で飲食店を複数営む会社です。名物料理を冷凍して販売するため、ものづくり補助金で急速冷凍機などの設備を入れる計画でした。

交付決定(補助金を出すことが正式に決まること)のあと、B社は設備の発注を進めました。中心となる急速冷凍機とプレハブ冷凍庫は、交付決定から数か月後に発注しました。ところが、交付決定を受けた見積書の発注先から「現時点で納期を確定できない」という回答が届きます。

報告書を作った時点の状況は、次のとおりです。

設備状況
真空包装機発注済・納品待ち
器具・容器洗浄機発注済・納品待ち
急速冷凍機発注済・納期未定
プレハブ冷凍庫発注済・納期未定

急速冷凍機とプレハブ冷凍庫は、料理を冷やし、凍らせ、保管する工程を受け持ちます。この2つが届かなければ、ほかの設備が届いても、計画どおりの冷凍品づくりはできません。

原因:冷凍機器に使う材料の調達難

原因は、交付決定のあとに起きた、冷凍機器に使う材料の調達難です。報告書では、部材が手に入りにくくなり、業界全体で製造と供給が滞っていると説明しました。

販売店を通じて、ほかのメーカーへの切り替えも打診しましたが、どのメーカーからも納期の約束は得られませんでした(報告書では、業界全体で同じような供給の制約があると説明しています)。

このままでは、補助事業(補助金を使って行う事業)の実施期間のうちに、納品・据付け・支払いを終えられないおそれが高い。そこで、発注先の回答を受けた月のうちに、事故等報告書を作成しました。

実際に作った報告書:4つの項目に書いたこと

B社の報告書は、ものづくり補助金の「様式第4 事故等報告書」で作りました。頭に受付番号・日付・宛先(事務局)・会社の住所と名前を書きます。本文は、交付決定の日付と交付規程の条文を示し、事故等があったことを報告する一文から始めます。その後に、次の4つの項目と添付資料が続きます。

1. 補助事業の進捗状況

設備ごとに、発注したか、届いたか、納期はどうかを書きました(上の表と同じ内容です)。そのうえで、急速冷凍機とプレハブ冷凍庫が届かない限り、ほかの設備が届いても事業の目的を果たせない、という関係を書いています。

ポイント:一部の設備の遅れが、なぜ事業全体の遅れになるのかを、最初に示せます。

2. 事故等の内容と原因

「内容」と「原因」を分けて書きました。

ポイント:「○○の影響で遅れた」と出来事の名前だけを書くのではなく、出来事から自社の設備の遅れまでを、順番につないで説明しています。

3. 事故等に対して採った措置

ポイント:待っているだけではなく、期間内に終えるために手を打っていることを示せます。

4. 補助事業の遂行と完了の予定

納期の回答は、まだ得られていませんでした。そこで、販売店の見立てをもとに、いつごろまでに設備を確保・据え付けて事業を終えられそうかという見込みを書きました。そのうえで、実施期間の延長を認めてもらい確実に完了させること、状況が変われば速やかに報告することを書いています。

添付した資料

報告書の本文にも、2つの資料の日付・題名・掲載先を書き、メーカーの案内は一部を切り抜いて貼り付けました。読む人は、本文を読みながら根拠をすぐ確かめられます。

公式の決まり:事故等報告とは

ものづくり補助金の決まり

補助金ごとの違い

同じ手続きは、ほかの補助金にもあります。ただし、条文の番号や出し方などが違います。様式は、ものづくり補助金と新事業進出補助金がどちらも様式第4で、省力化投資補助金は様式第3です。

項目ものづくり新事業進出
条文規程13条規程15条
様式様式第4様式第4
出し方メール電子申請
証拠の指定記載なし1つ以上
延長の上限記載なし12か月
延長の回数記載なし原則1回

※規程=交付規程。「記載なし」は、当社が参照した資料に書かれていなかったという意味です。決まりがない(延長に上限がないなど)という意味ではありません。ものづくり補助金でも、精算払い(補助金の後払いの請求)には期限があり、間に合わないと交付決定の取消しになることがあります(補助事業の手引き p.12)。ページは、ものづくり補助金:交付規程 p.3、補助事業の手引き p.12/新事業進出補助金:交付規程 p.3・p.5、補助事業の手引き p.43、ポイント資料 p.5・p.6。

省力化投資補助金(一般型)にも同じ手続きがあり、様式第3の「事故報告書」を電子申請で出します(交付規程 第16条・第8条、p.4・p.2)。よくある質問でも、自己の責任によらない理由で期間内に終えられない見込みのときは延長が認められ、具体的な方法は追って案内するとされています(よくある質問 p.3)。

様式の欄にも違いがあります。新事業進出補助金の様式には「事業終了日(変更後)」の欄があり(交付規程 p.29)、省力化投資補助金の様式には「事故に係る金額」の欄があります(交付規程 p.25)。

新しく始まった「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の公募要領にも、実施期間の延長は原則として認めないこと、天災など責任によらない事由で期間内に終えられない場合は延長が認められる場合があることが書かれています(p.56)。くわしくは「事故等報告をスムーズに進めるためのポイント」で確かめるよう案内されていますが、この補助金向けの資料は後日公開予定とされています。次に紹介する新事業進出補助金の同じ名前の資料と、同じ内容になるとは限りません。

参考:新事業進出補助金の「ポイント」資料

新事業進出補助金の事務局は、「事故等報告をスムーズに進めるためのポイント」という資料を出しています。B社の補助金とは別の補助金の資料なので、そのまま当てはまるとは限りません。ただ、何を書けば伝わるかがよく分かるので、主な点を紹介します。

認められる例・認められない例

同じ資料には、例も載っています(p.7・p.8)。

製作や輸入に時間がかかる設備は、最初から日程に余裕を持たせておきましょう。なお、B社の報告書で説明した事情は、値上がりではなく、原料不足で製造・供給が滞ったというものでした。

納期が決まらないと分かったら:進め方5つのステップ

B社の事例と公式資料をもとに、納期が決まらないと分かった時点からの進め方をまとめます。

ステップ1:回答を記録に残し、くわしく聞く

発注先やメーカーの回答は、メールや書面など記録に残る形でもらいます。あわせて、次のことを聞いておきます。

発注したことを示す書類もそろえます。ものづくり補助金の手引きは、販売業者から見積書・受注書・契約書等を必ず受け取るよう求めています(p.3)。

ステップ2:支援者と事務局にすぐ知らせる

納入が期限に間に合わないと分かったら、速やかに地域事務局へ連絡します(ものづくり補助金の手引き p.3)。申請を手伝った専門家などの支援者がいれば、あわせて相談します。様式や出し方(メールか電子申請か)も、このときに確かめておくと安心です。

ステップ3:代わりの手段を探し、結果を記録する

同じ働きをする機械を、ほかのメーカーから期限内に入手できないか、販売店を通じて確かめます。B社でも、ほかのメーカーに打診し、どこも納期を約束できないことを確かめました。問い合わせた相手・日付・回答を残しておけば、報告書の「採った措置」にそのまま書けます。

注意:代わりの機械に切り替えるときは、事前の承認が必要です。ものづくり補助金では、交付申請のときに取得するとしていた50万円以上(税抜き)の機械などを変えるときは、あらかじめ計画変更の承認を受けます(交付規程 第10条、p.2)。事後の承認はできません(補助事業の手引き p.11)。50万円以上の契約では、原則として2者以上の見積もりも必要です(交付規程 第11条、p.2)。切り替えを決める前に、事務局へ相談してください。

ステップ4:原因と証拠をそろえる

「何が起きて、それがなぜ自社の設備の遅れになったのか」を、資料で示せるようにします。集める資料は、主に次の3種類です。

新事業進出補助金では、遅延理由書に「作成者(発注先など)・宛先(自社)・遅延理由・遅延する期間」をはっきり書くよう求めています(同補助金の補助事業の手引き p.43)。メールでもらう場合も、この4つが分かる形で書いてもらいましょう。

メーカーの公表文や国の通知は、業界やメーカー全体の状況を示す資料です。背景の説明には役立ちますが、自社の設備がどれだけ遅れるかまでは示せません。自社あての書面と組み合わせると、より確かな裏付けになります。

ステップ5:報告書を書き、速やかに出す

4つの項目を、設備の名前と、分かっている日付(発注した月など)を入れて書きます。原因と内容は、次の形にまとめると伝わりやすくなります(「ポイント」資料 p.4 の記載例を参考にした形です)。

書き方の例:(出来事)に起因して、(部材や工場)が(どうなり)、(設備名)の製造・出荷に影響が出た。当初(○年○月)の納品予定だったが、(○年○月)の納品見込みとなり、(○か月)の遅れが生じる。このため、補助事業の実施期間内に納品・支払いを終えられない見込みである。

納期が「未定」のときは、遅れる期間を数字で示しにくいのが難しいところです。B社でも、販売店の見立てをもとに完了の見込みを書きました。「ポイント」資料は、遅延理由と遅延期間を、出す証拠の内容をもとに書くよう求めています(p.6)。見込みの期間を書面で出してもらえないか、発注先に頼んでみましょう。

出す時期は「速やかに」です。ものづくり補助金の手引きは「その状況となった時点で」としています(p.12)。B社では、発注先の回答を受けた月のうちに報告書を作りました。

延長してほしい期間を考えるときは、実績報告や精算払い(補助金の後払いの請求)の期限もあわせて確かめます。ものづくり補助金の手引きには、精算払いの請求をいつまでに終えるかの期限も書かれていて、間に合わない場合は交付決定の取消しになることがあるとされています(p.12)。

出したあとも、販売店への確認は続けます。状況が変わったら、速やかに事務局へ伝えます。B社の報告書でも、進み具合に変化があればすぐに報告すると書きました。

チェックリスト:事故等報告を出す前に

「新事業進出補助金の基準」と添えた項目は、ものづくり補助金の資料には書かれていない基準です。ほかの補助金でも、目安として確かめておきましょう。

まとめ

当社では、申請だけでなく、交付申請や事故等報告、実績報告の準備まで一緒に進めています。「納期が危ないかもしれない」と思ったら、早めにご相談ください。

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