Claude Codeを使って、ものづくり補助金の事業計画書を一気に作る方法
もう1つのAI活用パターンとして、Claude Code(クロードコード)を使う方法を紹介します。Claude Codeはパソコン上のファイルの作成・編集を自動でやってくれるAIツールで、事業計画書を一気に仕上げることができます。やや上級者向けですが、うまく使えば大幅な時間短縮が可能です。
ChatGPTが「会話しながら一緒に考える」ツールだとすると、Claude Codeは「指示を出すとファイルを直接作ってくれる」ツールです。Wordへのコピー&ペーストが不要になるため、作業のスピードが格段に上がります。
この記事では、Claude Codeを触ったことがない方でも始められるよう、環境の準備からファイル完成までの手順をゼロから解説します。
1. Claude Codeとは
Claude Code(クロードコード)は、Anthropic(アンソロピック)社が提供するAIツールです。最大の特徴は、パソコンの中のファイルを直接作成・編集できること。ChatGPTのように「会話の中でアドバイスをもらう」のではなく、「指示を出すと、実際にファイルを作ってくれる」ツールです。
ChatGPTとの違い
- ChatGPT:会話しながら一緒に考える。文章のアイデアや構成案をもらい、自分でWordに貼り付けて仕上げる
- Claude Code:指示を出すと、Wordファイルやテキストファイルを直接パソコンに生成してくれる。修正もファイルに直接反映される
事業計画書の作成では、Wordファイルを直接生成できるのが大きな強みです。ChatGPTだと「AIの回答をコピーしてWordに貼り付けて体裁を整える」という手間がかかりますが、Claude Codeなら指示1つでファイルが完成します。
どちらが向いている?パソコン操作に慣れていて「とにかく速く仕上げたい」方はClaude Code、「会話しながらじっくり考えたい」方はChatGPTがおすすめです。どちらも事業計画書の品質自体に大きな差はありません。
2. 環境構築
Claude Codeを使うには、いくつかの準備が必要です。1つずつ順番に進めれば、30分ほどで使い始められます。
ステップ1:Claude Codeを入手する
Claude Codeの入手方法は2つあります。どちらでも同じことができるので、お好みで選んでください。
- デスクトップアプリ版:claude.ai/download からお使いのパソコン(Windows / Mac)に合ったものをダウンロードしてインストールする。デスクトップアプリにClaude Code機能が統合されているため、アプリを入れるだけですぐに使えます
- VS Code拡張機能版:VS Code(無料のテキスト編集ソフト)をお使いの方は、VS Codeの拡張機能マーケットプレイスで「Claude Code」を検索してインストールする
有料プランが必要です:Claude Codeを使うには、Claude Pro(月額20ドル(日本円で約3,000円前後、為替により変動))以上の有料プランへの加入が必要です。利用量が多い場合は上位プラン(Maxプラン)が必要になることもあります。無料プランでは利用できません。Anthropicのアカウントを作成し、有料プランに登録してからClaude Codeを起動してください。無料で始めたい方は、ChatGPT・Geminiを使う方法もあります。
ステップ2:作業フォルダを準備する
パソコンのデスクトップやドキュメントフォルダに、「ものづくり補助金」という名前のフォルダを作ってください。このフォルダの中で作業します。
フォルダ名について:フォルダ名は日本語でも多くの場合は問題ありませんが、うまく動かない場合は半角英字のフォルダ名(例:monozukuri)に変えてみてください。
フォルダの中に、以下の資料を入れておきましょう。
- 公募要領のPDF:ものづくり補助金の公式サイトからダウンロードできます
- 自社の決算書や会社案内(あれば):AIが自社情報を正確に把握するために使います
- 導入予定設備の見積書や仕様書(あれば):設備の具体的な情報をAIに伝えるために使います
ステップ3:Claude Codeでフォルダを開く
Claude Codeを起動し、先ほど作った「ものづくり補助金」フォルダを開きます。デスクトップアプリの場合は、起動後に「フォルダを開く」からフォルダを選択してください。VS Code版の場合は、VS Codeで「ものづくり補助金」フォルダを開いた状態でClaude Codeを起動します。
これで準備完了です。Claude Codeのチャット画面に指示を入力すれば、このフォルダの中にファイルを作成したり、フォルダ内の資料を読み取ったりできるようになります。
3. CLAUDE.mdで「審査員AI」を作る
ここからが、Claude Codeならではのテクニックです。CLAUDE.md(クロードエムディー)というファイルを作ることで、AIに「あなたはこういう専門家です」と役割を与えることができます。
これは、ChatGPTでいう「カスタム指示」に似た機能ですが、Claude Codeではファイルとして保存するため、毎回設定し直す必要がありません。一度作っておけば、そのフォルダで作業するたびに自動で読み込まれます。
CLAUDE.mdの作り方
Claude Codeのチャット画面で、次のように指示してください。
指示の例:「このフォルダにCLAUDE.mdファイルを作ってください。内容は以下の通りです。」と入力し、下の内容を貼り付けてください。
以下が、ものづくり補助金の事業計画書作成に最適化したCLAUDE.mdの内容です。「当社の情報」のところを自社の情報に書き換えて使ってください。
CLAUDE.mdの内容例:
# ものづくり補助金 事業計画書作成アシスタント ## あなたの役割 あなたはものづくり補助金の審査員経験がある中小企業診断士です。 事業計画書の作成を支援してください。 ## 審査の5つの軸 1. 革新性:自社にとって新しい取り組みか 2. 優位性:競合と比べた強みがあるか 3. 実現可能性:実行できる体制・資金があるか 4. 事業性:市場にニーズがあり、収益が見込めるか 5. 経営力:経営基盤がしっかりしているか ## 事業計画書のルール - 10ページ以内 - 具体的な数字を必ず入れる - 図表を効果的に使う - 審査員は1件あたり短時間で読むため、 結論を先に書き、根拠を後に示す ## 当社の情報 - 会社名:(例:株式会社○○製作所) - 業種:(例:金属部品の製造業) - 従業員数:(例:25名) - 直近3年の売上高:(例:2億円→1.8億円→2.1億円) - 現在の課題:(例:手作業の工程が多く、 納期遅延が月に3件発生している) - 導入したい設備:(例:5軸マシニングセンタ) - 設備の見積額:(例:3,500万円) - 設備導入で期待する効果:(例:加工時間を 現在の半分に短縮し、月産能力を1.5倍にする) - 給与支給総額(年間):(例:9,600万円) - 従業員の平均賃金(月額):(例:32万円) - 事業場内最低賃金(時給):(例:1,000円)
この「当社の情報」をどれだけ具体的に書くかが、出来上がる事業計画書の品質を大きく左右します。数字は可能な限り正確に記入してください。AIは与えられた情報をもとに文章を組み立てるので、ここが曖昧だと計画書も曖昧になります。
大切なポイント:売上高、従業員数、設備の見積額などの数字は、実際の数字を正確に入れてください。AIが勝手に数字を作ってしまうことを防ぐために、ここでしっかり伝えておくことが重要です。
4. 事業計画書を一気に作る
CLAUDE.mdの準備ができたら、いよいよ事業計画書の作成です。Claude Codeのチャット画面で、以下のように指示を出してください。
指示の例:
公募要領のPDFを読んで、CLAUDE.mdに書いた 当社情報をもとに、ものづくり補助金の 事業計画書をWordファイルで作成してください。 以下の構成でお願いします。 1. 事業概要(1ページ) 2. 具体的取組内容(2ページ) 3. 革新性・優位性(2ページ) 4. 市場分析と事業性(2ページ) 5. 実施体制と経営力(1.5ページ) 6. 収支計画(1.5ページ)
この指示を送ると、Claude Codeは以下の流れで作業を進めます。
- フォルダ内の公募要領PDFを読み取る
- CLAUDE.mdに書かれた自社情報を確認する
- 審査の5つの軸を意識しながら文章を構成する
- Wordファイル(.docx)を「ものづくり補助金」フォルダの中に直接生成する
数分待つと、フォルダの中にWordファイルが出来上がります。まずはこれを開いて、全体の構成と内容を確認しましょう。
最初のドラフトは完璧ではありません:AIが生成する最初のドラフトは、あくまでたたき台です。自社の実態と合っているか、数字に間違いがないか、必ず確認してください。ここから修正を重ねて仕上げていきます。
5. セクションごとの修正・ブラッシュアップ
最初のドラフトを確認したら、セクションごとに修正を指示していきます。Claude Codeは既存のWordファイルを直接編集してくれるので、修正のたびに新しいファイルを作る必要はありません。
具体的取組内容の修正
指示の例:「事業計画書の具体的取組内容のセクションを修正してください。現在の手作業工程の問題点をもっと具体的に書いて、設備導入後にどう改善されるかをビフォー・アフターで対比させてください。」
革新性セクションの強化
指示の例:「革新性のセクションを強化してください。自社比較で、現行設備と新設備の性能差を表にまとめてください。加工精度、加工時間、対応可能な形状の3つの軸で比較したいです。」
市場分析の追加
指示の例:「市場分析のセクションに、当社がターゲットとする業界の市場規模と成長率のデータを追加してください。また、当社がこの市場でどのくらいのシェアを取れる見込みがあるか、根拠とともに書いてください。」
数値計画の修正
指示の例:「収支計画のセクションを見直してください。設備投資額3,500万円に対して、何年で回収できるかの計算を入れてください。売上増加の見込みは、現在の月産能力から1.5倍になることをベースに算出してください。」
賃金引上げ計画の追加
ものづくり補助金では、以下の3つの賃金引上げ要件を満たす必要があります。
- 付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)を年率3%以上向上
- 給与支給総額を年率1.5%以上向上
- 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上に設定
指示の例:「事業計画書の数値計画に、以下の3つの要件を満たす賃金引上げ計画を追加してください。①付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)を年率3%以上向上、②給与支給総額を年率1.5%以上向上、③事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上。当社の現在の情報はCLAUDE.mdに記載しています。」
審査員目線でのレビュー
一通りの修正が終わったら、AI自身にレビューさせるのが効果的です。
指示の例:「この事業計画書を審査員の立場で読み直して、各セクションの改善点を指摘してください。特に、根拠が弱い箇所や、審査の5つの軸でカバーできていない部分があれば教えてください。修正案もあわせて提示してください。」
Claude Codeは指摘と修正を一度にやってくれます。「ここが弱い」と指摘した上で、そのまま計画書ファイルを修正してくれるので、効率的にブラッシュアップできます。
6. Claude Codeならではの活用テクニック
ChatGPTにはない、Claude Codeだからこそできる便利な使い方を紹介します。
テクニック1:表の自動生成
事業計画書では、文章だけでなく表や図で情報を整理すると、審査員に伝わりやすくなります。Claude Codeなら、表を含んだWordファイルを直接生成できます。
指示の例:「事業計画書に以下の比較表を追加してください。現行設備と新設備の比較表(加工精度・加工速度・段取り時間・対応素材の4項目)、および3年間の売上推移表を入れてください。」
テクニック2:数値計画の自動計算
売上推移や付加価値額の計算など、数字まわりの作業もClaude Codeに任せられます。
指示の例:「以下の条件で、5年間の収支計画表を計算して事業計画書に追加してください。現在の売上高2.1億円、設備導入後の売上増加率は年10%、営業利益率は現在の5%から段階的に8%まで改善、設備投資額3,500万円(補助率1/2)。付加価値額の計算も入れてください。」
テクニック3:複数バージョンの比較
Claude Codeはファイルを自由に作れるので、事業計画書の別バージョンを作って比較することもできます。
指示の例:「現在の事業計画書をver1として保存し、革新性の書き方を変えたver2を別ファイルで作ってください。ver1は技術的な革新性を強調する書き方、ver2は事業モデルの革新性を強調する書き方にしてください。」
2つのバージョンを見比べて、良いところを組み合わせることで、より完成度の高い計画書に仕上げられます。
テクニック4:公募要領との照合チェック
フォルダに入れた公募要領のPDFを使って、計画書に抜け漏れがないかチェックできます。
指示の例:「公募要領のPDFを読み直して、事業計画書の審査項目をすべてリストアップしてください。そのうえで、現在の事業計画書で対応できている項目と、まだ不十分な項目を一覧にしてください。」
7. AIが苦手なこと(自分で補う必要があるポイント)
Claude Codeは非常に便利ですが、万能ではありません。以下の部分は、AIに任せきりにせず、必ず自分で確認・修正してください。
1. 自社固有の数字
売上高、利益率、従業員数、設備の見積額などの実際の数字は必ず自分で確認してください。AIはCLAUDE.mdに書いた情報をもとに文章を作りますが、計算ミスをしたり、存在しない数字をそれらしく書いてしまうことがあります。特に収支計画の数字は、1つ間違えると全体の整合性が崩れます。
2. 統計データの正確性
市場規模や業界の成長率などのデータは、AIが古い情報や不正確な情報を使っていることがあります。公的機関の統計データや業界レポートで裏を取ってください。数字の出典が不明な場合は、自分で調べた正確なデータに差し替えましょう。
確認先の例:
- 経済産業省「工業統計調査」
- 中小企業庁「中小企業白書」
- 業界団体の統計資料
- 矢野経済研究所、富士経済などの市場調査レポート
3. 設備の技術仕様
導入予定の設備の性能や仕様は、メーカーのカタログや見積書の記載内容を正としてください。AIが設備の性能を実際より高く(または低く)書いてしまうことがあります。
4. 最新の公募要領の変更点
ものづくり補助金は公募回ごとに要件が変わることがあります。AIの学習データに最新の変更が反映されていない場合があるため、最新の公募要領で要件を確認してください。特に補助率、補助上限額、申請枠の要件は要注意です。
AIの出力は必ず「たたき台」として扱う:AIが作った計画書をそのまま提出するのは避けてください。自社の実態と照らし合わせ、数字を検証し、自分の言葉で修正を加えることで、はじめて採択される計画書になります。
8. 最終チェック
事業計画書が完成に近づいたら、最後の仕上げとしてClaude Codeに総合的なレビューを依頼しましょう。
指示の例:「この事業計画書を審査員の立場で100点満点で採点し、改善点を5つ挙げてください。それぞれの改善点について、具体的な修正案も書いてください。」
また、以下のチェックリストで最終確認を行ってください。
提出前チェックリスト
- ページ数:10ページ以内に収まっているか
- 審査の5軸:革新性・優位性・実現可能性・事業性・経営力のすべてに触れているか
- 数字の根拠:売上予測、利益計画、投資回収期間に具体的な根拠があるか
- 自社固有の情報:AIが作った汎用的な表現が残っていないか。自社の実態に即しているか
- 統計データの出典:市場規模や成長率のデータに出典が明記されているか
- 設備の仕様:導入設備の性能値がメーカー資料と一致しているか
- 図表の活用:文章だけのページが続いていないか。適切に図表で補足しているか
- 結論ファースト:各セクションの冒頭で要点を述べているか
- 誤字脱字:全体を通して読み直し、誤字脱字がないか
- 整合性:セクション間で矛盾する記述がないか(特に数字の不一致)
最後のひと手間:完成した計画書を印刷して紙で読み直すと、画面では見落としていた問題に気づきやすくなります。また、事業内容を知らない家族や知人に読んでもらい、「内容が理解できるか」を確認するのも効果的です。
この記事の監修
株式会社ミライズ(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関)
ものづくり補助金の申請支援実績多数。事業計画書の策定から採択後の手続きまで一貫してサポート。