ChatGPT・Geminiを使って、ものづくり補助金の事業計画書を自分で作る方法
ものづくり補助金の事業計画書を、AIと一緒に作ってみませんか。この記事では、ChatGPTやGeminiといった対話型のAIを使って、壁打ち(対話しながらアイデアを練ること)をしながら計画書を仕上げていく方法を、ステップごとにお伝えします。
「AIに全部書いてもらおう」ということではありません。自社のことを一番よく知っているのは社長自身です。AIはあくまで「優秀な相談相手」として使います。自分の考えをAIにぶつけて、整理してもらい、抜け漏れを指摘してもらう。そうやって対話を重ねることで、一人で書くよりもずっと質の高い計画書に仕上がります。
1. 始める前に用意するもの
AIとの作業を始める前に、以下の3つを準備してください。材料が揃っていれば、AIとのやり取りがスムーズになります。
公募要領をダウンロードする
中小企業庁のものづくり補助金公式サイトから、最新の公募要領(PDF)をダウンロードしてください。この公募要領に審査基準が書かれており、これが計画書づくりの「ゴール」になります。特に「審査項目」のページは何度も参照するので、印刷しておくのもおすすめです。
自社の情報を整理する
AIは「あなたの会社のこと」は知りません。以下の情報をメモやファイルにまとめておくと、AIへの指示がしやすくなります。
- 会社概要:事業内容、従業員数、設立年、主な取引先
- 直近3年の業績:売上高、営業利益、経常利益
- 現在の生産方法・設備:どんな設備で、どのように製造しているか
- 抱えている課題:生産能力の不足、品質のばらつき、人手不足など
- 導入したい設備:設備名、メーカー、見積金額、期待する効果
- 従業員の給与情報:給与支給総額、一人あたり平均賃金(賃上げ計画に必要)
AIツールを準備する
以下のいずれかを用意してください。
- ChatGPT:OpenAIが提供するAI。無料版でも使えますが、有料版(月額約3,000円)のほうが回答の質が高く、長い文章の処理も得意です
- Google Gemini:Googleが提供するAI。Googleアカウントがあれば無料で使えます。PDFファイルを直接読み込ませることもできます
どちらを選べばいい?
どちらでも計画書づくりに使えます。迷ったら、まずは無料で使えるGoogle Geminiから始めてみてください。途中でChatGPTに切り替えても問題ありません。
2. AIに「審査員の視点」を教え込む
いきなり「事業計画書を書いて」とAIに頼んでも、的外れな内容が返ってきます。まずAIに「ものづくり補助金の審査員はどこを見ているのか」を理解させることが、最も重要なステップです。
公募要領の審査基準のページを開き、その内容をAIに読ませます。以下のように指示してください。
プロンプト例:
あなたはものづくり補助金の審査員です。以下は公募要領に記載されている審査基準です。この内容を理解して、今後の会話では常にこの審査基準を意識してアドバイスしてください。
[ここに公募要領の審査基準をコピーして貼り付ける]
ChatGPTやGeminiでは、PDFファイルを直接アップロードすることもできます。その場合は次のように指示します。
プロンプト例(PDF読み込み):
添付したPDFは、ものづくり補助金の公募要領です。この中の「審査項目」のセクションを読み取って、審査員がどのような基準で事業計画書を評価するのかを箇条書きで整理してください。
AIが審査基準を正しく理解できたか確認するために、「ものづくり補助金の審査で重視される5つのポイントを教えてください」と質問してみましょう。革新性・優位性・実現可能性・事業性・経営力の5つが返ってくれば、準備は完了です。
3. セクションごとに壁打ちしながら作る
事業計画書のおすすめ構成(10ページ以内):
・事業概要(1ページ)
・具体的取組内容(2ページ)
・革新性・優位性(2ページ)
・市場分析と事業性(2ページ)
・実施体制と経営力(1.5ページ)
・収支計画・数値目標(1.5ページ)
ここからが本番です。事業計画書の各セクションを、AIと対話しながら1つずつ作っていきます。一度にすべてを書かせるのではなく、セクションごとに分けて作業するのがコツです。
3-1. 補助事業の具体的内容
計画書のメインとなるセクションです。「何をやるのか」「なぜやるのか」「どうやるのか」を具体的に書きます。まずはAIに自社の状況を伝えましょう。
プロンプト例:
当社は金属部品の製造業で、従業員15名の会社です。現在、旋盤加工を熟練の職人2名が手動で行っていますが、受注増加に対応しきれず、納期遅延が発生しています。
そこで、CNC旋盤(コンピュータ制御の自動旋盤)を導入して、加工工程を自動化したいと考えています。
この内容をもとに、ものづくり補助金の事業計画書の「具体的取組内容」セクションの構成案を作ってください。審査基準を踏まえて、どのような順番で何を書くべきかを提案してください。
AIから構成案が返ってきたら、それをベースに対話を続けます。
- 「現在の生産量は月産○個で、受注は月○件です。この数字を入れて書き直してください」
- 「この部分はもう少し具体的にしたいのですが、どんな情報を足せばいいですか?」
- 「審査員が見たときに、もっと説得力が出る書き方にできますか?」
こうしたやり取りを繰り返すことで、内容がどんどん具体的になっていきます。AIの回答をそのまま使うのではなく、自社の実態に合わせて修正していくのが大切です。
図表の作り方:ChatGPTに「現状と導入後の比較表を作ってください」と頼むと、テキスト形式の表を出力してくれます。これをExcelに貼り付けて体裁を整え、Wordの事業計画書に挿入します。「ビフォー・アフター」の比較図や工程フロー図は、計画書の説得力を大きく高めます。
3-2. 革新性の説明
審査で特に重要なのが「革新性」です。ここで言う革新性とは、世の中に存在しない新発明ということではなく、自社にとって新しい取り組みであることを意味します。
プロンプト例:
以下の取り組みの革新性を、ものづくり補助金の審査基準に沿って整理してください。「自社比較」「数値での改善効果」「技術的な裏付け」の3つの切り口で書いてほしいです。
・現在:手動旋盤で加工、1個あたり30分、不良率5%
・導入後:CNC旋盤で自動加工、1個あたり10分(見込み)、不良率0.5%以下(メーカー実績値)
革新性の記載では、以下の3つを必ず盛り込みましょう。
- 自社比較:今のやり方と、新しいやり方を並べて「何がどう変わるか」を見せる
- 数値で表す:「速くなる」ではなく「加工時間が30分から10分に短縮される」と具体的に
- 技術的な裏付け:なぜその効果が出るのか、設備の特徴や仕組みで説明する
3-3. 市場分析
自社の取り組みが「売れるのか」「需要があるのか」を示すセクションです。ここではAIの力が特に役立ちます。
プロンプト例:
金属部品加工業界の市場規模と成長率について、事業計画書に記載できるデータを教えてください。特に自動車部品・産業機械部品の需要動向が知りたいです。公的な統計データがあれば、出典も教えてください。
AIが出す数字は必ず裏取りしてください:AIは「それらしい数字」を作ってしまうことがあります。AIが出した市場データや統計は、必ず元の情報源(経済産業省の工業統計、業界団体の発表資料、各種白書など)で確認してください。数字が間違っていると、審査員の信頼を失います。
統計データを探す場所としては、以下がおすすめです。
- 経済産業省「工業統計調査」:製造業の出荷額・事業所数などの基本データ
- 中小企業庁「中小企業白書」:中小製造業の動向や課題の分析
- 各業界団体の統計資料:業界固有の市場データ
- 矢野経済研究所・富士経済などの市場調査レポート:プレスリリースで概要が見られるものも多い
3-4. 将来の展望(売上・利益計画)
補助事業を実施した結果、売上や利益がどう変わるかの見通しを示します。ここではAIに計算のたたき台を作ってもらいましょう。
プロンプト例:
以下の条件で、5年間の売上・利益計画を表形式で作成してください。
・現在の売上高:8,000万円(うち旋盤加工関連:3,000万円)
・CNC旋盤導入による生産能力向上:3倍
・初年度は稼働率60%からスタート、毎年10%ずつ上昇と想定
・原材料費率:40%
・新規設備の減価償却費:年間○万円
・新規雇用:2年目にオペレーター1名採用予定
AIが作った計画をベースに、自社の実態に合わせて数字を調整してください。特に以下のポイントに注意が必要です。
- 楽観的すぎないか:「毎年売上20%成長」のような計画は現実味がありません
- 根拠があるか:なぜその売上になるのか、受注見込みや営業計画で説明できるか
- 整合性があるか:生産能力と売上計画の数字がつじつまが合っているか
3-5. 賃金引上げ計画・数値目標
ものづくり補助金では、以下の3つの数値要件をすべて満たす計画が必要です。
- 付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)を年率3%以上向上させる
- 給与支給総額を年率1.5%以上向上させる
- 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上に設定する
特に3つ目の「事業場内最低賃金」は見落としやすいポイントです。自社で最も低い時給が、都道府県の最低賃金を30円以上上回っている必要があります。これらの計算はAIに手伝ってもらうと便利です。
プロンプト例:
ものづくり補助金の数値目標について計算を手伝ってください。
・現在の給与支給総額:4,500万円(従業員15名)
・現在の付加価値額:営業利益500万円+人件費4,800万円+減価償却費300万円=5,600万円
ものづくり補助金では「事業計画期間(3〜5年)で付加価値額を年率3%以上向上」「給与支給総額を年率1.5%以上向上」が必要です。
この条件を満たす5年間の計画を作ってください。現実的な数字でお願いします。
計算結果が出たら、必ず電卓やExcelで検算してください。AIは計算ミスをすることがあります。特に%の計算や複利計算では間違いが起きやすいので、注意が必要です。
3-6. 実施体制と経営力
審査では「この会社はこの計画を本当にやり遂げられるのか」も見られます。以下の3つを盛り込みましょう。
- 社内の実施体制:プロジェクトの責任者は誰か、現場担当・管理担当はどう分けるか
- 外部支援機関との連携:設備メーカーの技術サポート、税理士・中小企業診断士との連携体制
- 経営基盤の健全性:直近の財務状況(自己資本比率・借入状況など)が安定していること
プロンプト例:
当社の組織体制は以下の通りです。[役職と人数を記載] この体制で○○の設備導入プロジェクトを実施します。実施体制と各担当者の役割を、ものづくり補助金の事業計画書向けにまとめてください。
4. AIが苦手なこと(自分で補うポイント)
AIは非常に便利ですが、万能ではありません。以下の4つは、AIに任せきりにせず自分で確認・補完する必要があります。
自社固有の数字
売上高、原価、生産量、従業員数、設備の稼働率など、自社の実態を示す数字はすべて自分で入れてください。AIはあなたの会社の内部情報を知りません。AIが「仮の数字」を入れてくることがありますが、必ず実際の数字に置き換えましょう。
統計データの正確性
AIが提示する市場規模や業界データには、存在しないデータを「作ってしまう」ケースがあります。AIが出した統計データは、必ず元の出典にあたって確認してください。確認できないデータは使わないのが安全です。
設備の技術仕様
導入する設備の性能・仕様は、メーカーのカタログや見積書の記載を正確に転記してください。AIに設備の仕様を聞いても、正確な情報は返ってきません。
最新の公募要領の変更点
ものづくり補助金の公募要領は回ごとに変更されることがあります。申請枠の名称変更、補助率の変更、新しい審査項目の追加などが起こり得ます。AIの知識は最新ではない可能性があるため、必ず最新の公募要領を自分の目で確認してください。
AIの回答を鵜呑みにしないでください:AIは「自信がなくてもそれらしく回答する」という特性があります。特に数字やデータについては、AIの回答をそのまま計画書に書くのではなく、必ず自分で裏取りしてから使いましょう。
5. 完成前の最終チェックリスト
計画書が一通り書けたら、提出前に以下のチェックリストで確認しましょう。
- 10ページ以内に収まっているか:ページ制限を超えると審査で不利になります。公募要領で指定されたページ数は必ず守りましょう
- 5つの審査軸すべてに触れているか:革新性・優位性・実現可能性・事業性・経営力のどれかが抜けていないか
- 具体的な数字が入っているか:「大幅に向上」のような曖昧な表現が残っていないか
- 図表を効果的に使っているか:文字ばかりのページが続いていないか
- 第三者が読んでも理解できるか:業界用語を説明なしに使っていないか
- 数値計画に整合性があるか:売上計画と生産能力、人員計画がつじつまが合っているか
最後に、AIに「審査員の視点」で計画書全体をレビューしてもらいましょう。
プロンプト例(最終レビュー):
以下は、ものづくり補助金の事業計画書です。あなたは審査員の立場で、この計画書をレビューしてください。
・革新性、優位性、実現可能性、事業性、経営力の5つの軸それぞれについて、十分に書けている点と不足している点を指摘してください
・数値の根拠が弱い箇所があれば教えてください
・審査員として「ここがもっと知りたい」と思う箇所を指摘してください
[ここに計画書の全文を貼り付ける]
AIからの指摘をもとに修正を加えたら、もう一度レビューを依頼する。この「修正→レビュー」のサイクルを2〜3回繰り返すだけで、計画書の質はかなり上がります。
仕上げのコツ:AIとの壁打ちで内容を固めた後は、Wordなどの文書ソフトに清書し、レイアウトや図表の配置を整えてください。見やすさ・読みやすさも審査員の印象を左右します。
この記事の監修
株式会社ミライズ(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関)
ものづくり補助金の申請支援実績多数。事業計画書の策定から採択後の手続きまで一貫してサポート。