採択率は3年でこう変わった
ものづくり補助金は、毎回の公募で採択率が公表されます。直近の第19次〜第23次の採択率は31.8% → 33.6% → 34.1% → 37.5% → 35.1%と推移しており、長く厳しい審査が続いています。
「補助金は出せば通る」というイメージは、もはや過去のものです。一方で、データを丁寧に読むと「どんな企業が通っているのか」「なぜ通ったのか」のヒントが見えてきます。この記事では、採択率の推移とその意味を読み解きます。
・19次〜23次の採択率推移と数字の読み方
・採択率に影響している4つの要因
・「平均値」では通らない時代の戦略
・2026年度の傾向と統合新制度 第1回で勝つ準備
採択率の推移データ
| 公募回 | 応募件数 | 採択件数 | 採択率 | 採択発表時期 |
|---|---|---|---|---|
| 第19次 | 5,336件 | 1,698件 | 31.8% | 2025年7月 |
| 第20次 | 2,453件 | 825件 | 33.6% | 2025年10月 |
| 第21次 | 1,872件 | 638件 | 34.1% | 2026年1月 |
| 第22次 | 1,552件 | 582件 | 37.5% | 2026年4月 |
| 第23次 | 1,275件 | 448件 | 35.1% | 2026年8月 |
応募数は第19次以降、一貫して減り続けています。一方の採択率は第22次の37.5%をピークに、第23次では35.1%へ2.4ポイント低下しました。「応募が減り続ければ採択率は上がり続ける」という単純な関係ではないことが、ここではっきりしています。
5回分を通しで見ると、その理由がよく分かります。応募は第19次の5,336件から第23次の1,275件へ約76%減りましたが、採択も1,698件から448件へ約74%減っています。応募も採択もほぼ同じ割合で縮んでいるため、採択率は31.8%から35.1%へ3.3ポイントしか動いていません。言い換えると「ライバルが減っても、椅子の数も一緒に減る」ため、応募が減っても通りやすくはならない構図だと考えられます。
この見方に立つと、第22次の37.5%はむしろ例外的に高かった回で、ものづくり補助金の実力値は30%台半ばのレンジと見るのが妥当でしょう。応募の減少を「今回は狙い目」と読むのではなく、どの回でも上位3分の1に入る計画を用意する前提で臨むのが安全だと考えられます。
なお、第23次が現行のものづくり補助金の最終回です。第24次は実施されず、後継は統合新制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に引き継がれます。
採択率を動かす4つの要因
要因1:予算と採択枠の関係
そもそもものづくり補助金は「応募の何%を通す」ではなく、用意された予算枠の範囲で採点上位から採択する仕組みです。応募が増えても採択数の上限はそれほど変わらないため、応募が増えれば採択率は下がり、応募が減れば採択率は上がります。
要因2:申請要件の厳格化
近年、必須要件として賃上げ計画、付加価値額の年率3%以上の向上、給与支給総額の年率1.5%以上の向上などが課されています。これらをクリアできない事業者は、そもそも申請できません。
要因3:加点項目の充実
パートナーシップ構築宣言、経営革新計画、健康経営優良法人、最低賃金近傍の賃上げ特例など、加点項目が増えるほど「準備済みの応募者」が有利になります。準備の差がそのまま採点の差になる構造です。
要因4:審査員の質も底上げ
不採択事例の蓄積、審査ノウハウの共有により、審査員の評価軸も年々精緻になっています。表面的な「革新性アピール」では通らず、根拠と実行可能性を見られる方向に動いています。
「平均値」では通らない時代
最新の採択率35.1%という数字は、応募者を100点満点で評価すると、おおむね上位35%に入らないと通らない(=おおむね65点以下が落ちる)イメージです。逆に言えば「65点以下にしない」ための準備が重要、ということになります。
NGパターン1:他社を参考にしすぎた計画書
採択事例集や雛形を真似ると、表面的にはそれっぽい計画書になりますが、「自社らしさ」が抜け落ちることが多くあります。審査員は同じパターンの文章を何百枚も読んでいるため、定型文は逆効果になります。
NGパターン2:盛りすぎた売上計画
3年で売上3倍、5年で10倍など、根拠なき野心的な数字はむしろ実行可能性を疑われます。市場規模・自社シェア・競合分析・販売チャネルの裏付けがある計画が高評価です。
NGパターン3:技術自慢だけの計画書
自社の技術がいかに優れているかを語っても、「それで何が起こるのか」「誰が困っているのか」が書かれていなければ評価されません。顧客視点での価値が問われます。
2026年度の傾向と勝ち筋
傾向1:制度統合の影響
2026年度はものづくり補助金と新事業進出補助金が統合され、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」として再編されました(2026年6月29日 第1回公募開始)。これに伴い、申請枠の整理や経費区分の見直しが行われています。第1回は2026年9月30日に申請受付開始、2026年10月30日18:00締切、採択発表は2027年1月頃の予定です。
傾向2:賃上げ特例の活用
最低賃金近傍の賃上げを実施する事業者には、補助率や上限額の優遇があります。該当する場合は迷わず特例を使うことで、有利な条件で申請できます。
傾向3:グローバル枠の拡充
新制度ではグローバル枠の補助上限が大幅拡充される見込みです。海外展開を考えている事業者にとっては過去最大のチャンスになります。
次回公募で勝つために今やるべき5つのこと
1. 加点要件の取得を急ぐ
パートナーシップ構築宣言(即日可)、経営革新計画(2〜3ヶ月)など、取得まで時間のかかる加点項目から先に着手しましょう。
2. 売上3年計画の根拠を固める
市場規模調査、競合分析、自社の強みの言語化を、申請書を書き始める前に終わらせておくことが重要です。
3. 設備の見積もりを複数取る
原則として相見積もりが必要です。3社以上から見積もりを取り、価格と仕様を比較した記録を残しておきます。
4. 賃上げ計画を経営層と共有
採択後3〜5年は賃上げ計画を実行する義務があります。役員・経理・総務との合意形成を申請前に済ませておきましょう。
5. 早めに専門家に計画を見せる
採択された計画書は、第三者の目を通して何度もブラッシュアップされています。自分だけで書き上げて出すのは、採択率を大きく下げる行為です。
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まとめ
- ものづくり補助金の採択率は19次〜23次で31.8%→37.5%→35.1%と推移(第23次が現行制度の最終回)
- 19次→23次で応募は約76%減、採択も約74%減。椅子の数も一緒に減るため採択率は3.3ポイントしか動かず、実力値は30%台半ばと見るのが妥当
- 「平均的な計画書」では通らない時代
- 2026年度は制度統合とグローバル枠拡充が大きなトピック。次の勝負は統合新制度 第1回(2026年10月30日18:00締切)
- 勝ち筋は加点取得・根拠ある計画・専門家との伴走の3点セット